鏡視下肩峰下除圧術(SAD)
鏡視下肩峰下除圧術(SAD)は、腕の上げ下げで生じる慢性的な肩の痛み、インピンジメント症候群を根本的に解決する手術です。肩の骨(肩峰)と腱(腱板)が衝突して炎症や痛みが起きる状態に対し、関節鏡を使い、衝突の原因となっている骨のトゲや硬くなった靱帯を取り除き、腱板が自由に動けるスペースを広げます。これにより、痛みと症状の再発を防ぎます。
手術の適応(対象となる方)
鏡視下肩峰下除圧術(SAD)は、特に以下のような症状や状態にある患者様を対象とします。
- 腕を動かしたとき、特に横から上げる動作で鋭い痛みが走る。
- 夜間に肩の痛みで目が覚める、または痛みのために眠れない。
- 内服薬、注射、リハビリテーションなどの保存療法を長期間(通常3ヵ月以上)続けても、痛みの改善が見られない。
- レントゲン検査などで肩峰の骨がトゲ状になっている(骨棘)ことが確認され、それが腱板と衝突していると診断された。
手術術式の選択
SADはインピンジメント症候群に対する主要な治療法です。腱板損傷の有無など、患者様の状態を正確に診断し、SAD単独で行うか、他の処置を組み合わせて行うかを判断します。
鏡視下肩峰下除圧術(SAD)単独
- 適応: 衝突による炎症や腱板の損傷が軽度な場合。
- 方法: 関節鏡を使い、炎症を起こした滑液包を掃除し、衝突の原因となっている骨のトゲや靱帯を切除しスペースを広げます。
- 特徴: 傷が小さく、術後の固定が原則不要なため、早期にリハビリを開始でき、回復が早まります。
鏡視下腱板修復術との併用
- 適応: SADが必要な状態に加え、腱板に断裂が認められた場合。
- 方法: SADでスペースを確保した後、断裂した腱板を骨に縫い付けて修復します。
- 特徴: 腱板の修復が必要なため、術後一定期間は装具による固定が必要となります。
手術の詳細
鏡視下肩峰下除圧術は、低侵襲な関節鏡を用いて行われます。
麻酔・所要時間
- 麻酔方法: 患者様の安全のため、全身麻酔を主に使用します。
- 手術時間: SAD単独の手術であれば、30分から40分程度で終了します。他の処置を併用する場合は、約2時間程度かかることもあります。
手術手順
- 麻酔導入・関節鏡の挿入: 全身麻酔を導入後、皮膚に5mm程度の小さな穴を開け、関節鏡と手術器具を挿入します。
- 炎症部分の除去と骨の切削: モニターで確認しながら、炎症を起こした滑液包を掃除し、痛みの原因となっている肩峰のトゲ(骨棘)を削り取り、腱板が動くスペースを確保します。
- 靱帯の切離と縫合: 再発予防のため周辺の靱帯を切離した後、小さな切開部を縫合して終了します。
入院・術後経過
SAD単独手術は日帰りも可能ですが、他の肩関節鏡視下手術の標準的な入院期間は、通常4~5日間が目安です。
入院期間
- 標準的な入院期間: 1泊2日から4~5日間
- 患者様の状態やご自宅でのサポート体制を考慮し、安全性を優先した退院プランをご提案します。
術後経過
- 入院中の管理: 適切な痛み止めで疼痛管理を行い、SAD単独手術の場合は手術翌日から、痛みのない範囲で早期リハビリを開始します。
- 退院後の注意点: 経験豊富な理学療法士の指導に基づき、リハビリテーションを継続することが重要です。
期待される効果
鏡視下肩峰下除圧術により、以下の効果が期待できます。
- 肩峰と腱板の衝突が解消されることによる、痛みの確実な軽減。
- 特定の動作で感じていた引っかかり感や不快感の解消。
- 夜間痛の改善により、睡眠の質が向上します。
- 早期のリハビリテーション開始により、速やかな日常生活やスポーツ活動への復帰。
手術のリスクと合併症
手術には安全を期しますが、以下のリスクや合併症の可能性がゼロではありません。
一般的なリスク
- 感染症: 発生率は低いものの、感染防止のための厳重な対策を講じています。
- 疼痛・出血: 適切な処置で管理を行います。
特有のリスク
- 一過性の神経麻痺: 術中に牽引を行う際、一時的に腕の神経(腕神経叢)が麻痺を起こすことがまれにありますが、通常は数日で自然に回復します。
- 術後の腫れ(腫脹): 関節鏡手術で生じた水漏れにより、術後に肩関節周囲が一時的に腫れることがありますが、通常は数日で回復します。
- 関節の拘縮: 術後のリハビリが不十分だった場合、肩の動きが硬くなる可能性があります。
費用について
鏡視下肩峰下除圧術は公的医療保険の適用となります。
手術費用は、健康保険証3割負担の方の場合、肩関節鏡下手術の目安として22万円~36万円程度(概算)となります。
患者様の経済的負担を軽減するため、事前に加入の医療保険に申請いただくことで、所得に応じた自己負担限度額を超える医療費の支払いが免除される「高額療養費制度」が適用されます。また、医療費控除についてもご相談いただけます。
当グループでの手術の特徴
アレックスメディカルグループは、Arthroscopy(関節鏡手術)、Rehabilitation(リハビリテーション)、Exercise(運動療法)の3分野を重視した治療を提供しています。
- 低侵襲で正確な関節鏡手術: 熟練した専門医が執刀し、1mmの精度にこだわった処置を行うことで、最大限の治療効果と早い回復を実現します。傷が小さく、筋肉へのダメージを最小限に抑えます。
- 専門家による徹底したリハビリ管理: 経験豊富な理学療法士が、手術内容や目標に合わせた最適なリハビリプログラムを作成します。医師とリハビリスタッフが連携し、完全な機能回復までをサポートします。
- 再発予防のための運動療法: 痛みがなくなった後も、再発を防ぐために科学的根拠に基づいたトレーニング指導を行います。トレーナーも連携し、肩の安定性を高める身体づくりを支援します。
よくあるご質問
Q. 手術は痛いですか?
A. 手術は全身麻酔下で行うため、術中に痛みを感じることはありません。術後の痛みに対しては、適切な痛み止めで管理を行います。
Q. 入院期間はどれくらいですか?
A. SAD単独手術は日帰りも可能ですが、リハビリ導入を考慮し、4~5日間程度の入院を推奨することが多いです。
Q. 仕事やスポーツへの復帰はいつ頃できますか?
A. SAD単独手術は固定が不要なため復帰は早いです。スポーツ復帰はリハビリの進捗に合わせて、通常3〜4ヵ月以降を目安としています。
Q. 術後に装具は必要ですか?
A. SAD単独手術の場合、原則として固定装具は必要ありません。腱板修復術などを併用した場合は、一定期間の固定が必要となります。
関連する疾患について
- 腱板損傷・断裂
- 石灰沈着性腱板炎
- 上方関節唇損傷(SLAP lesion)