足関節捻挫(外側靱帯損傷)

足関節捻挫(外側靱帯損傷とは)



足首の外側には、外側靱帯と呼ばれる靱帯があり、足首を内側に捻る動き(内反)で引き伸ばされます。
ジャンプ動作の着地や急激な方向転換の際に強制的に内反への力が加わり、靱帯が引き伸ばされることで
損傷断裂してしまいます。
足関節捻挫(外側靱帯損傷)はスポーツによる急性外傷としての頻度は最も高く、重症度の高い障害ですが、
軽視されることが多く、慢性化するケースが非常に多いため注意が必要です。

原因



足関節は、脛骨・腓骨・距骨の3つの骨で構成されています。
外側(腓骨側)は前距腓靱帯・後距腓靱帯・踵腓靱帯に囲まれ、内側(脛骨側)は強靭な靱帯である三角靱帯が存在します。
足関節は、足首を外側に捻る動き(外反)より内側に捻る動き(内反)の方が可動性が高い関節です。
そのため、捻挫の多くは外側の靱帯が損傷する内反捻挫で、ジャンプの着地や急激な方向転換などで内反が強制されると、
外側に存在する前距腓靱帯などが引き伸ばされたり、断裂します。
靱帯の損傷程度によって、捻挫の程度を3つに分けています。

Ⅰ度➡︎前距腓靱帯の部分損傷:靱帯付着部での軽微な損傷

Ⅱ度➡︎前距腓靱帯の単独断裂

Ⅲ度➡︎前距腓靱帯と踵腓靱帯の断裂

症状



足関節捻挫のほとんどは、足関節を内側に捻って受傷し、足関節外側の靱帯(前距腓靱帯)が損傷します。
外果(外くるぶし)の前や下に痛みがあり、腫れていたり、外果の前や下を押さえると痛みます。
重症度によって症状は異なりますが、安静時や歩行時の痛みも見られます。

診断

内反捻挫の場合は、足関節外側の圧痛、内反ストレステストによる動揺性、左右左を見ます。
レントゲンによる骨折の有無のチェックや、骨片有無のチェック、靱帯の緩みを確認するストレスレントゲン、
MRI、超音波検査による靱帯損傷の有無や炎症所見をチェックします。

超音波検査
関節内の腫れや、浅い部分にある腱、靭帯の損傷を、簡便に検査を行うことが可能です。
超音波診断装置では、靭帯組織は骨と骨の間を結ぶ繊維が確認することが出来ます。


 ⇧足関節 正常な靭帯組織のエコー画像


 ⇧靭帯損傷を認めるエコー画像(靭帯が肥厚し緊張の低下を認める)


超音波診断装置を用いて診察を行うことで靭帯の断裂や、炎症症状や関節の不安定性が確認出来ます。
靭帯の修復過程も確認することが出来るため診察で不安定性があるのか確認し、固定の方法やリハビリ内容の決定、
スポーツを行なっている方ではスポーツ復帰の判断基準にも用います。

治療・リハビリ


受傷から1-2週間(急性期)
急性期に行う処置として、『RICE』処置があります。
『RICE』とは、Rest(安静)Icing(冷却)Compression(圧迫)Elevation(挙上)の頭文字をとったもので、
捻挫や打撲、肉離れなどをしてしまった際、けがの悪化を防ぐために行う応急処置です。
「外傷を受けたときなどの緊急処置は、患部の出血や腫脹、疼痛を防ぐことを目的に患肢や患部を安静(Rest)にし、
 氷で冷却(cing)し、弾性包帯やテーピングで圧迫(Compression)し、患肢を挙上(Elevation)すること」(日本整形外科学会)

これらを適切に行わず放置してしまうと、けがの悪化や競技復帰の期間が伸びてしまう可能性が高くなります。
これらを適切に処置し、どのように対処するかで競技復帰の時期を変化させることができます。

痛みがあり荷重が行えない急性期でも、患部外トレーニングとして股関節外転筋などの筋力強化を開始します。
捻挫後の代表的な後遺症としては、お尻の筋力低下(中殿筋)やバランス能力の低下があります。
競技復帰のパフォーマンスにおいて、どちらも捻挫の再発予防には非常に重要となってくるため、積極的にトレーニングを行います。
受傷後2週間 - (痛みが引いてきた時期)
荷重をかけても痛みなく、足を引きずったりせずに歩けること、足の腫れや痛みが軽減したらバランストレーニングを行っていきます。
バランスボードを用いてトレーニングを行ったり、目をつぶってバランストレーニングを行うなど、難易度を調節しながら行います。
また、足関節の安定性を向上させるトレーニングも開始していきます。
セルフエクササイズ
1.下腿屈筋群のストレッチ 
    ➡︎タオルなどを足先のかけ、ふくらはぎから足先の筋肉を伸ばす。  
     【20〜30秒 × 3セット程度】


2.タオルギャザー 
  
➡︎床の上にタオルを置き、タオルの端に踵をつける。  
     踵を床から離さないまま、指先でタオルをつかみ、自分の方にたぐり寄せる。
  (※足の指を大きく動かす)  【10回程度】

詳細→タオルギャザー  
トレーニング
○チューブトレーニング(外返し)
 ➡︎下腿外側の筋力強化(腓骨筋群)

○チューブトレーニング(内返し)
 ➡︎下腿内側の筋力強化(後脛骨筋)

○バランストレーニング
薬物療法


炎症が強い場合、非ステロイド性消炎鎮痛剤(NSAIDs=ロキソニン)や湿布を処方し、炎症の軽減を図ります。
飲み薬を長期的に使用し続けると胃が荒れるなどの副作用が生じることがあるため、注意が必要となってきます。
電気治療
 


足関節外側靱帯損傷の急性期では、炎症を軽減させるため、電気治療や超音波治療などの物理療法も併用しながら治療を行います。
装具療法(サポーター)


捻挫後、靱帯の断裂が生じている場合は、ギプス固定と松葉杖を使用します。
その後、復帰まではテーピングやサポーターも使用し、徐々に運動レベルもあげていきます。
手術療法
保存療法に抵抗し、足関節の不安定性や痛みが残存する場合に手術療法を検討します。
AR-Exグループ クリニック