disease

急性腰痛症(ぎっくり腰)

症状

急性腰痛症は、通称「ぎっくり腰」として知られ、欧米ではそのあまりの激しさから「魔女の一撃」とも称される、突然発症する強烈な腰の痛みが特徴の病態です。重い物を持ち上げたり、急に体をひねったりといった動作はもちろん、中にはくしゃみや咳など、何気ない動作をきっかけに発生することもあります。

この激痛により、日常生活における動作が著しく制限されます。一度発症すると、立ち上がること、座り続けること、寝返りを打つことなど、日常の基本的な動作が困難になり、仕事や生活に大きな支障をきたします。しかし、ほとんどの急性腰痛症は、適切な初期対応と治療を行うことで、通常1週間から2週間程度で痛みが徐々に改善し、回復に向かう傾向にあります。

激しい痛みの全てが単純なぎっくり腰ではありません。中には、緊急性の高い重篤な疾患が隠れている可能性があります。以下の症状が一つでも当てはまる場合は、「レッドフラッグ」として速やかに専門の医療機関での診察が必要です。

  • 脚のしびれや強い痛み(坐骨神経痛)が続く場合:椎間板ヘルニアなどによる神経の強い圧迫が疑われます。
  • 足に力が入らない(麻痺)がある場合:神経機能の重篤な障害を示している可能性があります。
  • 排尿や排便のコントロールができない場合:緊急性の高い馬尾神経の障害が疑われます。
  • 発熱を伴う場合:感染症など、炎症性の重篤な病態が背景にある可能性があります。
  • 痛みが時間経過によっても改善せず、2週間以上持続する場合:特異的な疾患や慢性化への移行が考えられます。

激しい痛みに襲われた際は、自己判断せず、これらのサインに注意して早期にご相談ください。

原因

急性腰痛症の発症は、特定の「きっかけとなる動作」と、その背景にある「腰部を弱めているリスク要因」が重なることで引き起こされます。多くのぎっくり腰は、特定の神経の圧迫や大きな骨の異常が認められない「非特異的腰痛」に分類されます。これは、背骨を構成する椎間関節、その周囲の筋肉、靭帯などの軟部組織が、急激な負荷によって微細な損傷や炎症を起こした結果、激しい痛みとして現れている状態と考えられています。

ぎっくり腰を引き起こす主なきっかけと、その背景にあるリスク要因は以下の通りです。

  • 急激な負荷や不意の動作:重いものを持ち上げるとき、急に体をひねるとき、あるいは準備運動不足の状態で激しい運動をしたときなど、腰に急激な負荷がかかることで、組織の損傷が起こりやすくなります。
  • 長時間の同じ姿勢:デスクワークや車の運転、立ち仕事などで同じ姿勢を長時間続けると、特定の筋肉や関節に負担が集中し、炎症や損傷を引き起こす土壌が作られます。
  • 運動不足や疲労の蓄積:日頃の運動不足により体幹の筋力が低下すると、腰部の安定性が失われ、些細な負荷でもぎっくり腰の再発リスクを高める要因となります。

このように、普段から腰に負担をかけやすい生活習慣が続いていると、ちょっとした動作でもぎっくり腰を引き起こす可能性があります。

診断

激しい腰の痛みで来院された際、医師はまず、生命に関わるような重篤な病態(癌の脊椎転移、感染症、椎体骨折、急性大動脈症候群など)が隠れていないかを、問診と身体診察を通じて慎重に確認する「スクリーニング」を最優先に行います。迅速で正確な診断こそが、患者様の安全を確保し、適切な治療を開始するための第一歩となります。

当院での診断の流れは以下の通りです。

  • 詳細な問診と身体診察:いつから、どのような動きで痛むのか、そして脚のしびれや麻痺、発熱などの「レッドフラッグ」と呼ばれる重篤な疾患を疑う随伴症状がないかを詳しくお伺いします。
  • 画像診断による客観的な原因特定:問診の結果、重篤な疾患の可能性が疑われる場合や、痛みが非常に強く早期に原因を特定する必要がある場合に、画像検査を実施します。
    • X線検査(レントゲン):骨の構造的な異常、骨折、または重度の変形がないかを確認します。
    • MRI検査:椎間板の状態(ヘルニア)や、神経の圧迫の程度、靭帯や脊髄の状態など、X線では確認できない軟部組織の状態を詳細に評価し、痛みの原因を特定します。

これらの検査を患者様の状態に合わせて適切に活用することで、痛みの根本原因を正確に見極め、無駄のない最適な治療をすぐに開始できるよう努めます。

治療

急性腰痛症の治療の目標は、発生した炎症と激しい痛みを迅速に抑え、患者様の活動性を維持しながら早期に日常生活に復帰していただくことです。

急性期(発症直後)は炎症を抑えることが最優先されます。しかし、痛みが最も激しい時期を除き、過度なベッド上での絶対安静は推奨されません。近年の治療指針では、痛みに応じて可能な範囲で活動性を維持する方が、痛みの軽減と機能の回復を早めるのに有効であることが示されています。

急性腰痛症に対する具体的な治療と対応方法は以下の通りです。

  • 薬物療法:炎症を抑える内服薬や外用薬(湿布など)を用いて、急性期の強い痛みをコントロールし、回復をサポートします。
  • 装具療法:コルセットなどを使用し、痛む部位の動きを制限して負担を軽減することで、症状の悪化を防ぎ、痛みの緩和を図ります。
  • 注射治療(ブロック注射):内服薬や湿布だけでは痛みがコントロールできず、仕事や生活に大きな支障をきたす場合、即効性の高い注射で痛みの原因となっている炎症や神経の痛みの伝達経路を遮断し、迅速な症状の緩和を目指します。
  • 理学療法と運動指導:痛みが落ち着き次第、再発を防ぐための体づくりとして、患者様一人ひとりの姿勢や動作の癖を評価し、筋力バランスを整えるための専門的な運動指導を行います。

ご自宅での自己管理も重要です。痛みが強く仰向けで寝られない場合は、膝の下に丸めた毛布などを入れ、膝が90度程度曲がった姿勢、または痛い方を上にして横向きになり、抱き枕を抱いて寝る姿勢が推奨されます。

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