石灰性腱炎の鏡視下除去
石灰性腱炎は、肩の腱(腱板)にカルシウムの結晶が沈着し、激しい痛みや耐え難い夜間痛を引き起こす疾患です。痛みが強くなると腕の動きが制限され、日常生活に大きな支障をきたします。薬や注射などの保存療法で改善が見られない場合、石灰の塊を物理的に除去する鏡視下除去手術が、痛みを根本から解決する有効な選択肢の一つです。当グループでは、数ミリの小さな切開で行う関節鏡(内視鏡)手術により、体への負担を最小限に抑え、石灰を安全かつ正確に取り除き、早期の回復を目指します。
治療の適応(対象となる方)
鏡視下除去治療は、特に以下のような症状や状態にある患者様を対象とします。
- 内服薬、注射、リハビリテーションなどの保存療法を数ヶ月行っても肩の痛みが改善しない難治性のケース。
- 安静にしていても激しい急性期の痛みが継続しており、鎮痛剤でも痛みがコントロールできない方。
- レントゲン検査などで、石灰の塊が大きく、自然な改善が期待できないと診断された方。
- 夜間痛や日常生活動作への支障が著しく、生活の質の低下に悩んでいる方。
手術術式の選択
石灰性腱炎で痛みの原因である石灰を物理的に除去する場合、最も標準的で推奨される方法は関節鏡視下手術です。これは、体への負担を最小限に抑え、高い精度で治療を行うための低侵襲な手法です。
関節鏡視下手術(内視鏡手術)の特長
- 低侵襲性: 数ミリの小さな切開口で手術を行うため、筋肉や腱板組織への損傷が非常に少ないです。
- 精密な除去: 関節鏡のカメラで患部を拡大して確認しながら、石灰を正確に特定し、専用の器具で吸引・除去し、必要に応じて洗浄します。
- 早期回復: 傷が小さく術後の痛みが少ないため、早期にリハビリを開始しやすく、早期の社会復帰に繋がります。
手術の詳細
石灰性腱炎の鏡視下除去手術は、痛みの原因を確実に取り除き、機能回復を目指します。
麻酔・所要時間
- 麻酔方法: 原則として全身麻酔を用いて行います。
- 手術時間: 一般的に30分から60分程度で完了します。
手術手順
- 準備: 全身麻酔を導入し、患部を消毒します。
- 挿入: 肩関節周囲に数ミリの切開口を設け、関節鏡と治療器具を挿入します。
- 石灰の除去: 関節鏡で石灰の塊を正確に特定し、腱組織を傷つけないよう注意しながら、専用の器具で石灰を吸引・除去します。
- 閉鎖: 関節内を十分に洗浄し、挿入孔を丁寧に縫合またはテープで閉じて終了します。
入院・術後経過
鏡視下手術は低侵襲なため、比較的短期間の入院で済みます。
- 入院期間: 標準的な入院期間は、術後の状態確認と初期のリハビリ導入のため、3日間から5日間程度です。
術後経過
入院中の管理
術直後から積極的に痛みの管理を行います。石灰による激しい炎症性の痛みは除去後すぐに軽減されることが期待されます。術後早期(多くは翌日)から、肩関節が硬くなる拘縮を防ぐための運動を理学療法士の指導のもとで開始します。
退院後の注意点
退院後も医師や理学療法士の指導に基づき、継続的にリハビリテーションを行うことが、完全な機能回復のために極めて重要となります。医師の許可が出るまでは、重いものを持つなどの動作を避けて安静を保ちます。
期待される効果
鏡視下除去手術によって以下の顕著な効果が期待できます。
- 痛みの根本的な解消: 激しい急性期の痛みの原因である石灰の塊が取り除かれるため、長期間悩まされてきた痛みから劇的に解放されます。
- 肩関節の可動域の回復: 痛みがなくなることで、炎症によって制限されていた肩の動きが改善し、リハビリテーションを通じて腕をスムーズに動かせるようになります。
- 早期の社会復帰: 低侵襲な手術と専門的なリハビリテーションにより、比較的早期に仕事やスポーツへの復帰を目指すことが可能です。
手術のリスクと合併症
手術は安全に行われますが、全ての医療行為にはリスクが伴います。
一般的なリスク
- 感染、出血・血腫: 稀に傷口や関節内が細菌感染を起こしたり、出血や血の塊(血腫)ができたりする可能性があります。
- 麻酔に伴うリスク: 全身麻酔に伴う、呼吸器系や循環器系の合併症が非常に稀に発生する可能性があります。
鏡視下除去手術特有のリスク
- 肩関節拘縮(硬さ): 石灰性腱炎は炎症が強く、術後に肩関節が硬くなる拘縮が発生しやすくなります。これを避けるため、術後早期からの専門的なリハビリテーションが不可欠です。
- 石灰の残存・再発: 稀に石灰が完全に除去しきれない場合や、体質的に再び石灰が沈着し、症状が再発する可能性はあります。
費用について
石灰性腱炎の鏡視下除去手術は、公的医療保険が適用される保険診療です。
健康保険証3割負担の方の場合、手術および入院(3~5日間)の費用概算自己負担額は、一般的な肩関節の鏡視下手術の例を参照すると、概ね22万円から36万円程度を目安としてください。実際の金額は治療内容や入院期間によって変動します。
手術・入院費が高額になった場合でも、高額療養費制度をご利用いただけます。この制度を事前に申請することで、1ヶ月間の医療費の自己負担額が上限額までに抑えられます。また、年間を通じて支払った医療費は医療費控除の対象ともなります。費用の詳細や制度の利用方法についてご不明な点があれば、当グループのスタッフにお気軽にご相談ください。
当グループでの治療の特長
アレックスメディカルグループでは、患者様の石灰性腱炎に対し、早期の痛みからの解放と確実な機能回復を目標に、以下の専門性と強みを活かした治療を提供しています。
肩関節専門医による確かな技術
当グループの医師は、肩関節の鏡視下手術に関して豊富な経験と高い専門性を有しています。石灰の位置、大きさ、周囲の腱への影響などを正確に判断し、患者様にとって最も負担が少なく効果的な方法で手術を行います。
低侵襲で徹底的な石灰除去
最新の関節鏡システムを使用し、小さな傷口から石灰の塊を鮮明に確認することで、正常な腱組織へのダメージを最小限に抑えた「低侵襲な手術」を実現します。痛みの原因である石灰を根こそぎ洗い流し、再発リスクを低く抑えます。
早期回復のための個別化リハビリテーション
手術成功の鍵となる術後のリハビリテーションに力を入れています。石灰性腱炎特有の術後合併症である拘縮(肩の硬さ)を予防することに重点を置き、経験豊富な理学療法士が患者様一人ひとりの状態に合わせた専門的なリハビリ計画を作成し、早期の機能回復を強力にサポートします。
よくあるご質問
Q. 手術は痛いですか? A. 手術中は全身麻酔下で行うため、痛みはありません。術後は適切な鎮痛薬で管理し、石灰が原因の激しい炎症性の痛みは除去後すぐに改善することが期待されます。
Q. 入院期間はどれくらいですか? A. 標準的には3~5日間程度です。回復具合やリハビリの進捗に応じて期間は柔軟に対応いたします。
Q. いつ頃から仕事やスポーツに戻れますか? A. 事務作業などの軽作業は術後数日~1週間程度で再開が可能です。スポーツや重労働については、リハビリの進行状況により異なりますが、多くの場合、術後1ヶ月から3ヶ月程度を目安に段階的な復帰を目指します。
Q. 石灰が再発することはありますか? A. 鏡視下手術では石灰を徹底的に除去しますが、稀に体質により再び石灰が沈着し、症状が再発する可能性はあります。術後も定期的な診察で経過を慎重に観察します。
関連する疾患について
- 石灰沈着性腱板炎
- 腱板損傷・断裂
- 拘縮肩