surgery

股関節鏡視下手術(FAI:CAM/Pincer)

股関節鏡視下手術は、股関節の骨の形が原因で生じる痛み(大腿骨寛骨臼インピンジメント:FAI)を根本的に解消するための治療法です。皮膚に小さな穴を開けて内視鏡(関節鏡)を挿入し、股関節内部を直接見ながら、痛みの原因となっている骨の異常な部分を削り、股関節の動きを滑らかに修正します。この治療の目的は、関節の早期の損傷を防ぎ、将来の変形性股関節症への進行を遅らせることです。

治療の適応(対象となる方)

FAIは、股関節を構成する大腿骨(太ももの骨)と寛骨臼(骨盤の受け皿)の骨の形に異常が生じ、特定の動作で骨同士が異常にぶつかり合う(衝突)病気です。この衝突が繰り返されると、関節のクッション材である股関節唇などが傷つき、股関節の付け根(鼠径部)の痛みや可動域の制限を引き起こします。特にスポーツ活動や深く股関節を曲げる動作を行う方に多く見られます。

本治療は、特に以下のような症状や状態にある患者様を対象とします。

  • 画像診断でFAI(CAM型、Pincer型、複合型)と診断された方。
  • 股関節を深く曲げたり内側にひねったりした際に強い痛みが誘発される方(前方インピンジメントテスト陽性)。
  • 痛み止めやリハビリテーションなどの保存的な治療を試みたものの、症状が改善しなかった方。
  • 比較的初期の段階で、関節の損傷の根本原因を取り除き、変形性股関節症の進行予防を目指す方。

手術術式の選択

FAIの治療では、患者様一人ひとりの骨の変形パターンに応じて、最適な治療方針を定めます。

治療の基本は、関節鏡を用いて衝突の原因となっている骨の異常な部分を削り、股関節がスムーズに動ける形に整える骨形成術と、傷ついた関節唇を縫い合わせる修復術を同時に行うことです。

骨の修正(骨形成術)

骨形成術は、衝突の原因となっている骨の異常な形を修正し、股関節の動きを滑らかにするための処置です。

  • CAM型変形への対応: 大腿骨頭の付け根にある骨の隆起(コブ)を丁寧に削り取り、正常な形に整えます。
  • Pincer型変形への対応: 寛骨臼の縁にある過剰な骨の一部を削り、可動域を広げます。

ほとんどの患者様は複合型であるため、両方の骨を調整します。

関節唇修復(縫合)術

股関節唇は、股関節の安定性に重要です。これを糸で縫い合わせることで、股関節の安定性を回復させます。

手術の詳細

股関節鏡視下手術は、皮膚に約1cm程度の小さな穴を2〜3箇所開けるだけの、身体への負担が少ない(低侵襲な)手術です。

  • 麻酔・所要時間:
    1. 麻酔方法: 手術中の牽引操作が必要なため、基本的に全身麻酔を用いて行われます。
    2. 手術時間: 損傷の程度によりますが、通常1時間半から3時間程度です。
  • 手術手順:
    1. 全身麻酔により痛みを除去します。
    2. 小さな切開部から関節鏡(カメラ)と手術器具を挿入します。
    3. モニターで内部を確認しながら、骨の変形を正確に削り取り、形を修正します(骨形成術)。
    4. 損傷した関節唇を縫い合わせ、安定性を回復させます(関節唇修復術)。
    5. 切開部を縫合し、手術を終了します。

入院・術後経過

股関節鏡視下手術は、術後のリハビリテーションが非常に重要です。

  • 入院期間: 標準的な入院期間は、8日間から14日間程度です。骨形成術を伴う場合は、術後の安静期間を考慮し長くなる場合があります。
  • 術後経過:
    • 入院中の管理: 手術当日には、スタッフの見守りのもと、車いすや松葉杖を使った移動を開始できます。体重をかける程度は、治療内容に応じて医師が慎重に判断し、早期にリハビリテーションを開始します。
    • 退院後の注意点:
      • 日常生活への復帰は比較的早期ですが、通院によるリハビリテーションを継続します。
      • ランニング開始は術後約3ヶ月、サッカーなどのコンタクトスポーツへの完全復帰は、機能回復を待って約6ヶ月後を目安とします。

期待される効果

  • 痛みの解消: 骨の衝突という物理的な障害を取り除くことで、特にスポーツ時や深く曲げた際の痛みが大幅に軽減されます。
  • 関節機能の改善: 股関節の可動域が広がり、日常生活やスポーツ活動における動きが滑らかになります。
  • 変形性股関節症の進行予防: 関節への慢性的な負荷を取り除くことで、若年での変形性股関節症の発症や将来的な人工関節置換術の必要性を遅らせる効果が期待されます。

手術のリスクと合併症

一般的なリスク

感染症、深部静脈血栓症(血の塊が血管を詰まらせる)、全身麻酔に伴う偶発症などがあります。

特有のリスク

  • 神経麻痺・しびれ: 手術中の牽引操作により、股関節周囲の皮膚の感覚を司る神経に一時的な麻痺やしびれが生じることがありますが、多くは時間と共に改善します。
  • 衝突の残存: 骨を削る量が不適切だった場合、痛みが残る可能性があります。
  • 不安定性の発症: 骨を削りすぎた場合、稀に関節が不安定になる可能性があります。

費用について

本手術は健康保険が適用される保険診療です。

  • 概算費用(3割負担): 標準的な入院期間8日間で35万円から45万円程度が概算費用となります。
  • 高額療養費制度の活用: 医療費の自己負担額が上限を超えた場合、「高額療養費制度」が適用されます。患者様の経済的負担を軽減するため、手術が決まった時点でご加入の医療保険に「限度額適用認定証」を事前に申請することを強くお勧めします。

当グループでの治療の特長

アレックスメディカルグループは、スポーツ整形外科を専門とし、Arthroscopy(関節鏡)、Rehabilitation(リハビリ)、Exercise(運動療法)の「AR-Ex」を融合した治療を提供しています。

  • 低侵襲・高精度な手術: 傷が小さく、術後の痛みが少ない低侵襲な関節鏡視下手術を専門としています。インピンジメントの原因を確実に取り除くため、1mmの精度にこだわる緻密な技術で骨の修正を行います。
  • 専門チームによるリハビリ: 医師とスポーツ医学に特化したリハビリスタッフがチーム連携し、術後翌日からの早期移動開始と、競技特性を考慮した段階的な運動プログラムを提供します。
  • 再発予防への一貫サポート: 痛み緩和に加え、再発予防を含めた身体づくりを目指した運動療法を指導し、完全復帰とその後のコンディショニングまで一貫してサポートします。

よくあるご質問

Q. 手術中の麻酔は?

A. 股関節鏡視下手術では、基本的に全身麻酔で行います。

Q. 術後すぐに歩けますか?

A. 手術当日には、車いすや松葉杖を使った移動が可能です。体重をかける程度は、治療内容に応じて段階的に医師が判断します。

Q. スポーツへの復帰はいつ頃になりますか?

A. 日常生活への復帰は早いですが、ランニング開始まで約3ヶ月、激しいコンタクトスポーツへの完全復帰までは約6ヶ月を目安として、専門スタッフによるリハビリを継続します。

関連する疾患について

  • 変形性股関節症
  • 臼蓋形成不全
  • 単純性股関節炎

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