変形性腰椎症
症状
変形性腰椎症とは、背骨の腰の部分にある「腰椎」が、加齢などの影響によって形を変えてしまう状態のことです。背骨の間でクッションの役割をしている「椎間板」が薄くなったり、骨の角に「骨棘(こつきょく)」というトゲのような突起ができたりすることで、周囲の神経や組織を刺激し、痛みや違和感が出てきます。これは年齢を重ねれば誰にでも起こり得る変化ですが、痛みの感じ方は人それぞれで、自覚症状がほとんどない方もいれば、日常生活に支障が出るほど強く痛む方もいます。
具体的な症状としては、以下のようなものが挙げられます。
- 腰の重だるさや鈍い痛み:動き始めや、長時間同じ姿勢を続けたあとに腰が重く感じたり、鈍い痛みが出たりすることが一般的です。
- 朝起きた時の腰のこわばり:睡眠中に体が冷えたり固まったりすることで、朝起きてすぐの動作で腰が動かしにくく、痛みを感じることがあります。
- 動き始めの痛み:椅子から立ち上がる時や、歩き出す瞬間などに強い痛みを感じますが、少し動いていると徐々に痛みが和らぐという特徴があります。
- 長時間歩いた時の痛みやしびれ:症状が進行して神経の通り道が狭くなると、長い距離を歩いた時に腰だけでなく、お尻や足に痛みやしびれが出ることがあります。
- 腰を後ろに反らした時の痛み:腰を反る動作をすると、変形した骨同士がぶつかったり神経の通り道が狭くなったりして、痛みが強くなることがあります。
- 足の筋力低下や感覚の鈍さ:神経への刺激が強くなると、足に力が入りにくくなったり、皮膚の感覚が鈍くなったりすることもあります。
- 急ぎの受診が必要なサイン:もし「足に力が入らず転んでしまう」「おしっこや便が出にくい、あるいは漏れてしまう」といった症状が出た場合は、神経の圧迫が非常に強まっている可能性があるため、すぐに医師に相談してください。
変形性腰椎症の痛みは、常に激しいわけではなく、良くなったり悪くなったりを繰り返しながら徐々に進行していくことが多いのが特徴です。少しでも腰の調子がおかしいと感じる場合は、早めに状態を確認しておくことが大切です。
原因
変形性腰椎症の主な原因は加齢による変化ですが、それに加えて日々の生活習慣や身体の使い方が大きく関わっています。骨やクッションである椎間板は、長年の負荷の積み重ねによって少しずつ形を変えていくため、複数の要因が組み合わさっていることがほとんどです。
- 加齢による椎間板の衰え:年齢を重ねると椎間板の水分が減って弾力が失われ、クッション機能が低下することで骨への直接的な負担が増えてしまいます。
- 長時間の同じ姿勢や猫背:デスクワークなどで長時間座り続けたり、猫背のまま過ごしたりすると、腰の骨に偏った負担がかかり続け、変形のスピードを早める原因となります。
- 重い荷物を持つなどの重労働:日常的に重いものを持ったり、中腰の姿勢を繰り返したりすることは、腰椎に強い圧力をかけることにつながり、骨の変形を招きやすくなります。
- 激しいスポーツによる負担:過去に腰を酷使するスポーツを長く続けていた場合、その時のダメージが蓄積して、年齢とともに骨のトゲや変形として現れることがあります。
- 背筋や腹筋の筋力低下:腰を支える周りの筋肉が弱くなると、骨だけで体重を支えなければならなくなり、腰椎への直接的なダメージが蓄積しやすくなります。
- 体重の増加(肥満):体重が増えると腰椎にかかる負担が増大し、椎間板のすり減りや骨の変形を加速させる大きな要因となります。
- 心理的なストレスや不安:悩み事や不安が長く続くと脳が痛みを感じやすくなり、腰周りの筋肉を無意識に硬くさせて痛みを長引かせてしまうことがあります。
原因を理解し、日頃から腰への負担を減らす意識を持つことが、症状の悪化を防ぐ鍵となります。
診断
腰の痛みで来院された際、まずはどのような時に痛むのか、どこがしびれるのかといったお話を詳しく伺います。その上で、医師が実際に身体を動かして痛みの出る範囲を確認し、画像検査の結果と照らし合わせて総合的に判断します。
- 問診と触診:痛みの場所や期間、日常生活での困りごとを確認し、腰を動かせる範囲や、足の感覚・筋力に異常がないかを医師がチェックします。
- レントゲン検査:骨の形を確認する検査で、骨の隙間が狭くなっていないか、トゲができていないか、骨の並びがズレていないかなどを調べます。
- MRI検査:レントゲンでは写らない椎間板の状態や、神経がどこでどのくらい圧迫されているか、筋肉や靭帯の状態を詳しく確認するために有効な検査です。
- CT検査:骨の構造を立体的に把握するために用いられ、特に骨の変形が複雑な場合や、より詳しい情報が必要な際に行われます。
画像検査で骨に変形が見つかったとしても、それが必ずしも痛みの全ての原因とは限らないため、当グループでは患者様が実際に感じている症状を一番大切にして診断を行っています。今の痛みが何によって起きているのかを見極めることが、適切な対応への第一歩です。
治療
変形性腰椎症の治療は、まずは痛みを取り除き、日常生活をスムーズに送れるようにすることを目指します。適切なケアを行うことで痛みを和らげ、進行を遅らせることが十分に可能です。
- お薬による治療:痛みや炎症を抑える飲み薬、湿布、塗り薬などを使用して、まずは今ある辛い痛みを落ち着かせます。
- リハビリテーション:理学療法士のアドバイスを受けながら、腰周りの筋肉をストレッチでほぐしたり、弱った筋肉を鍛えたりして腰を支える力を高めます。
- コルセットの着用:腰を安定させるために専用のベルトを装着し、動く時の負担を軽減させますが、痛みが強い時期に限って上手に活用します。
- 注射による治療:痛みが非常に強い場合には、神経の近くや関節に直接お薬を注入することで、過敏になっている神経を落ち着かせて痛みの連鎖を断ち切ります。
- 生活環境の改善アドバイス:椅子や寝具の選び方、物の持ち上げ方など、普段の生活の中で腰に負担をかけないための工夫を身につけていただきます。
- 手術療法:お薬やリハビリを続けても痛みが改善せず、足の麻痺や排尿・排便のトラブルが出るほど神経が圧迫されている場合には、専門的な手術を検討することもあります。
痛いからといってずっと安静にしているよりも、無理のない範囲で動いている方が回復が早いことも多いため、医師と相談しながら前向きに改善に取り組んでいくことが大切です。