鏡視下腱板修復術(ARCR)術後リハビリテーション
肩腱板断裂の治療
腱板断裂の治療法としては保存療法(リハビリテーション、注射、内服薬)と手術療法があります。多くの場合は保存療法を最初に行います。保存療法を施行しても痛みや機能改善が見込めないときは手術療法を行います。しかし、腱板断裂の程度や症状の程度、早期職場復帰などの希望がある場合は、最初から手術を検討することもあります。 手術にはリスクも伴いますので担当の医師と相談して決定します。
腱板断裂のサイズ
腱板の断裂サイズは、超音波画像やMRI画像で医師が診断します。1㎝未満 ➡小断裂
1~3㎝未満 ➡中断裂
3~5㎝ ➡大断裂
5㎝以上 ➡広範囲断裂
このページで紹介するのは断裂サイズが 小断裂、中断裂 の手術とその後のリハビリ内容です。リハビリテーションの内容は腱板の断裂した大きさによって治療プログラムが異なります。
手術内容
鏡視下腱板修復術(ARCR)とは、断裂した腱板を上腕骨頭にくっつける
手術です。
内視鏡で関節の中を観察しながら、断裂した腱板の周りを綺麗にして
糸付きビス(アンカー)を骨頭に挿入し、糸を腱板に縫い付けます。
手術後の装具使用について
手術後は修復した腱板にストレスが加わらないように装具を装着します(図1)術後の装具固定の期間は3週間です。
装具の着脱方法については術前に理学療法士が指導します。
装具のつけ方についてはこちらをご覧ください。
➡ウルトラスリング装具装着方法
入浴について
抜糸が済んでいない場合は創部に防水テープを貼り浸水予防を行います。 術側や背部は自分で洗うことや拭くことが困難なため、介助をお願いしましょう。装具固定期間中は入浴時も三角巾とペットボトルで作った装具をつけて入浴します。
入浴時の装具
装具固定期間中は入浴時も術部に負担をかけないように固定を行います。入浴時は三角巾の中に空の1.5ℓサイズのペットボトルを入れて代用した装具を使います。ペットボトルは蓋を占めて水が入らないようにしましょう。
就寝時のポジショニングについて
装具固定期間中は就寝時も装具を着用します(図2.図3)。肩に力が入らず脱力できるようにクッションやタオルを入れましょう。
悪い例のようにタオルと腕の間に隙間があると肩が動いてしまうスペースができて痛みが出やすくなってしまいます。
肩甲骨とクッションが平行になるようにタオルやクッションを入れましょう。肩甲骨の位置に対して肘が下がらないように注意しましょう。
術後リハビリテーション
手術を終えた後もリハビリを行います。時期によって動かせる範囲や行っていい運動が決まっているので執刀医、担当の理学療法士と相談しながらリハビリを勧めましょう。
術後~3週
この時期では手術後の炎症の急性期にあたるので炎症による疼痛の管理や術部に負担がかからないようにします。姿勢の指導、肩甲骨周りの筋肉の筋力強化、不動による浮腫みが生じないように手首や指をよく動かします。
自力では動かせないのでセラピストによる他動の可動域訓練、筋肉の緊張の緩和、腱板に力を入れる訓練を行います。
姿勢指導、肩甲骨周囲筋の筋力強化
術部のアイシング:20分ほど氷嚢を使って冷やしましょう。
浮腫み予防:グーパーを繰り返す
術後3週~
この頃から、 反対側の手で支えて 内、外に動かすことができます。自力ではまだ動かせません。
術後4週~
腱板の修復が進み、術後経過3週間後に装具を外します。装具は外れますがまだ自分の力で動かすのは禁止 です。
反対側の手で支えて動かします。
リハビリテーションでは理学療法士が腱板の修復を促すように介入します。
術後5週~
この頃から、肘を曲げた状態で支えなしで手を内外に自分で動かすことができます。全ての断裂サイズで反対の手で支えて腕を上にあげる動作ができるようになります。
術後7週~
腱板の修復が進み、 すべての方向に対して可動域の制限なく動かせます。しかし、物を持ったり、 筋力訓練は筋力が回復してないのでまだ禁止 です。
術後9週~
この時期から修復した腱板に抵抗をかけることができます。可動域の獲得後にセラバンドなどによる腱板エクササイズを行います。術後3ヵ月
この時期までに手を頭の上に挙げる動作や、肘を開く動作の獲得を目指します。腱板が順調に回復しても、家事動作や自動車運転動作の獲得には2~3ヵ月かかります。
あくまでも、家事動作や自動車運転の開始時期には個人差があります。
自己判断せずに、必ず執刀医の許可を得た上で行いましょう。
術後6ヵ月
この時期は、手術後の定期検診で可動域測定、疼痛評価、筋力測定、MRI撮影を行います。MRI画像や筋力測定の結果を基に、スポーツや余暇活動への復帰にむけて、必要な機能改善を図ります。
※その後、定期検診は、術後1年、術後2年で行い再断裂の有無や復帰状況の確認を行います。