有痛性外脛骨障害
有痛性外脛骨障害とは
足部には発生学的に余剰物ともいわれる過剰骨が存在します。足の舟状骨(内くるぶしの前下方)の内側に存在する余剰骨のことを外脛骨と呼びます。
発生頻度は約15%で足の余剰骨の中では最も発生頻度が高いことが報告されています。外脛骨が存在しても痛みが無いが場合もあり、歩行時や運動時の痛みが生じている場合を有痛性外脛骨障害と呼びます。成長期に急激な運動の後や外傷(足首の捻挫など)で症状が出現するようになりますが、15〜17歳の骨の成長が止まる頃には治まります。20歳以降では捻挫後に痛みを生じやすくなったと受診する方もいます。
原因
様々なスポーツで起こりますが、陸上、サッカー、バスケットボールなどのよく走る競技で多く見られます。舟状骨は後脛骨筋と呼ばれるふくらはぎにある筋肉の付着部になっており、ふくらはぎの筋肉が過度の運動により疲労し硬くなっていると、後脛骨筋腱が引っ張られ外脛骨に炎症を起こします。捻挫などの外傷、靴による圧迫など外的ストレスが引き金となって痛みが発生していることもあります。特に外脛骨が突出している形状の人や、扁平足、回内足があると外脛骨に負担がかかりやすいため、激しい運動をしなくても長時間の歩行や立ち仕事などでも痛みを生じることがあります。
扁平足の評価は以下のものがあります。
扁平足の評価(FPI-6)
アーチの高さと形態を視診する−2点:アーチは高く、後方の傾斜が急峻な角度
−1点:アーチは中等度に高く、後方の傾斜がわずかに急な角度
0点:アーチの高さは普通でアーチ前後の傾斜は等しい
1点:アーチは低く、中心部分がいくぶん平坦化している
2点:アーチは非常に低く、中心部分が重度に平坦化しており、床と接する
リハビリでは理学療法士が足のアーチの高さや形態を評価します。主に上の表の得点で分類されるのは以下のような形態です。
扁平足の評価(Navicular Drop Test)
座位と立位で舟状骨の高さがどれくらい変化するかを調べ、内側縦アーチの柔軟性を評価する【座位での舟状骨高(mm)-立位での舟状骨高(mm)】
正常:6〜9mm
異常:10mm以上→足部の柔軟性が過度であると判断できる
リハビリではこのように足の状態を評価し、どのような理由で患部に対してが生じて痛みが発生しているかを考えながら治療をしていきます。
診断
まず外脛骨を押して痛みがあるかを確認します。X線で外脛骨の有無を検査し、外脛骨の存在を認め、押して痛みがある部位と一致すれば外脛骨障害と診断します。外脛骨には形態によって以下の3つに分類されています。
外脛骨の分類(Veitch分類)
Type1:外脛骨の大きさは小さく、舟状骨から分離して後脛骨筋腱の中に存在する。
Type2:外径骨の大きさは大きく、舟状骨と線維性または線維軟骨性に結合して、後脛骨筋腱の付着部の一部となっている。
Type3:骨性癒合して舟状骨と一体化し、外脛骨は突起状となっている。
この中でType2が最も痛みを発しやすいタイプと言われています。
X線画像検査
赤い丸が付いている部分が外脛骨です。
この画像の外脛骨は舟状骨の骨性結合している為、Type3となります。
治療
前述のように15~17歳の骨成長が終わるころには自然治癒することが多いため、 初期治療は保存療法(手術以外の治療)を行います。内側の縦アーチが低く、外脛骨が靴に擦れてしまう、外脛骨に付着する後脛骨筋の引っ張る力が過剰に働いてしまい痛みを生じている場合は、中敷(インソール)が有効です。当院では足形を測定し、オーダーメイドのインソールを作成する事も可能ですので、お気軽にお声掛けください。
リハビリテーションでは、主に内側縦アーチの機能を改善させるストレッチや筋力トレーニングを行っていきます。
後脛骨筋ストレッチ
伸ばしたい足を前にして片膝立ちになります。足の指を外側に向けた状態で前方に体重をかけて、脛の内側にある後脛骨筋を伸ばしていきます。
後脛骨筋トレーニング
椅子に座ってトレーニングしたい方の足にゴムチューブをかけます。かけたゴムチューブを反対の足で押さえ、足の裏ですくうように動かしてトレーニングします。
足指トレーニング(タオルギャザー)
床にタオルを敷き、その上に足を置きます。
足の指をグーパーするようにしてタオルを手繰り寄せます。
このような後脛骨筋を中心とした足首周囲のストレッチや筋力強化を行い、患部に過剰なストレスが生じないようにします。
手術後について
2~3ヶ月の装具療法やリハビリテーションで痛みが改善しない場合や早期にスポーツ復帰を希望する場合は手術療法を行います。手術方法は外脛骨に穴をあけて舟状骨との骨癒合をはかるドリリング法、外脛骨の摘出術があります。当院ではAR-Ex尾山台クリニック(東京)で手術を行っています。
術後のリハビリテーションは当院で行います。スポーツ復帰には概ね3~4ヶ月のリハビリテーションが必要です。