三角線維軟骨複合体(TFCC)損傷の鏡視下修復
三角線維軟骨複合体(TFCC)は、手首の小指側にある、関節の安定化と衝撃吸収を担う重要な組織です。TFCC損傷は、手首の不安定化や慢性的な痛みの主な原因となります。
TFCC損傷の鏡視下修復術は、小さな切開部から内視鏡(関節鏡)を挿入し、モニターで内部を確認しながら、損傷した組織を正確に縫い合わせる手術方法です。この治療は、保存療法で改善が見られない慢性的な痛みに対し、手首の安定性を根本から回復させ、機能の完全な回復を目指します。
手術の適応(対象となる方)
この鏡視下修復術は、特に以下のような症状や状態にある患者様を対象とします。
- 手首の小指側の慢性的な痛みや圧痛が継続している方。
- ドアノブを回す、タオルを絞るなど、手首をひねる動作で強い痛みが走る方。
- 床に手をついたときや重い荷物を持った際に手首に痛みが走る方(荷重痛)。
- 手首を動かす際に、グラつきや引っかかり感、クリック音を感じる方。
- 装具固定や注射などの保存療法を数ヶ月続けても症状が改善しない方。
手術術式の選択
損傷の部位や不安定性の程度、活動レベルを総合的に判断し、最適な術式を選びます。当グループでは、手首の安定した機能を取り戻すため、可能な限り組織を温存する「修復術」を基本方針としています。
鏡視下修復術(縫合術)
- 適応: 靭帯組織が骨の付着部から剥がれている損傷(末梢損傷)が主で、不安定性が強い場合。組織を温存し、手首の機能を完全に再建したい患者様が対象です。
- 方法: 関節鏡を使い、剥がれたTFCCを特殊な器具で元の骨にしっかりと縫い付けて固定します。
- 特徴: 損傷組織を活かすことで手首の安定性を回復させます。治癒期間が必要なため、術後4〜6週間の固定が必要です。
鏡視下切除術(デブリドマン)
- 適応: TFCCの中心部(軟骨部)の変性や断裂に限られており、不安定性が強くない場合。または修復が難しい変性損傷の場合です。
- 方法: 関節鏡を使い、痛みの原因となっている断裂した組織の端を慎重に取り除きます。
- 特徴: 手術時間が短く、主に痛みの軽減と引っかかり感の解消を目的とします。
手術の詳細
鏡視下手術は数ミリの小さな傷から行うため、体への負担が少なく、回復が早いことが特徴です。
麻酔・所要時間
- 麻酔方法: 主に手首周辺に麻酔を効かせる部分麻酔(伝達麻酔)を使用します。
- 手術時間: 損傷の程度によりますが、通常は60分から90分程度です。
手術手順
- 関節鏡の挿入: 手首に小さな切開部を設け、関節鏡と専用器具を挿入し、損傷状態をモニターで確認します。
- 損傷の修復: 剥がれたTFCCを専用器具で元の骨に確実に縫合・固定します。
- 止血・縫合: 関節内を洗浄した後、切開部を縫合します。
- 固定: 修復部位の安静と確実な治癒を促すため、ギプスまたは装具で固定します。
入院・術後経過
- 入院期間: 標準的な入院期間は3日間です。
入院中の管理
- 疼痛管理: 術直後から痛み止めの注射や内服薬を用い、積極的な痛みコントロールを行います。
- 早期運動: 手術で固定していない指や肘、肩の関節が硬くならないよう、入院中から軽い運動を開始します。
退院後の注意点
- 固定期間: 修復術の場合、組織の治癒のため、通常4週間から6週間程度、ギプスまたは装具による固定が必須です。
- リハビリテーション: 固定が外れた後、理学療法士の指導のもと、段階的に手首の可動域訓練や筋力回復のためのリハビリを開始します。
- 生活制限: 術後しばらくは、重いものを持つ動作や急激なひねり動作は禁止されます。
期待される効果
手術と専門的なリハビリテーションにより、失われた手首の機能を回復させ、以下のような効果が期待されます。
- 手首の小指側の慢性的な痛みやひねり動作時の痛みが改善または解消されます。
- 損傷により失われていた手首のグラつきや不安定感が改善し、安定性が回復します。
- 力を込める際の不安感がなくなり、日常生活やスポーツ活動への完全復帰が可能になります。
手術のリスクと合併症
すべての手術には一定のリスクが伴います。
- 一般的なリスク: 出血、感染、疼痛、麻酔による合併症。
- 特有のリスク: 縫合したTFCCが再び断裂するなど、再損傷や修復不全のリスク。固定期間による関節の硬さ(拘縮)。まれに神経損傷によるしびれが生じる可能性。
費用について
TFCC損傷に対する鏡視下修復術を含む治療は、公的医療保険が適用される保険診療です。
健康保険証をお持ちで3割負担の方の場合、標準的な入院期間(3日間)を含めたTFCC切除・縫合術の概算自己負担額は、10万円から13万円程度となります。この金額は概算であり、治療内容により変動する可能性があります。手術費用が高額になった場合、高額療養費制度の適用や、医療費控除についてもご相談いただけます。
当グループでの鏡視下修復の特徴
アレックスメディカルグループ(AR-Ex)は、関節鏡(Arthroscopy)、リハビリテーション(Rehabilitation)、運動療法(Exercise)を専門とし、診断から完全復帰まで一貫したサポートを提供します。
- 低侵襲と高精度な手術: 1mmの正確さにこだわり、小さな傷で正確な修復を行います。これにより、術後の痛みや筋力低下のリスクを抑え、早期回復を実現します。
- 医師とセラピストのチーム連携: 医師と理学療法士が定期的に話し合い、患者様の状態に合わせた最適なリハビリプログラムを一貫して提供し、再発予防を含めた身体づくりを目指します。
- 完全復帰後の運動サポート: 理学療法士に加え、トレーナーが在籍しており、科学的根拠に基づいたトレーニング指導を行います。保険診療終了後も、競技力向上や健康維持まで継続的にサポートできる体制が整っています。
よくあるご質問
Q. 術後の固定期間はどれくらいですか?
A. 修復術の場合、組織が治癒するまで、通常は4週間から6週間程度のギプスまたは装具による固定が必要です。
Q. 仕事やスポーツへの復帰はいつ頃可能ですか?
A. 復帰までの期間には個人差がありますが、日常生活動作の大きな不自由がなくなるまで3ヶ月程度、本格的なスポーツ復帰には半年程度を目安とすることが多いです。
Q. 手術後にリハビリは必須ですか?
A. はい、必須です。手術の成功を確かなものにし、硬くなった関節の動きや筋力を回復させるためには、専門的なリハビリテーションが不可欠です。
関連する疾患について
- 三角線維軟骨複合体損傷(TFCC損傷)
- 尺骨突き上げ症候群
- 橈骨遠位端骨折