surgery
術後リハビリ計画(股関節)
手術前のリハビリテーションってなにをするの?
手術前からリハビリを開始することで、術後の経過をスムーズにします。主に以下の5つの目的で行います。
- 関節の動きの制限を改善:股関節周りの軟部組織や筋肉(腸腰筋、臀筋群など)の柔軟性を高め、骨の配列(アライメント)を改善することで、術後の可動域回復を早めます。
- 筋力低下の改善:患部だけでなく、体幹や反対側の脚、上半身の筋力強化を事前に行い、術後の歩行訓練に備えます。
- 動作の改善:股関節に負担のかかる動作のクセを修正し、正しい体の使い方を覚える「動作学習」を行います。
- 術後の日常生活動作(ADL)の指導:術後の状態に合わせ、松葉杖の使い方や階段昇降、靴下の着脱、トイレの立ち座りなど、股関節に負担をかけない動作を事前に練習します。
- 術後のプロトコル(進め方)の説明:スポーツ復帰や社会復帰までの具体的な時期、復帰のための条件(筋力基準など)を詳しく説明します。
入院中のリハビリってなにをするの? 退院後の生活はどうなるの?
入院日
- 術前評価: 関節の可動域、徒手筋力テスト、現在の歩行状態の確認を行います。
- 松葉杖練習: 術後の免荷(体重をかけない)または部分荷重を想定した歩行練習を実施します。
手術当日
- ベッドサイドでの術後評価: 足の痺れや感覚障害の有無、足首や指が動くか(神経損傷の有無)を確認します。
手術翌日〜退院日
- リハビリの実施: 1日2回、専門のリハビリ室にて実施します。
- 基本動作訓練: 執刀医の指示に基づき、股関節の可動域訓練や、松葉杖を用いた平行棒内歩行・階段昇降の練習を行います。
- 個別指導: 個々の生活環境に合わせ、和式生活か洋式生活かなどのニーズに応じた個別指導を行います。
手術後のリハビリってなにをするの? どれくらいで生活できるの?
手術の内容(股関節唇修復術、FAI骨形成術、スポーツヘルニア修復術)によって経過が異なります。
1. 使用する用具・荷重の期間
- 股関節唇修復術 / FAI骨形成術: 術後2〜4週間は松葉杖を使用します。組織の修復具合に合わせ、1/3荷重→1/2荷重→全荷重と段階的に負荷を増やします。
- スポーツヘルニア修復術: 通常、術後翌日から痛みに応じて全荷重歩行が可能です。松葉杖はバランス保持のために数日間使用する場合があります。
- 関節唇再建術(自家腱移植など): 組織の定着を優先するため、約4週間の免荷または部分荷重が必要となる場合があります。
2. 固定を行う期間
- 股関節唇修復術 / FAI骨形成術: 原則として硬性装具による固定は行いませんが、可動域を制限するための「股関節ソフトブレス」を2〜4週間装着する場合があります。
- スポーツヘルニア修復術: 固定は行いません。早期から体幹や骨盤周りの安定化を図ります。
3. 禁止事項(禁忌動作)
- 股関節唇修復術 / FAI骨形成術: 術後4週間は、股関節の深い屈曲(曲げすぎ)、過伸展(後ろに伸ばしすぎ)、過度な回旋(捻る動き)を禁止します。特にしゃがみ込み動作や脚を組む動作は避けてください。
- スポーツヘルニア修復術: 術後2週間は、腹圧が急激にかかる動作や、過度な股関節の伸展・外転を制限します。
リハビリテーションの具体的内容と運動許可の条件
【術後早期】傷の治癒・炎症の鎮静・可動域拡大の時期
- 炎症対策: アイシング、圧迫、患部の挙上。
- 可動域訓練: CPM(持続的他動運動器)の使用、医師の指示範囲内での愛護的な可動域拡大。
- 患部外トレーニング: 足首や膝、上半身の筋力維持トレーニング、腹横筋などのインナーユニットの活性化。
【中間期】術後4週〜8週:歩行の自立と筋力強化の時期
- 目標: 松葉杖なしでの正常な歩行(独歩)の獲得、片脚立位の安定。
- 訓練内容: 水中ウォーキング(浮力を利用した負荷調整)。
- 殿筋群(中殿筋・大殿筋)の強化(クランプシェル、ブリッジ運動)。
- 固定式自転車(エルゴメーター)によるペダリング。
【スポーツ・社会復帰許可まで】術後3ヶ月〜:動的安定性とパフォーマンス向上
- 訓練内容: ジョギング開始、アジリティトレーニング(切り返し動作)、各競技特性に合わせた動作訓練。
- 復帰の具体的条件:
- 股関節の可動域が健側(良い方の足)の90%以上回復していること。
- 等速性筋力測定にて、筋力が健側の85%以上に回復していること。
- 片脚スクワットやジャンプ着地テストにおいて、膝や骨盤のブレがないこと。
注意事項
- 腱や軟骨の病変がある場合は、組織の修復を優先し、上記のリハビリ進捗より2〜4週間程度遅らせる場合があります。
- 身体機能や手術中の処置内容、術後の回復経過により、リハビリ内容や時期は変動します。
- 運動の強度や範囲については、必ず担当スタッフや執刀医の指示に従ってください。