disease

骨盤輪不安定症

症状

骨盤輪不安定症とは、本来であれば強固に結合しているはずの骨盤のつなぎ目が、何らかの理由で緩んだり、わずかにズレたりすることで、骨盤全体がグラグラと不安定な状態になってしまう疾患です。骨盤は体の中心に位置し、上半身の重さを支えつつ、足からの衝撃を吸収する「土台」のような役割を果たしています。この土台が不安定になると、歩く、立つ、座るといった日常の何気ない動作に支障をきたし、体中のあちこちに痛みが生じるようになります。特に産前産後の女性や、スポーツや事故で大きな衝撃を受けた方に多く見られるのが特徴です。

具体的な症状としては、以下のようなものが挙げられます。

  • 腰や骨盤周りの鋭い痛み:立ち上がる瞬間や歩き出し、階段の上り下りなどで、腰の後ろ側や骨盤のあたりにピキッとした痛みや重だるさを感じることがあります。
  • 足の付け根(股関節)や恥骨の痛み:骨盤の前側にある恥骨の結合部分が緩むことで、足の付け根や股関節周辺に痛みが出やすく、足を開く動作が辛くなることがあります。
  • 骨盤がグラグラするような不安定感:自分の足が自分の重さをしっかり支えられていないような感覚や、骨盤の中で骨が動くような違和感を覚えることがあります。
  • 寝返りや姿勢を変える時の苦痛:布団の中で体の向きを変えたり、椅子から立ち上がったりする際に骨盤に力がかかると、ズキンとした強い痛みを感じることがあります。
  • 歩行時の違和感やふらつき:骨盤が安定しないため、歩く時に左右に体が揺れやすくなったり、長く歩くとすぐにお尻や太もものあたりが疲れてしまったりします。

これらの症状は、放置していると慢性的な腰痛につながったり、膝や背中など他の部位にまで悪影響を及ぼしたりすることがあります。少しでも「おかしいな」と感じたら、早めに専門的な知識を持つ医療機関に相談することが大切です。

原因

骨盤輪不安定症が起こる背景には、骨盤を形作る骨同士をつなぎ止めている「靭帯」や「筋肉」の緩みが大きく関係しています。骨盤は複数の骨が組み合わさってできており、それらが非常に強い靭帯によってがっちりと固定されていますが、その固定力が弱まることで問題が発生します。

  • 妊娠と出産に伴うホルモンの影響:出産を助けるために分泌される「リラキシン」というホルモンが靭帯を柔軟にしますが、その影響は産後数ヶ月から1年ほど続くことがあり、その間に育児の負担が重なると不安定な状態が定着してしまいます。
  • 骨盤への急激で大きな衝撃:交通事故や転落、スポーツ中の激しい衝突などによって、骨盤を支える靭帯が損傷したり、骨が微細にズレたりすることで、急性の不安定症を引き起こすことがあります。
  • 加齢や閉経に伴う体の変化:加齢による筋力低下に加え、閉経後に女性ホルモン(エストロゲン)が減少すると、靭帯の弾力性が失われたり、骨盤底を支える組織が弱くなったりして、関節の緩みが生じやすくなります。
  • 長年の悪い姿勢や生活習慣:足を組んで座る癖や片足に体重をかける習慣、長時間のデスクワークなどが続くことで骨盤のバランスが崩れ、特定の箇所に負担が集中して関節が緩む原因となります。

このように、骨盤輪不安定症の原因はライフステージや生活環境によって様々です。自分がどのケースに当てはまるのかを正しく理解することが、根本的な改善への第一歩となります。

診断

骨盤輪不安定症の診断は、一般的なレントゲン検査だけでは「異常なし」と見過ごされてしまうこともあるため、専門的な評価を組み合わせて慎重に行います。

  • 問診による痛みの特定:どのような動作でどこが痛むかを詳しく伺います。仙腸関節の問題であれば、指一本で痛みの中心を指し示せる「ワンフィンガーサイン」が有力な手がかりになります。
  • 身体診察(動作テスト):仰向けの状態で片足を上げる「ASLRテスト」を行い、骨盤を外部から支えた時に足が軽くなるかどうかを確認します。また、股関節を「4の字」に開くなどのテストで、痛みの原因が骨盤か股関節かを判別します。
  • 画像検査による多角的な評価:レントゲン検査では通常の撮影のほか、片足立ち(フラミンゴ位)で撮影して荷重時の骨盤のズレを捉えることがあります。さらに、靭帯の損傷や骨の内部の炎症を詳しく把握するために、MRI検査を行うこともあります。
  • レッドフラッグ(重大なサイン)の確認:発熱がある、原因不明の急激な体重減少がある、あるいは安静にしていても変わらない激痛が続くといった「注意すべきサイン」がないかをチェックし、腫瘍や感染症、骨折などの重大な病気が隠れていないかを見極めます。

当グループでは、これらを総合的に判断し、患者様一人ひとりの痛みの原因を突き止め、納得感のある分かりやすい説明を行うことを心がけています。

治療

骨盤輪不安定症の治療において最も重要なのは、不安定になっている骨盤を「外側からサポートする」ことと、「内側の筋力で支える」ことの二段構えで進めていくことです。多くの場合、保存療法で症状の改善を目指すことができます。

  • 骨盤ベルト(サポーター)による固定:専用のベルトを「大転子」と呼ばれる太ももの外側の出っ張った骨を通る位置で締め、緩んだ骨盤を外側からしっかりと支えることで、関節の余計な動きを抑えて痛みを和らげます。
  • リハビリテーション(運動療法):骨盤を本来の位置で安定させるために、お腹の奥にあるインナーマッスルや骨盤底筋を鍛えるトレーニングを行い、自分の筋肉で骨盤を支える力を高めていきます。
  • お薬や注射による痛みの緩和:痛みが強くリハビリに支障がある場合には、痛み止めの使用や、エコーを使って痛みの原因となっている場所に直接アプローチする注射を行い、炎症を抑えます。
  • 日常生活における動作の工夫:寝返りの打ち方、立ち上がり方、物の持ち上げ方など、骨盤に負担をかけない体の使い方を身につけることで、再発を防ぎ、安定した状態を長く保てるようにします。

治療の期間は、原因や症状の強さによって個人差がありますが、焦らず根気よく取り組むことが回復への近道です。特に産後の方は、靭帯が整いやすい時期に適切なケアを行うことで、将来的な体のトラブルを予防することにもつながります。

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