腱板断裂

原因

肩関節は人体の中で最も大きい可動性を持つ関節です。
そのため、髪を洗う、背中に手を回す、高い場所に手を伸ばすなどの日常生活動作が行えます。しかし、大きな動きができる分不安定な関節でもあります。
この不安定な関節を支えるのが関節包や靭帯そして腱板です。
腱板は4つの筋肉(棘上筋、棘下筋、小円筋、肩甲下筋)で構成されています。(図1)
これらの筋肉は肩のバランスをとる作用があるため、安定した日常生活動作を行うことができます。

腱板断裂は、中高年に頻発する肩関節疾患です。
中高年に発症しやすい理由の1つとして、腱板の変性が挙げられます。
これは加齢に伴い腱板組織が弱くなり、断裂が容易に生じやすい状態であると考えられています。
また、解剖学的に腱板(特に棘上筋)は上腕骨頭と肩峰の狭い空間に位置しています。
そのため、手を挙げるなどの日常生活の中で腱板は挟み込まれる状態となり、繰り返しの動作で自然と断裂が起きると考えられています。
その他に、交通事故や転倒、スポーツ中のコンタクトプレーなど外傷が原因になることもあります。

症状

腱板断裂の症状は、肩を動かすと痛い、物を持つ時に力が入らない、夜痛みが強くなり寝ることができないなどの症状があります。
腱板断裂の中にも、断裂を認めても症状がでない無症候性断裂が存在します。無症候性断裂は腱板断裂の半分以上を占めていると言われています。

画像所見

レントゲン検査・超音波検査・MRI検査を行います。
特に腱板の状態を確認するのに有用なのが超音波検査(図2)です。
MRI検査では断裂している範囲や腱板筋の質を把握することができます。

評価

医師や理学療法士が肩の筋力や可動域を評価します。

腱板は4つの筋肉で構成されています。どの筋肉が断裂しているのか確認することが重要で、さまざまな徒手検査を行い判別します。
 

肩周囲の関節が硬くなり動かなくなっていることが多くあります。肩関節・肩甲骨・胸椎の関節可動域(動かすことができる範囲)を確認します。


肩関節や肩甲骨周囲の筋力が低下して正しく関節を動かせていないことが多くあります。どの筋肉が肩のバランスを崩しているのか把握するため
筋力検査を行います。

治療

腱板断裂に対する治療は、保存療法(リハビリ・内服・注射)と手術療法があります。
多くの場合は保存療法の適応で、症状の軽快や日常生活に支障を感じなくなります。
しかし、保存療法で改善が認められない場合や早期の職場・スポーツ復帰などの希望がある場合、若年者の外傷性腱板断裂の場合は、早期に手術療法を選択する場合があります。
手術にはリスクも伴いますので担当の医師と相談して手術適応を慎重に決めます。

保存療法では症状の原因によって行う内容が異なります。
・炎症
 関節内注射・内服により炎症の鎮静化を目指します。また、リハビリでは肩甲骨周囲・胸郭の可動性改善を目的にリラクセーションやストレッチを行います。

・拘縮(肩関節が硬くなる)
 炎症により身体の反応として肩関節の筋肉や靭帯が硬くなってしまいます。このような場合は硬くなってしまった組織に対してストレッチや筋力訓練を行い、
 可動域の回復を目指します。

・断裂した腱板がひっかかる
 断裂した腱板の筋力低下や肩関節の拘縮などにより正常な肩の動きができなくなり、肩を動かすときにひっかかり感が出てしうことがあります。
 このような場合は肩関節・肩甲骨・胸椎のストレッチや筋力強化を行い、肩周囲の関節との連動した動きを正常に戻します。

    

 
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