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腰椎椎間板ヘルニア

椎間板とは

脊椎の骨と骨の間にある軟骨のクッションを椎間板といいます。
椎間板は頭から骨盤まで垂直にかかる体重を受け止めたり、背骨をスムースに曲げたり反らしたりする役割を持っています。
椎間板は「線維輪」と呼ばれる硬い組織の中に「髄核」と呼ばれる軟骨組織で構成されています。
腰椎椎間板ヘルニアについて
腰椎椎間板ヘルニアは、加齢や外傷によって線維輪に亀裂が入り(線維輪損傷)、そこから飛び出した髄核が神経を圧迫してしまうことです。
腰椎椎間板ヘルニアの有病率は10万人あたり463人といわれており、人口の約1%が発症するともいわれています。
男女比は2:3で男性が多いと報告されており、20~40歳代に好発します。

事務作業者と比較し重労働者に発生率が高く、とくにドライバー、金属・機械労働者に高い傾向がみられます。
さらに喫煙は、腰椎椎間板ヘルニアの発症リスクが約20%高くなるともいわれています。
症状
椎間板ヘルニアの症状は、ヘルニアが神経を圧迫している高さによって異なります。
腰椎椎間板ヘルニアは、5つある腰椎の4番目と5番目の間と5番目と仙骨の間で起こりやすいです。
主な症状は、腰の痛みだけではなく、おしりや脚に痛み・しびれがでたり、脚の感覚が鈍くなったり、脚の力が入りづらくなったりします。

このように、腰椎椎間板ヘルニアの症状は単なる腰痛の範囲を超えて、足全体の動きや感覚にまで広く影響を及ぼします。放置すると歩くことが困難になるケースもあるため、少しでも足に違和感やしびれを感じたら、早めに医療機関へ相談することが大切です。
原因
腰椎椎間板ヘルニアが起こる主な原因は、椎間板への過度な負担の積み重ねです。椎間板は中心にあるゼリー状の中身を丈夫な壁が囲む構造をしていますが、この壁に亀裂が入り中身が漏れ出すことで、近くの神経を刺激してしまいます。加齢による変化だけでなく、日々の生活習慣や体質など、複数の要因が合わさることで発症すると考えられています。
- 加齢による組織の変化:年齢を重ねるごとに椎間板の水分が失われて弾力性がなくなり、少しの衝撃でも亀裂が入りやすくなってしまうことが根本的な背景にあります。
- 重いものを持つ動作:重い荷物を急に持ち上げる動作は、腰に瞬間的に強い圧力がかかるため、発症のきっかけになりやすいです。
- 長時間の同じ姿勢:デスクワークや長距離の運転などで座り続ける姿勢は、立っている時よりも腰への負担が大きく、椎間板を長時間圧迫し続けることになります。
- 喫煙習慣:タバコに含まれる成分は血管を収縮させて椎間板への栄養補給を妨げてしまうため、椎間板の老化を早める大きな要因となります。
- 激しいスポーツ:腰を強くひねる動作や、ジャンプなどの着地衝撃が繰り返されるスポーツは、健康な若い方であってもヘルニアを引き起こす原因になることがあります。
- 遺伝的要因や体質:もともとの骨の形や椎間板の強さなど、家族にヘルニアの方がいる場合は、体質的に発症しやすい傾向があると言われています。
日常の何気ない動作の積み重ねが腰への負担を蓄積させ、ある日突然強い痛みとして現れます。自分の生活習慣の中に腰を痛める要素がないかを見直し、腰に負担をかけない動作を日々の習慣として定着させることが、発症や再発を防ぐための確かな一歩となります。
診断
的確な治療を行うためには、まず「本当にヘルニアが原因なのか」「どの神経がどの程度圧迫されているのか」を正確に見極めることが不可欠です。診断では、患者様のお話を詳しく伺うことから始まり、いくつかの検査を組み合わせて総合的に判断します。
まずは、医師による問診と身体診察を行います。いつから痛むのか、どのような動作で辛くなるのかを確認するとともに、仰向けに寝て足を伸ばしたまま持ち上げる検査などを行い、神経の痛みが出るかどうかを確認します。また、足の筋力や感覚、反射を調べることで、腰のどの部分で異常が起きているかを推測します。次に、画像検査による確認を行います。
- レントゲン検査:骨の並びや形、骨と骨の間隔を確認します。他の骨の病気がないかを確認するために必須の検査です。
- MRI検査:診断において最も重要な検査です。椎間板の飛び出し具合や神経の圧迫状態をはっきりと映し出すことができます。
- CT検査:骨の構造をより詳細に把握したい場合や、状況によりMRIが受けられない患者様の場合に検討されます。

大切なのは、MRIでヘルニアが写っていても、それが必ずしも痛みの原因とは限らないという点です。健康な人でも画像上はヘルニアが見つかることがあるため、検査結果と実際の症状が一致して初めて診断が確定します。これらのステップを踏むことで、一人ひとりの状態に合わせた最適な治療法を導き出すことが可能になります。
治療
腰椎椎間板ヘルニアの治療は、まずは手術を行わない「保存療法」から開始するのが一般的です。多くのヘルニアは、数ヶ月の時間をかけて自然に縮小したり、体内の免疫細胞によって吸収されたりする性質があるため、まずは痛みをコントロールしながら回復を待ちます。
- 活動性の維持:以前は長期間の安静が勧められていましたが、現在は痛みの範囲内で日常生活を維持するほうが、筋力を落とさずに回復を早めることがわかっています。
- 薬物療法:痛みを抑える鎮痛剤や、神経のしびれを和らげるためのお薬などを使い、辛い症状をコントロールしながら自然な回復を助けます。
- ブロック注射:痛みの原因となっている神経の近くに直接お薬を注入し、神経の興奮を鎮めて一時的に強い痛みを取り除くことで、日常生活を送りやすくします。
- リハビリテーション:理学療法士の指導のもと、硬くなった筋肉をほぐすストレッチや腰を支える筋力トレーニングを行い、再発しにくい体づくりを目指します。
- コルセットの装着:腰を固定して安定させることで、動いた時の痛みを和らげ、椎間板への負担を一時的に軽くします。
- 酵素注入療法(ヘルニコア):手術以外の選択肢として、椎間板の中に特別な酵素を注射し、ヘルニアを内側から収縮させて神経への圧迫を弱める比較的新しい治療法です。
- 内視鏡手術:保存療法で効果が見られない場合に、小さな傷口から内視鏡を用いて飛び出したヘルニアを摘出し、神経の圧迫を取り除く処置を行います。
治療のゴールは単に痛みを取ることだけではありません。以前のようにスムーズに歩けるようになり、仕事や趣味、スポーツへ安心して復帰できるよう、患者様の希望に寄り添いながら段階的に治療を進めていきます。
腰椎椎間板ヘルニアに対する運動療法
腹式呼吸トレーニング
四つ這いトレーニング(Hand&knee)
四つ這いトレーニング(B&D)
腰椎椎間板ヘルニアに対する運動療法の一例です。
エクササイズで痛みの出る方は、中止してください 。