前十字靱帯損傷

前十字靱帯損傷(Anterior Cruciate Ligament)とは

膝には関節を安定させる靭帯が4つ存在します。前十字靭帯(ACL)はその内の一つで、膝関節内にあり大腿骨と脛骨を結ぶ靭帯(図1)です。この靭帯の役割は、前後方向や回旋動作を制御し、膝の安定性を保つことです。


図1 前十字靱帯の解剖
 

受傷機転

接触型と非接触型に分けられます。
〈接触型〉フルコンタクトスポーツ(ラグビー、アメフト、ハンドボール、柔道、レスリング)等、リミテッドコンタクトスポーツ(バスケットボール、
     サッカー)等で膝の外側から外部の物体が膝に接触し、膝が内側に入り、かつ回旋ストレスが加わることで損傷します。
 
〈非接触型〉ジャンプの着地、急激な方向転換、急激なストップ動作等により膝が内側に入り、捻ったときに損傷します。


 

発症メカニズム

膝が内側に入り、つま先が外側に向いている状態で過度なストレス(大腿骨と脛骨には回旋する力と前方にずれる力)が靭帯に加わり、損傷します。
(Knee in-toe out)ことで受傷することが多いですが、急激なストップ動作により膝が伸びきった状態(過伸展)や靭帯に強い捻りが加わった時にも損傷が起こります。



損傷が起きやすいスポーツ
バスケットボール、サッカー、ラグビー、柔道、スキー等
 

前十字靱帯損傷の症状

・膝崩れ・膝関節の不安定感・痛み・曲げにくい、伸ばしにくい・膝が腫れる
 

診断

医師による徒手的検査やMRI画像による検査が有用です。また、怪我した時の状況(受傷機転)も重要です。



図4

治療

保存療法と手術療法の2つがあります。保存療法では、リハビリを中心とし膝関節周囲筋の筋力増強運動を行いながら、必要に応じて装具を装着し、日常生活動作の獲得とスポーツ活動への復帰を目指します。また、不安定性が残存した状態で膝崩れを繰り返すことで、半月板や関節軟骨の損傷が2次的に起こるリスクが高くなります。以前はACL損傷はスポーツ選手の間で手術療法が重要であると言われてきましたが、損傷後スポーツをやめれば問題なしとされていました。しかし近年では変形性関節症の進行が早まり、人工関節置換術に至る確率が高くなると統計結果が出たことから若年者であっても基本的に手術を勧めています。
 
 

手術療法(靱帯再建)

縫合しても血行不良から再損傷のリスクが高いため、再建術を選択します。再建術に使用するものとして2種類あり骨付膝蓋腱(BTB)か半腱様筋腱、薄筋腱(STG)を使います。
それぞれ長所、短所があるため医師と相談の上、スポーツの競技特性や社会復帰といった、様々な状況に応じて術式を選択できます。術後1ヶ月で日常生活を送れるようにし、術後3ヶ月からジョキングを開始し、術後6ヶ月でスポーツ復帰を目指しますが、コンタクトスポーツや激しい動きのスポーツ復帰までは7−9ヶ月かけてレベルアップすることが多いです。競技復帰の目安としては、以下が挙げられます。
・正常な関節可動域と靭帯の安定性が獲得
・大腿筋力(ハムストリングス、大腿四頭筋)の回復
・危険肢位(Knee-in等)にならないような十分なスキル、フォームの獲得
・実際のスポーツ活動で不安感がない状態

『膝関節専門医の紹介』
 
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