変形性股関節症
症状
変形性股関節症は、股関節のクッションである関節軟骨がすり減り、関節の骨が変形していくことで、痛みや動きの制限などが生じる病気です。この病気は少しずつ進むため、初期の股関節の違和感や軽い痛みをそのままにしていると、やがて日常生活を送る上で大きな支障をきたすようになります。
具体的な症状としては、次のようなものが挙げられます。
- 股関節の痛み: 初期の段階では、立ち上がりや歩き始め、長い時間の歩行後などに、特に脚の付け根の内側(鼠径部)に鈍い痛みを感じます。病気が進むと、休んでいる時や夜間にも痛みが続くようになり、眠りを妨げることもあります。
- 動きの制限: 股関節の動きが悪くなり、足を曲げたり、内側や外側にひねったりする動作が制限されます。これにより、床のものを拾う、靴下を履く、車の乗り降りといった日常の動作が難しくなります。
- 歩行の乱れ(跛行): 痛みや関節の動きの悪さから、無意識に痛い側の足をかばうような歩き方(跛行)になります。疲れやすくなり、長い距離の歩行や階段の昇り降りが特に辛くなります。
- 足の長さの違い: 関節の変形が著しく進み、軟骨が大きく減ってしまうと、病気側の足が短くなったように感じ、歩行時の不安定さが増すことがあります。
これらの症状に心当たりがある場合、痛みを我慢せずに、一度ご相談いただくことが重要です。
原因
変形性股関節症は、股関節に構造的な問題や、過度な負担が繰り返し加わることによって、軟骨の摩耗と骨の変形が引き起こされることで発症します。特に日本では、生まれつきの股関節の形の異常が原因となるケースが多くを占めます。
- 臼蓋形成不全: 股関節の受け皿となる骨(臼蓋)の被りが生まれつき浅いなど、股関節の形に問題がある状態です。日本では、この臼蓋形成不全が原因で発症するケースが非常に多く、関節の一部に体重による負担が集中することで、軟骨がすり減りやすくなります。
- 加齢と体重の増加: 年齢を重ねるごとに軟骨の弾力性が低下し、傷つきやすくなります。また、体重が重いと股関節には過度な負荷がかかり、軟骨の摩耗を加速させる大きな原因となります。
- 過去の病気や怪我: 小児期のペルテス病や、大腿骨頭すべり症などの病気、または股関節周辺の骨折、感染症などの後遺症として、関節の形が変わり、病気を引き起こすことがあります。
- 特定の動作による負荷: 重いものを運ぶ作業や、長時間の立ち仕事、股関節に大きな衝撃がかかるスポーツなどを続けていると、関節に負担が蓄積し、軟骨の損傷につながることがあります。
これらの様々な原因が単独、あるいは複合的に関わり合い、股関節の変形を招き、変形性股関節症として症状が現れます。
診断
変形性股関節症を正確に診断するためには、患者様から詳しくお話を聞き、体の状態を直接確認する診察と、画像検査を組み合わせて総合的に判断します。痛みの原因が股関節にあるのか、そして病気の進み具合がどの程度かを調べることが、適切な対処を行う上で非常に大切になります。
- 問診と診察: 痛みを感じるようになった時期や、痛みの強さ、日常生活で困っている動作などを詳しくお聞きします。次に、医師が股関節の動く範囲や、特定の動きで痛みが出るかどうか、歩き方などを確認します。
- X線(レントゲン)検査: 股関節の骨の形や関節の隙間の広さ(軟骨の減り具合)を見るために、必ず行われる基本的な検査です。この検査で骨の変形や関節の隙間の狭さを見ることで、病気の進み具合を客観的に判断することができます。
- CT検査: レントゲン検査では分かりにくい骨の細かい形状や、変形の三次元的な状態をより詳しく調べたい場合に行います。
- MRI検査: 軟骨そのものの状態や、関節の周りの筋肉、腱、炎症を起こしている組織など、骨以外の部分の状態を詳しく確認したい場合に有用です。
これらの詳しい診断を通じて、股関節の痛みの原因を正確に把握し、患者様にとって最良の対処法を見極めます。
治療
変形性股関節症の対処法は、病気の進み具合や患者様の年齢、活動レベルによって最適な方法が異なります。まずは痛みや炎症を抑え、病気の進行を穏やかにする「保存的な対処法」を中心に行い、症状の改善が見られない場合や重症化した場合には、より積極的な対処法や手術を考えます。
- 生活の見直しと運動: 股関節への負担を減らすため、体重を適切に保つことや、杖などの補助具を使って歩行時の衝撃を軽減する工夫をします。また、股関節周りの筋力を強くし、柔軟性を高めるための運動を続けます。
- 薬や注射での対処: 痛みや炎症を抑えるために、飲み薬や湿布などの非ステロイド性消炎鎮痛剤を用いて、症状の緩和を図ります。強い炎症による痛みを一時的に和らげることを目的とした注射を行うこともあります。
- ASC治療: ご自身の脂肪組織から採取した幹細胞を患部に投与する再生医療です。細胞が持つ傷んだ組織を修復する能力や、炎症を抑える働きにより、軟骨の保護や痛みの緩和といった効果が期待されます。
- PRP(多血小板血漿)治療: ご自身の血液を採取し、遠心分離機にかけて血小板を濃縮した成分(PRP)を股関節内に注入する対処法です。血小板に含まれる成長因子が、傷んだ組織の修復を促し、痛みや炎症を鎮める効果が期待できます。
- 手術: 保存的な対処法を続けても痛みが治まらず、日常生活を送ることが困難なほど症状が進んだ場合に検討されます。一般的には、変形した関節の表面を人工の関節に置き換える人工股関節置換術などが選択されます。
私たちは、患者様一人ひとりの症状と生活スタイルを考え、保存的な対処法から再生医療、手術の相談まで、幅広い選択肢の中から最も適した対処法を提案することで、痛みのない快適な生活を取り戻すお手伝いをいたします。