股関節の手術

股関節は、太ももの骨の先端(大腿骨頭)とその受け皿(骨盤、寛骨臼)で形成されています。
寛骨臼の周りには関節唇という組織があります。その役割は、大腿骨頭と寛骨臼の密着度を高め曲げた時のクッションとなるために寛骨臼の縁を覆っています。
疾患の例として股関節唇損傷は、大腿骨頭の付け根の部分(頚部)と寛骨臼がその動きや形態異常により衝突し組織が傷むことです。




 

手術の適応

診察で、問診や身体所見と単純レントゲン画像、MRIの結果から股関節の痛みに対する診断をします。
まずは、3ヶ月程度のリハビリテーションで痛みや症状が減るかどうかを観察します。
リハビリテーション後、症状に変化がない場合手術を主治医と検討します。
症状「股関節前方の詰まる感じ」、「車の乗り降りでの股関節の痛み」など。
 

身体所見


Anterior Impingement Test

図1:股関節屈曲90°、内転、内旋つまり感や疼痛がある場合テストは陽性 
 
Flexion Abduction External Rotation Distance (FABER)

図2:股関節屈曲、外転、外旋し反対側の膝に足首を置き、膝と床からの距離を測る反対側の距離と比較し1/3以上であれば陽性
 

単純レントゲン画像


正面1:寛骨臼の深さを測定


2a


2b正面

2a,b:Dunn view (股関節屈曲45°外転45°)大腿骨の出っ張り(cam変形)の有無を確認
参考資料:スポーツ整形外科医S. Uのブログ Sports Physician S.U Blogよりhttp://blog.livedoor.jp/soshi_sports/archives/cat_19429.html?p=13 
 

MRI

 
radial:股関節唇に高輝度変化や正常な位置からの脱落などを認める
 

手術までの流れ

医師の診察を受け、手術が決定したら
①術前のリハビリテーション手術前にリハビリテーションを行います。手術後の回復時期やパフォーマンスを効率よくする改善させるために、術前のリハビリテーションが大切です。手
術後は松葉杖を使用した生活になりますので、術前に松葉杖を用いた歩行練習や階段の上り下りを練習します。
②術前検査リハビリテーションの他に、手術の1ヶ月前に術前検査を行います。身長、体重、血液検査や喫煙歴や呼吸器疾患が過去にある方は呼吸器機能検査を行います。術前検査は約1時間程度かかります。
③入院日入院当日は看護師から手術前の準備について説明があります。入院時リハビリテーションでは、術後に使用する装具のフィッティングを行い、着脱練習を実施します。
 

入院期間

入院期間:2週間
基本的に2週間ですが、自宅が遠方などの理由で長期入院を希望する場合はスタッフに相談してください。
 

費用

健康保険3割負担の場合
1週間 2週間
入院費 213,300円 354,500円
保証金※ 30,000円 30,000円
装具費用 69,116円 69,116円
松葉杖保証金※ 10,000円 10,000円
合計 322,416円 46,3616円
※入院時必要な費用 高額医療費の払い戻し制度があります。詳しくは下記のページを参照してください。→  入院について
 

鏡視下手術について

通常、殿部から大腿の側面に3箇所の穴を開け、内視鏡で股関節の状態を観察しながら手術を行います。まず股関節を牽引した後、穴から内視鏡と器具を入れた後、広い視野を獲得するために関節包を切開します。次に関節唇や軟骨、大腿骨頭と寛骨臼の骨形態を観察します。関節唇が十分に残っている場合は関節唇修復術を行います。関節唇が欠損している場合や縫合不能な断裂をしている場合は、関節唇再建術を行います。鏡視下股関節唇修復術
関節唇が損傷している周辺を寛骨臼から一旦剥がし(画像1)、アンカーを打ち損傷した関節唇を正しい位置に適切な形にして臼蓋に固定します(画像2)。

画像1

画像2
参考資料:スポーツ整形外科医S. Uのブログ Sports Physician S.U Blogより
http://blog.livedoor.jp/soshi_sports/archives/cat_19429.html?p=12
 

鏡視下股関節唇再建術

損傷が大きく縫合できない関節唇の場合、再建術を行います。遺残した関節唇を切除した後、大腿部の側面を3〜4cm切開し腸脛靭帯を採取します。採取した腸脛靭帯を束ねて股関節唇に代わる組織を作製し(画像3)、関節唇が欠損しているところにアンカーを用いて固定します。

画像3
参考資料:スポーツ整形外科医S. Uのブログ Sports Physician S.U Blogより     
http://blog.livedoor.jp/soshi_sports/archives/cat_19429.html?p=12関節唇の修復または再建と同時に、骨形態の異常や軟骨に対してもアプローチします。
 

大腿骨頭のCam変形と下前腸骨棘の骨棘切除

骨の出っ張りが関節唇を再び挟み込まないようCam変形と下前腸骨棘の突出を削ります(画像4)。

画像4
参考資料:スポーツ整形外科医S. Uのブログ Sports Physician S.U Blogより     
http://blog.livedoor.jp/soshi_sports/archives/cat_19429.html?p=12
 

軟骨の損傷に対する治療

2㎠程度軟骨が欠損している状態に対してmicrofractureを行います。
 関節唇の修復と骨棘切除後、切開した箇所を縫い合わせて手術が終了します。
従来の関節包を縫合する方法では、関節包が断裂するケースがあったため、当院の内田医師はより強固に関節を縫合できるshoelace capsular closure technique(画像5)を行っています。術後成績は良好です。

画像5
参考資料:スポーツ整形外科医S. Uのブログ Sports Physician S.U Blogより     
http://blog.livedoor.jp/soshi_sports/archives/cat_19429.html?p=2
 

術後のリハビリテーション

術後、2〜3週間は手術した箇所を保護するため、装具の着用をお願いしています。また、組織の回復過程に応じて松葉杖を用いて手術をした箇所への荷重と関節を動かす範囲を理学療法士が管理します。軟骨に対する処置をしていない場合は術直後から脚に体重をかけることができますが(10kg未満)、処置をしている場合は3〜4週間体重をかけずに過ごします。
松葉杖の使用期間は個々の状態によって異なりますが、6〜8週間で杖なし歩行ができることを目標にします。
 

仕事復帰 

仕事復帰は、通勤時間や方法、職種や作業内容によって異なりますが、デスクワークなど移動を多く必要としない場合、疼痛が落ち着いていることを前提に術後早期から仕事復帰が可能です。
個々によって状況が異なりますので、医師または理学療法士にご相談ください。
 

スポーツ復帰

約6ヶ月が経過し手術をした箇所が修復したことを単純レントゲンやMRIを用いて確認し、スポーツテストを行います。
筋力やバランスなど十分な身体能力があることが確認できたら徐々にスポーツへ復帰していきます。 
術後のリハビリテーションについて記載したページがあります。
下記をご参照ください。→  術後リハビリテーション  
 

よくある質問(Q&A)


Q1 松葉杖はいつ外れますか。
A  6〜8週間程度で松葉杖を外します。

Q2 装具は寝ている時も着けますか。
A  装具を着用している2〜3週間前は股関節を内側(内転)、あぐら(外旋)をしないようにお願いしています。入院時に、理学療法士や看護師が寝ている姿勢や夜間の様子を観察しています。過剰に股関節が動いていない場合は装具を外して寝ていますが、動きすぎてしまっている場合はクッションの使用や装具の着用をお願いしています。

Q3 スポーツ復帰はいつですか。
A  6ヶ月後を目安、医師・理学療法士と相談しながら徐々にスポーツ復帰を目指します。

Q4 仕事復帰はいつですか。
A  通勤時間や方法、職種や作業内容によって異なりますので医師または理学療法士にご相談ください。 

Q5 車の運転はいつからできますか。
A  処置した箇所が落ち着いてくる2か月後が目安ですが、医師の指示に従うようにお願いします。 *処置内容や状態が個人によって異なるので前述した期間はあくまでも目安です。
 

当院担当医の紹介

当院で股関節の手術を実施しているのは久保貴敬医師です。
外来は、木曜日終日(第2・4週)と土曜日終日(毎週)を中心とした日程です。
日程は毎月お知らせで告知しておりますのでご確認ください。
なお、久保貴敬医師の詳細は下記をご参照ください。

→  久保貴敬医師
 
AR-Exグループ クリニック