SLAP病変の鏡視下修復
SLAP病変は、肩関節の受け皿にあるクッション材「関節唇」の上部が傷つき、骨から剥がれることで、肩の奥深くに痛みや不安定感を引き起こす状態です。特に投球動作を繰り返す方に多く、この鏡視下修復術は、傷んだ関節唇を修復し、肩の機能と安定性を取り戻すための有効な治療法です。
治療の適応(対象となる方)
この治療が必要となる症状
SLAP病変鏡視下修復術は、飲み薬やリハビリテーションなどの保存的治療で改善が見られない方を対象としています。特に以下のような症状がある場合に適応となります。
- 腕を頭上に上げたり、強く動かしたりする際に、肩の奥に鋭い痛みがある。
- 肩を動かす時に、不快な引っかかり感や「クリック音」(引っかかり音)が生じる。
- スポーツ時に肩に力が入りにくい、または肩が抜けるような不安感(不安定感)を感じる。
治療術式の選択
治療方針は、患者様の年齢、損傷のタイプ、今後の活動目標を考慮して決定します。主に損傷した関節唇を縫い合わせる修復術と、痛みの原因となっている上腕二頭筋の腱を処理する固定術(腱切離術含む)のどちらを選択するか、専門医が診断します。
関節唇鏡視下修復術
損傷した関節唇を骨にしっかりと付け直すことを目指す方法です。
- 適応: 比較的若い方や、高いパフォーマンスが求められるスポーツへの完全復帰を目指す場合に優先されます。
- 方法: 関節鏡を使用し、小さな固定具と糸で剥がれた関節唇を元の骨に縫い付けて安定させます。
上腕二頭筋腱固定術
痛みの原因となっている上腕二頭筋の腱の付着部を別の場所に固定することで、痛みの早期解消を目指す方法です。
- 適応: 損傷が広範囲な場合や、40歳以上で早期の痛み解消とリハビリ負担の軽減を希望される場合に検討されます。
- 特徴: 関節唇を厳密に安静にする期間が短くなるため、早期の機能回復を促すことができます。
治療の詳細
本治療は、身体への負担が少ない関節鏡を使った低侵襲な方法で実施されます。
麻酔・所要時間
- 麻酔方法: 全身麻酔(または局所麻酔との併用)。
- 手術時間: 損傷の程度により異なりますが、おおよそ60分から120分程度です。
手術手順
肩の周囲に5mm程度の小さな穴を数カ所開けて、そこからカメラと専用の器具を挿入します。
- 観察: 関節鏡で損傷部位を拡大画像で詳細に確認します。
- 準備: 剥がれた関節唇を骨に再付着させるため、骨の表面を整えます。
- 修復: 生体吸収性の小さなアンカー(固定具)と糸を使用し、剥離した関節唇を元の位置に縫い付けて固定します。
- 終了: 修復部の安定性を確認した後、小さな切開部を縫合して治療を終えます。
入院・術後経過
- 入院期間: 術後の安静確保、初期の痛みの管理、リハビリテーション指導を行うため、標準的な入院期間は4日間を想定しています。退院後は外来リハビリテーションに移行します。
- 術後経過:
- 初期(術後4〜6週間): 装具で肩を固定し、修復部位を保護します。理学療法士の指導のもと、肩に負担がかからない肘や手首の運動から開始します。
- 中期(術後6週〜3ヶ月): 医師の許可を得て装具を外し、痛みに注意しながら肩の動く範囲を徐々に広げます。
- スポーツ復帰: 肩を激しく使うスポーツへの完全な復帰には、再損傷のリスクを避けるため、通常6ヶ月以上の期間をかけて段階的に進める必要があります。
期待される効果
- 損傷した関節唇が治癒し、肩関節の安定性が回復する。
- 動作時の鋭い痛みや不快なクリック音が解消される。
- 肩が抜けるような不安感がなくなり、安心して腕を使えるようになる。
- スポーツや活動的な日常生活への復帰が可能になる。
治療のリスクと合併症
外科的な治療であるため、当グループでは細心の注意を払いますが、以下のようなリスクや合併症が発生する可能性があります。
- 関節の動きの悪化(拘縮): 術後のリハビリテーションが不十分な場合、肩関節が硬くなることがあります。
- 再損傷: 治癒が完了する前に激しい運動を再開した場合、修復部位が再び損傷する可能性があります。
- 一般的なリスク: 感染症、出血、一時的な神経のしびれなどが極めて稀に起こる可能性があります。
費用について
健康保険が適用される治療です
SLAP病変鏡視下修復術は、公的医療保険(健康保険)が適用される保険診療(関節鏡下関節唇形成術)の対象です。
- 概算費用(3割負担の場合): 標準的な入院期間(4日間)で、22万円~34万円程度が目安となります。
- 費用の内訳: この概算費用には、手術費、麻酔費、入院費などが含まれます。
- 別途必要な費用: 術後、修復部位を保護するために必要な装具費用は、別途ご負担いただくことがあります。
高額療養費制度について
高額な医療費の負担を軽減するため、高額療養費制度をご利用いただけます。
- この制度を利用すると、医療費の自己負担額が定められた上限額を超えた場合、超過分が払い戻されます。
- 事前にご加入の医療保険に申請していただくことで、窓口での支払いを自己負担限度額までに抑えることが可能です。
制度の適用や医療費控除についてもご相談いただけますので、ご心配な点はお気軽にお問い合わせください。
当グループでの治療の特徴
アレックスメディカルグループでは、Arthroscopy(関節鏡視下手術)、Rehabilitation(リハビリテーション)、Exercise(運動療法)の3分野を重視し、患者様の完全復帰を目指します。
- 低侵襲で確実な鏡視下手術: 経験豊富な専門医が、体への負担を最小限に抑える低侵襲な関節鏡視下手術を実践し、確実な修復を行います。傷が小さく、術後の痛みが少ないため、早期の機能回復につながります。
- 専門チームによる一貫したリハビリ: 手術医とスポーツ医学に特化した理学療法士が密接に連携し、回復段階に応じた最適なリハビリプログラムを一貫して提供します。単に痛みをなくすだけでなく、再発予防を含めた機能回復を目指します。
- 完全復帰に向けた継続サポート: 診断から手術、術後フォローアップまで、各クリニックが連携して一貫性のある治療を実行します。保険診療終了後も、パーソナルトレーニングなどのサポート体制を持ち、完全復帰、そしてその後の活動維持を支えます。
よくあるご質問
- Q. 手術は痛いですか?
- A. 全身麻酔下で行うため、術中に痛みを感じることはありません。術後の痛みに対しては、適切な疼痛管理を行います。
- Q. 入院期間はどれくらいですか?
- A. 標準的な入院期間は、術後の安静確保と初期の管理のため4日間程度です。
- Q. スポーツに復帰できますか?
- A. はい、計画的なリハビリテーションを行うことで復帰を目指します。ただし、激しいスポーツへの完全復帰には6ヶ月以上の期間が必要となります。
関連する疾患について
- 上方関節唇損傷(SLAP lesion)
- 上腕二頭筋腱損傷・断裂
- 肩関節脱臼
- 腱板損傷・断裂
- 拘縮肩