心電図検査
心電図検査とは
心電図検査は心臓の電気的信号を捉えて波形として描出することで心臓の動きに異常がないかを間接的に調べる検査です。健康診断でも日常的に行われており胸部レントゲン検査や血液検査と同様にこれまでに心電図検査を受けたことがない方はいないかと思います。
検査は手足と心臓を囲むように電極を取り付けてベッド上に安静臥床で行います。
心臓は血液を全身に送り出して酸素や栄養を体の隅々まで送り届けて、不要な老廃物などを回収して捨てる役割を担っています。寝ているときも起きているときも24時間休むことなく動き続けており、動きを自分で意識して早めたり遅くしたり止めたりすることはできません(不随意運動)。
心電図検査では、心臓の動きをつかさどる筋肉(心筋)の動きによる電気的信号を捉えて心臓の動きがどうなっているかを推測します。
また、心電図の精密検査として日常生活を送りながら24時間にわたって心電図を記録するホルター心電図という検査もあります。
心電図検査は非侵襲的な検査であり検査による副作用やリスクがほとんどない割に、不整脈や心筋梗塞などの疾患に関して得られる情報が多く極めて有益な検査として頻用されています。
主な疾患や検査所見
比較的頻度の高い疾患や検査所見をいくつか紹介します。心電図検査は広く行われている簡便で非侵襲的な検査であり、かつ心臓の動きや状態について多くのことが分かる非常に有用な検査です。血液検査や心臓超音波検査と合わせて専門的な評価が必要な場合もあります。まずは定期的な心電図検査を受けましょう。
①心房細動
心臓のリズムが不規則になる不整脈の一つです。発作性に頻脈になり動悸や胸部苦悶を感じたり、脈が乱れて胸部違和感を自覚したりする場合がありますが、無症状のことも多くあります。
健康診断や入院時・手術時の検査で偶然に発見される場合も少なくありません。
心房細動は心臓のリズムが不規則になることで血栓ができやすくなり、脳梗塞などの原因となります。
血栓形成を予防するために抗凝固薬を内服する薬物療法を行ったり、根本的に心房細動の発生を止めるためのカテーテルアブレーション治療を行ったりします。
心電図で心房細動が指摘された場合には無症状であっても抗凝固薬の内服が必要な場合がありますので一度内科へ相談しましょう。
②心筋梗塞、狭心症
心臓の筋肉(心筋)に酸素や栄養を送る血管(冠動脈)が動脈硬化などにより内腔狭窄を起こして血流障害を起こしたため、必要な酸素や栄養が行きわたらず心筋の動きが悪くなる状態です。冠動脈への血流が低下し心筋梗塞を起こして心筋が壊死してしまうと致命的になる可能性があります。自覚症状としては締め付けられるような胸痛や呼吸困難がありますが、顔や歯の痛みとして感じる場合もあり注意が必要です。また、糖尿病の持病がある場合には痛みを感じる神経が糖尿病によって障害されていると痛みを感じない(無痛性)場合がありこれにも注意が必要です。
血圧や脂質(コレステロール)、糖尿病などのリスクとなる疾患の管理や禁煙、食事、運動などの生活指導を進めていきます。急性心筋梗塞を起こすと、血圧が低下したり意識障害を起こしショック状態となり致命的になる可能性がありますので、日常的な健康管理が重要です。
心電図検査では、血流障害による心筋の機能低下を反映した波形を所見として認めこれを評価することで場所や状態の推定を行います。
非侵襲的に行うことのできる心電図検査は狭心症や心筋梗塞の検査として有用ですので定期的な検査をお勧めします。
③房室ブロック
心臓の電気信号の伝わりが途切れてしまい収縮のリズムがあちこち(心房と心室)でバラバラになってしまう状態です。心臓は通常、心房(心臓の上半分)と心室(心臓の下半分)が交互に収縮していますが、この順番のリズムが遅れたりズレたりしてしまいます。程度によってはふらつきや失神のような症状が出たり、血圧が低下したりすることがあります。
心電図検査では、心房の波形と心室の波形のズレを評価して診断します。
また、薬剤などが原因の場合もあり原因の検討も必要です。
症状があったり血圧が低下していたりするような程度の場合にはペースメーカーを入れる治療が必要になることがあります。
心電図検査で房室ブロックを指摘された場合にはどの程度なのか相談下さい。
④WPW症候群
WPW症候群では、心臓の電気信号の伝わる道に意味のない迂回路のようなものができて正常な電気信号の伝わりが阻害されてしまう状態になります。通常は無症状ですが、頻脈の発作が起きると動悸やめまい、ふらつきなどを認めることがあります。
また、他の不整脈と合併して致死的な不整脈に発展する可能性もあり注意が必要です。
心電図検査では、デルタ波と呼ばれる特有の波形により診断が可能です。
治療が必要になった場合にはカテーテルアブレーション治療を行う場合があります。
⑤ブルガダ症候群
心筋の働きに異常を生じる遺伝性不整脈で、通常は無症状で心電図検査での異常を指摘されて発見されますが、時に致死的な不整脈に至ることがあり注意が必要です。心電図検査では、特徴的なcoved型やsaddle back型の波形の変化の所見から診断されます。
家族に突然死の既往がないかなども診断の一助になります。
根本的対応として致死性不整脈を回避するための除細動器(ICD)の植え込み術を行うことがあります。