治りづらい膝蓋腱炎の治療方法

膝蓋腱炎とは反復するスポーツ動作が原因となり、膝の前面、膝のお皿(膝蓋骨)の下が痛くなるスポーツ障害です。

膝前面の解剖


①大腿四頭筋…骨盤とお皿を結ぶ太ももの前面の筋肉
②膝蓋骨  …膝のお皿
③膝蓋腱  …お皿と脛の骨を結ぶ腱
④脛骨結節 …お皿のすぐ下で前側に出っ張っているところ

膝を伸ばす動作は、まず①大腿四頭筋が収縮し、②膝蓋骨③膝蓋腱を介して④脛骨結節に力が伝えられることで起こります。

痛くなる部位

痛みが出やすい部位は主に2か所あります。


①膝蓋腱
お皿と脛を結ぶ腱が痛くなります。
お皿の下を押したり、体重をかけたりすると痛みが出ます。
②脛骨粗面
膝蓋腱が脛に付着する部分が痛くなります。
痛みを放っておくと①と②同時に痛くなってしまう場合もあります。

なぜ膝の前が痛くなるのか?

膝蓋腱炎は使い過ぎ症候群とも言われています。
スポーツ動作(ランニングやジャンプなど)では、腿の前にある大腿四頭筋に力が入り、
膝の前面にある膝蓋腱が伸びることで体重を支えています。
練習量増加、試合が多いなど繰り返し負荷が加わり膝蓋腱を使いすぎると
膝蓋腱に小さな損傷や炎症が生じ、結果として痛みがでるようになります。
股関節の使い方・足関節の硬さなども膝の前が痛くなる原因の1つです。
 

スポーツで膝の前が痛くなる原因

バスケやサッカーなどのジャンプ着地動作に着目してみましょう。
着地時に膝の向きが重要になってきます。
良い例から説明します。

前方から観察します
膝蓋骨(膝のお皿)と足の向きが揃っています。

側方から観察します。
上半身が前傾し股関節・足関節が曲がっています。
黄色の線のように肩ー膝ー足先が一直線となっています。       
なぜ、このフォームが良いか説明します。
肩ー膝ー足先が直線だと着地時に床から加わる反力を足・膝・股関節で吸収できます。
この動作をマスターできると膝への負担も少なくなり怪我予防に努めることが出来ます。
また、力が発揮しやすく、次の動作へと繋げやすく、なるからです。

次は間違ったフォーム(悪い例)です。
間違ったフォームを理解するだけでも怪我の予防に繋がります。

前方から観察します。
着地時に膝が内側に入り、
足先が外側に向きになっています

パターン①
側方から観察します。
上体が起き、後方重心になっています。

パターン②
側方から観察します。
上体が起き、膝が足先より前に
偏位しています。
良い例と悪い例を見比べると悪い例では、膝が内側に入ったり、足先より前に偏位し
着地時に、床から加わる反力が分散できなくなります。
股関節・足関節で衝撃吸収すると膝への負担は減りますが
悪い例のように着地してしまうと、膝への負担が大きくなり怪我の原因となります。
   

症状

走る時に痛い、ジャンプする時に痛い、サッカーであればボールをキックする時に痛いなどが特徴的な症状です。
症状の程度は以下のように分類されます。
軽度 :スポーツ中は痛みはなくスポーツ後のみ痛みがでる
中等度:スポーツ中に痛みがあるがプレーすることは可能
重度 :痛みでプレーに支障がでる、日常生活でも痛みがでる
症状の程度から治療の選択肢を決定していく場合が多いため、この把握がとても重要になります。
また、小さな損傷の繰り返しにより膝蓋腱の損傷が大きい場合は、治りにくく慢性的に症状が続く場合もあります。
Ex)
#ジャンプで膝の前が痛い
#足を前に踏み出す時に膝の前が痛い
#階段降りると膝の前が痛い
#膝前お皿付近が痛い

AR-Exスポーツ・難治性疼痛外来での膝蓋腱炎の治療の特徴



 

画像検査

主にMRI、超音波診断装置を用いて膝蓋腱の損傷の有無、損傷の程度、炎症の程度を判断します。


 

評価

一般外来においては問診や理学検査、レントゲン検査、MRI検査などを行いますが、
スポーツ・難治性疼痛外来ではさらに以下のような評価を行い、疼痛の原因を特定していきます。



 

治療方法

症状の程度、患者さんの希望に基づいて治療を計画して実施します。
以下の保存的治療により多くの場合症状を改善させることができます。
一般外来において実施する治療(運動強度・量調整、注射、内服・外用、リハビリテーション)で症状改善しない場合、
難治性疼痛外来において体外衝撃波治療も検討します。
体外衝撃波
結石の破砕などの治療で用いられてきた体外衝撃波治療は、膝蓋腱炎腱に対しても有効とする報告が多くされています。
上記の治療で改善しない膝蓋腱炎に対して体外衝撃波治療を実施していきます。
体外衝撃波治療は2種類あります。
『拡散型』と『集束型』があります。
どちらの治療器で治療するかは担当医師が決定いたします。



体外衝撃波治療の詳しい情報はコチラ
注射
痛み止め(鎮痛)、炎症緩和を目的として、炎症が生じている腱部にステロイド局所注射を行います。
また、膝蓋腱と周囲組織(膝関節脂肪組織など)がくっついて痛みを引き起こしている場合には、
くっつきをはがすことを目的に注射を行う場合もあります。

超音波ガイド下膝蓋下脂肪体リリース
超音波で観察しながら脂肪体の周りを液で剥がす治療。疼痛の原因となっている場合は注射後疼痛が即時的に改善

 

リハビリテーション
患部の負担増加に関係する身体機能障害(身体の弱点)に対して治療していきます。
個々で問題点は異なるため、理学療法士が評価して適切な方法を指導します。


太もも周囲のストレッチや臀部・体幹の筋力強化の指導を行い、膝への負担を減らします。

治療期間

まず3回の治療で効果判定を行います(治療間隔は1~2週)。
3回で満足のいく結果を得られた場合は治療を終了します。
治療効果はあるがまだ満足できない場合、医師との相談の上4回以上の治療を行います。
症状の改善が認められない場合、または悪化している場合は治療を終了します。
症状の経過によっては3回以下でも治療を終了する場合があります。

治療施設

スポーツ・難治性疼痛外来の受診の流れや費用については各施設のページからご確認下さい。

東京都で体外衝撃波治療を受けられる施設
都立大整形外科クリニック(目黒区)
明大前整形外科クリニック(世田谷区)

埼玉県で体外衝撃波治療を受けられる施設
さいたま整形外科クリニック(さいたま市)

長野県で体外衝撃波治療を受けられる施設
長野整形外科クリニック(長野市)
佐久平整形外科クリニック(佐久市)
上田整形外科内科(上田市)