disease
恥骨結合炎
症状
恥骨結合炎は、骨盤の前面中央にある恥骨結合という関節に炎症が起こり、痛みが生じる病気です。スポーツ選手や妊婦の方に多く見られ、日常生活や運動中に痛みが強くなります。慢性化して生活の質を低下させる前に、具体的な症状を知り、早期の対応が必要です。
- 恥骨や股関節の付け根の痛み:骨盤の中央、特に股間近くの下腹部の骨を押したときに強い痛みを感じます。この痛みは、股関節の内側や太ももの内側、下腹部全体に広がることもあります。
- 動作時の痛み:歩く、走る、階段を昇り降りする、急に方向転換するなど、足に体重をかける動作や、骨盤が不安定になるような動きをしたときに、痛みが強くなります。
- 開脚や片足立ちの困難さ:ストレッチなどで両足を開く動作や、靴下を履く時など片足に体重をかける動作で、恥骨結合部に大きな負担がかかり、激しい痛みを伴うことがあります。
- 体幹に力が入る時の痛み:座る姿勢から立ち上がる瞬間や、車からの乗り降りなど、体幹をねじる動きで痛みを感じます。また、咳やくしゃみ、排便時など、お腹に急に力が入る動作でも痛むことがあります。
- スポーツ活動の制限:サッカーや陸上競技など、股関節や骨盤を激しく使うスポーツにおいて、パフォーマンスの低下や練習の継続が難しくなるほどの痛みに悩まされることがあります。
これらの症状は、日常生活やスポーツ活動に支障をきたすほど強いものになる場合があります。症状を感じたら、できるだけ早く専門の医療機関でご相談ください。
原因
恥骨結合炎は、恥骨結合部や周辺の組織に繰り返し過剰な負担がかかることで炎症が発生します。骨盤の安定性が失われ、バランスが崩れることが主な原因です。ここでは、負担が増加する具体的な要因を挙げます。
- スポーツによる使いすぎ(オーバーユース):サッカー、長距離走、ラグビーなどの激しいスポーツで、キック動作やダッシュ、急な停止や方向転換を繰り返すことにより 、恥骨結合に繰り返し小さな外力が加わり、炎症を引き起こします。
- 股関節や体幹の筋肉のアンバランス:股関節の内転筋や腹筋などの筋力が弱化したり、柔軟性が低下したりしていると、恥骨結合に負荷が集中して炎症や痛みを招きます。
- 誤った体の使い方やフォーム:ランニングやキック動作などで、体の軸がぶれたり不自然な動きが続くと、恥骨結合に偏った力がかかります。扁平足や不適切なシューズの使用も原因となることがあります。
- 妊娠と出産による骨盤の変化:妊娠中は、骨盤の関節や靭帯を緩めるホルモンが分泌されるため、恥骨結合が不安定になりやすくなります。出産時にも骨盤が大きく開くことで、組織へのストレスとなり、炎症が起きやすくなります。
- 過去の手術や病気の影響:泌尿器科的または婦人科的な手術や、全身性の炎症性疾患(例:強直性脊椎炎)の影響で、恥骨結合に炎症性変化が生じる場合もあります。
これらの負担が増加する根本的な原因を把握し、それを取り除くことが、恥骨結合炎の予防と治療に不可欠となります。
診断
恥骨結合炎の診断は、患者様からの詳しい問診と診察、そして画像検査を組み合わせて総合的に行います。痛みの場所や、痛みを強める動作などを詳しく確認し、原因を特定します。
- 身体診察(触診とテスト):医師が恥骨結合部を直接触って圧痛(押したときの痛み)の有無や程度を確認します。また、患者様に仰向けに寝てもらい、股関節を内側に閉じる動きに抵抗をかけたり、片足立ちをしてもらったりして、恥骨結合部に負担がかかる動きで痛みが増強するかをチェックします。
- レントゲン検査(X線検査):主に骨折や他の骨の病気ではないことを確認するために行われます。慢性化している場合、恥骨結合部の幅が広がるなどの変化が見られることがあります。
- MRI検査:骨の炎症や周辺の筋肉・腱の状態を詳しく調べるために行います。特に骨髄浮腫という骨のストレス反応を確認でき、早期診断に有用です。
- CT検査・超音波(エコー)検査:骨の詳細な変化をCT検査で確認したり、周辺の腱の炎症や損傷を超音波検査でリアルタイムに確認したりすることがあります。
これらの検査結果と、患者様の症状や活動状況を照らし合わせ、正確な診断を行い、その後の適切な治療につなげます。
治療
恥骨結合炎の治療は、炎症を抑え、痛みを取り除き、負担を軽減することが目標です。特に、初期段階で無理をせずに安静を保つことが、回復への最も重要なステップとなります。
- 安静と活動の制限:最も大切な治療の一つです。痛みが強い時期は、ランニングやキック動作など、恥骨結合部に負担がかかるスポーツ活動や動作を控えることで、炎症の悪化を防ぎ、自然治癒を促します。
- 薬による治療(消炎鎮痛薬):痛みや炎症を抑えるために、飲み薬や湿布、塗り薬などの消炎鎮痛薬を処方します。これらの薬は、一時的に症状を緩和し、その後のリハビリテーションをスムーズに行うために役立ちます。
- 物理療法:急性期にはアイシング、慢性期には温熱療法や電気刺激(TENS)などを行うことで、痛みを和らげ、患部周辺の血流を改善し、組織の回復をサポートします。
- リハビリテーション(運動療法):痛みが軽減してきたら、骨盤や股関節周りの筋肉の柔軟性を高めるストレッチや、体幹の安定性を向上させるための筋力トレーニングを段階的に行います。これは原因となっている筋肉のアンバランスを改善し、再発を防ぐために非常に重要です。
- 装具による治療:骨盤の不安定性が原因となっている場合、骨盤ベルトやサポーターを使用することで、恥骨結合部への負担を軽減し、痛みを緩和することができます。
- 注射による治療:薬や安静で改善しない強い痛みに対し、炎症を抑えるステロイドなどの薬を恥骨結合の周囲に注入する注射を行うことがあります。
治療を通して痛みがなくなっても、すぐに元の激しい運動に戻るのではなく、体の状態に合わせて徐々に負荷を増やしていくことが、再発を防ぐための確実な方法です。