変形性頚椎症
症状
変形性頚椎症は、加齢に伴い首の骨(頚椎)や骨と骨の間にあるクッション材(椎間板)が徐々に変形し、その結果、首を通る神経が圧迫されることで発生する疾患です。症状は単なる首の凝りや痛みにとどまらず、圧迫される神経の部分によって、腕や手、さらに足にまで影響を及ぼします。
具体的な症状としては、以下のものが挙げられます。
- 慢性的な首の痛みや張り: 特に朝起きた時や、パソコン作業などで長時間同じ姿勢を続けた後に、首の付け根や肩甲骨にかけての鈍い痛みや、重い張りが続きます。
- 神経根症による放散痛としびれ: 頚椎から枝分かれして腕や手に向かう神経根が圧迫されたり刺激されたりすることで、片側の腕や指先に「電気が走るような」鋭い激痛や、しびれが生じます。咳やくしゃみをしたり、首を特定の方角へ反らせたり傾けたりすると、痛みが強くなる特徴があります。
- 脊髄症による運動機能の障害: 重症化し、脊髄本体が圧迫されると、症状は両手や両足に現れます。具体的には、両手で細かい作業(箸を使う、ボタンを留める、文字を書く)が難しくなる(巧緻性障害)、足がもつれて歩行が不安定になる、体のバランスが取りづらくなるなどの重篤な症状が発生します。
これらの症状、特に手の細かい動きや歩行に異常を感じた場合は、病態が進行している可能性があります。症状を放置せず、早めに専門的な診察を受けることが重要です。
原因
変形性頚椎症の最も大きな原因は、長期間にわたる首の関節への繰り返しの負担と、それに伴う組織の「老化」(変性)です。これらの複合的な要因が、首の神経の通り道を徐々に狭めてしまうことで、神経が刺激されたり、圧迫されたりし、様々な神経症状が引き起こされます。
- 加齢による椎間板の変性: 首の骨と骨の間にあるクッション材(椎間板)が年齢とともに水分を失い、弾力性が低下し、徐々に潰れたり、後方へ膨らんだりすることで神経を圧迫します。
- 骨棘(こっきょく)の形成: 椎間板が変性して頚椎の安定性が低下すると、不安定になった部位を補強しようと骨の端にトゲのような突起(骨棘)ができます。これが神経根や脊髄を刺激したり圧迫したりする主な原因となります。
- 靭帯(じんたい)の肥厚: 脊椎の内部にある靭帯が、長年の負担や炎症、変性によって分厚くなり、神経が通るトンネル(脊柱管)を狭くしてしまうことがあります。
- 長期間にわたる姿勢の負担: スマートフォンの使用によるうつむき姿勢や、遠近両用眼鏡でパソコン画面を長時間見ようと頚を反らせる姿勢などが、特定の部位への圧力を高め、椎間板や関節の変性を加速させる要因となり得ます。
このように、首の組織の老化と繰り返される負担が、神経の通り道を狭め、変形性頚椎症を引き起こします。
診断
変形性頚椎症の診断は、患者様からの詳細な情報(問診)と、身体の状態を把握するための身体検査、そして最新の画像検査を組み合わせて行われます。
まず、医師はいつから、どのような時に症状が出るか、痛みやしびれが体のどの範囲に広がるか、特に手足の細かい動きや歩行機能に異常がないかを詳しくお伺いします。身体検査では、手足の反射や筋力、感覚を調べ、症状がどの頚椎のレベルで神経が圧迫されているかを推定します。
当院では、以下の画像検査を通じて、症状の原因を正確に特定します。
- X線(レントゲン)検査: 頚椎の骨の配列の乱れや、骨棘(骨のとげ)の有無を確認します。これは変形の度合いや、骨の不安定性を知る上で不可欠な検査です。
- MRI(磁気共鳴画像)検査: より詳しく神経や椎間板の状態を把握するために非常に重要です。MRIによって、椎間板の膨隆や靭帯の肥厚が、脊髄や神経根をどれほど圧迫しているかを正確に確認でき、最適な治療法を選択するための大切な根拠となります。
これらの問診、身体検査、そして画像検査の結果を総合的に判断し、症状の原因が変形性頚椎症であるかを正確に見極め、患者様一人ひとりに合わせた治療方針を決定します。
治療
変形性頚椎症の治療は、まず痛みの緩和と症状の進行を抑えるための保存療法が中心となります。当院では、一般的な保存療法に加え、患者様の組織の修復を促す先進的な再生医療も提供し、症状の改善と生活の質の向上を目指します。
治療法は、症状の程度や病態によって異なりますが、主に以下の方法が取られます。
- 保存療法(薬物・リハビリテーション): 痛みや炎症を抑える薬(内服薬や外用薬)を使用し、ストレッチや筋力訓練、首の安静を保つための装具の使用などを行うことで、首の負担を軽減し、柔軟性を高めます。
- 神経ブロック注射: 炎症を起こした神経の周囲に局所麻酔薬や抗炎症薬を正確に注入し、神経の興奮を抑えることで、特に強い痛みやしびれを効果的に緩和します。
- PRP(多血小板血漿)治療: 患者様ご自身の血液から抽出した血小板に多く含まれる成長因子の力で、局所の炎症を抑えて痛みを和らげ、損傷した組織の修復をサポートします。これは、変性を伴う疾患に対する新しい選択肢の一つです。
- ASC治療(脂肪幹細胞治療): 患者様自身の脂肪から採取・濃縮した特別な細胞(幹細胞)を使い、損傷した組織に注入することで、その部位の修復や再生を促すことが期待されます。手術を避けたい方や、従来の治療で効果が限定的だった方に対し、新たな希望を提供する先進的な治療法です。
- 手術療法: 長期間の保存療法でも症状が改善しない場合や、脊髄症による麻痺や歩行障害が進行し、日常生活に重大な支障をきたしている場合に検討されます。
変形性頚椎症の治療は長期的になることもありますが、当グループでは患者様の状態を丁寧に評価し、保存療法から先進的な再生医療、そして必要に応じた専門的な手術の検討まで、最適なケアを提供し、患者様が安心して生活できる状態を目指します。