Bankart–Bristow法(烏口突起移行術)
Bankart–Bristow法(烏口突起移行術)は、肩関節が繰り返し外れてしまう「反復性肩関節脱臼」に対する、確実な治療法です。脱臼を繰り返すことで肩の受け皿(関節窩)の骨が削れてしまった(骨欠損を伴う)重度の不安定症例に対し、骨を移植して物理的な「ストッパー」を作ることで、肩を強固に安定させます。反復性肩関節脱臼は自然に治ることはありません。この治療は、骨の土台から肩の安定性を根本的に回復させ、スポーツや日常生活への質の高い復帰を目指します。
治療の適応(対象となる方)
本治療法は、特に以下のような症状や状態にある方を対象とします。
- 脱臼を繰り返している方: 日常生活や軽い動作の中で肩が外れる不安がある、または実際に脱臼を繰り返している。
- 骨欠損が進んでいる方: 繰り返し脱臼した影響で、肩の受け皿の骨が大きく削れてしまい、不安定性が強くなっている。
- 高い再脱臼リスクを避けたい方: コンタクトスポーツ選手など、肩に大きな負荷がかかる環境で再脱臼リスクを極限まで下げたい。
- 過去の手術で再発した方: 関節鏡による標準的な手術を受けたにもかかわらず、再び脱臼してしまった。
治療術式の選択
反復性肩関節脱臼の治療方針は、患者様の活動性や骨の欠損具合を詳細に評価して決定されます。
治療法には、靭帯や関節唇を修復する軟部組織修復術(関節鏡手術)と、骨を移植する骨移行術(Bankart–Bristow法)があります。骨欠損が軽度な場合は関節鏡手術を優先しますが、骨欠損が大きい場合や、再発リスクが非常に高い場合は、Bankart–Bristow法を選択します。
Bankart–Bristow法は、肩関節の前方に骨性のストッパーを物理的に作り出すため、最も確実で強固な安定性を提供できる治療法です。
治療の詳細
Bankart–Bristow法は、肩甲骨の一部である「烏口突起」を採取し、骨欠損した関節窩の前面に移動させて固定する治療法です。
麻酔・所要時間
- 麻酔方法: 全身麻酔
- 手術時間: 90分~120分程度
治療手順
- 切開: 肩の前面を約5〜8cm切開します。
- 烏口突起の採取: 烏口突起を、付着する腱組織を温存したまま切り離し、採取します。
- 骨の固定: 採取した烏口突起を関節窩の欠損部に移動させ、金属製のビス(ネジ)で強固に固定し、骨性のストッパーを形成します。
- 動的安定性の付与: 烏口突起に付着していた腱が、肩関節の前面を内側から補強する動的な安定性の役割も果たします。
- 縫合・固定: 傷口を丁寧に縫合し、装具を装着して治療を完了します。
入院・術後経過
入院期間の目安
術後の安静確保、痛みの管理、初期リハビリテーション指導のため、標準的な入院期間は4日間から5日間程度を目安とします。
術後経過
入院中の管理
疼痛管理、創部管理(傷口の処置)を行い、移植部に負担がかからない範囲で初期のリハビリテーションを開始します。
退院後の注意点
医師の指示があるまで装具を装着し、肩の安静を保ちます。その後、理学療法士の指導のもと、段階的な可動域訓練と筋力トレーニングを行います。スポーツや重労働への本格復帰は、骨の定着と機能回復の状況をみて4〜6ヶ月以降を目指します。
期待される効果
Bankart–Bristow法による治療の最大の効果は、極めて高い確率での再脱臼の予防です。骨と腱によって形成される強固なストッパーにより、軟部組織のみの修復では対応できない重度の不安定性に対し、圧倒的な安定性を提供します。
治療により、脱臼への恐怖心や不安感が大幅に軽減されます。適切なリハビリテーションを経ることで、日常生活やスポーツ活動を安全かつ確実に再開することが可能となります。
治療のリスクと合併症
安全な治療のため、発生し得るリスクと合併症についてご理解いただくことが重要です。
一般的なリスク
傷口の感染、出血、術後の痛みなどが考えられます。稀に、手術部位周辺の神経に、一時的なしびれが生じる可能性があります。
特有のリスク
- 可動域のわずかな制限: ストッパー機能のため、特に腕を外側にひねる(外旋)動作について、可動域がわずかに制限されることがあります。
- 移植骨の癒合不全: 稀に、移植した烏口突起が関節窩にうまく定着しない場合があります。
- 金属の違和感: 骨を固定するために使用したビス(ネジ)が、周囲の組織に刺激を与え、違和感や痛みの原因となることがあります。
費用について
本治療は健康保険が適用される保険診療です。
自己負担額(3割負担の方)は、治療内容や入院期間により変動しますが、当グループの肩関節主要手術の概算費用は22万円から36万円程度が目安です。詳細な見積もりは事前にご提示します。
医療費の負担を軽減するため、自己負担額が上限を超えた分が払い戻される「高額療養費制度」が利用可能です 。事前に申請(限度額適用認定証の取得)いただくことで、窓口での支払いを上限額までに抑えられます 。
入院時には保証金30,000円をお預かりします。また、術後には「肩関節脱臼術後装具」が必要となり、概算費用は約27,615円です 。装具費用は一時的に全額をお支払い後、申請手続きにより7割が返金されます 。
当グループでの治療の特徴
アレックスメディカルグループは、スポーツ整形外科の専門クリニックグループとして、確実な治療とスムーズな復帰をサポートします。
重度な不安定症例への対応力と正確な固定技術
骨欠損を伴う複雑な反復性脱臼に対し、本治療を含む骨移行術を数多く手がけています。術中に高精度の画像診断技術を利用し、移植骨を最適な角度と位置に固定することを追求します。これにより、再脱臼の予防効果を最大化しつつ、機能回復に有利なバランスの取れた治療結果を目指します。
専門家チームによる集中的なリハビリテーション
手術を担当する医師と理学療法士が連携し、移植骨の安定を守りながら、肩の動きを段階的に回復させる集中的なリハビリプログラムを提供します。知識と計測に基づいた最適なプログラムにより、痛み緩和だけでなく、再発予防を含めた強い身体づくりを目指し、早期かつ確実なスポーツ・社会復帰を強力に支援します。
よくあるご質問
Q. 治療後、仕事や運動はいつから再開できますか?
A. デスクワークなどの軽い仕事は退院後すぐ(術後1週間以内)から可能なことが多いです。激しいコンタクトスポーツや投球動作を伴う競技への本格復帰は、骨の癒合と筋力回復を確認し、4〜6ヶ月以降を目安とします。
Q. 治療後の痛みはどの程度ですか?
A. 治療直後(入院中)は、点滴や内服薬で積極的に痛みを抑えます。退院後も数週間は鈍い痛みが続くことがありますが、リハビリの進行に伴い軽減していきます。
関連する疾患について
- 肩関節脱臼
対応クリニックのご紹介
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