1. 簡単なまとめ
- 硬さや痛みが強い場合はサイレントマニピュレーションが有効な治療です。
- サイレントマニピュレーションだけでなく、リハビリを適切に行うことが重要です。
2. 五十肩について
五十肩(肩関節拘縮)は肩の痛みや動きの制限が出てくる疾患です。中高年(40〜60代)に多く発症し、男性よりも女性に多くみられます。症状の経過として炎症期、拘縮期、寛解期の3つの病期をたどります。
3. 五十肩の一般的な治療
肩の痛みや硬さを改善するために、薬物療法やリハビリテーション(徒手療法、運動療法、物理療法)を行います。痛みや硬さの種類、原因、困っていることは患者さんによって異なるため、医師や理学療法士が評価し治療を進めます。五十肩の中でも炎症が強い場合や関節包(関節を包む袋)の硬さがひどい場合は、改善までの時間が長引いてしまうことがあります。
4. 非観血的関節受動術(サイレントマニピュレーション)とは?
サイレントマニピュレーションは固くなってしまった関節包を剥がすことで、肩の動きや痛みを改善させる治療法です。頚部から注射を行い、肩や腕を支配する神経に麻酔をかけて処置を行います。外来診療で治療を行うことができます。
5. サイレントマニピュレーションの実際
①肩や腕を支配する神経に対して、頚部から局所麻酔薬を注射します。エコーガイド下で神経を正確に狙って、安全に注射を行います。15分ほど経過すると、麻酔の効果で肩から腕にかけての感覚が鈍くなり、力が入らなくなります。
②麻酔が効いていることが確認できたらサイレントマニピュレーションを行います。肩を様々な方向へ動かすことで硬くなった関節包を剥がしていきます。
③術後は麻酔により肩を自力で動かすことができないため、三角巾固定を行います。
④翌日からリハビリを再開します。
実際の患者さんに行っている様子(動画)
6. 術後は必ずリハビリを継続しましょう
サイレントマニピュレーションは関節包による動きの制限を解決する治療法です。術中は麻酔が効いており、筋肉の緊張が緩んでよく動きます。麻酔が切れると筋肉の緊張が戻るため、術中よりも硬さが出てきます。筋肉の緊張や硬さを改善するためには、術後早期のリハビリがとても重要です。リハビリで筋肉の機能を改善すること、肩の動かし方を改善することで日常生活での動きが改善します。
7. 注意点
- サイレントマニピュレーションを行った当日は車の運転はできません。ご帰宅の際は公共交通機関をご利用いただくか、送迎の手配をお願いいたします。麻酔により肩や腕を自力で動かせないため、三角巾で固定をして帰宅していただきます。
- 処置により内出血が生じることがあります。後日腕や肘まで内出血が下がってくることがありますが、自然に吸収されます。
- サイレントマニピュレーションの合併症として、局所麻酔中毒・脱臼・神経損傷・骨折・腱板断裂などがごく稀ではありますが報告されています。合併症などが心配な場合は、お気軽に担当医・スタッフにご相談ください。
8. まとめ
サイレントマニピュレーションは肩の硬さを改善するために有用な治療法のひとつです。術後にリハビリを継続することでさらなる動きの改善、痛みの改善が期待できます。当院では医師と理学療法士が密に連携をとり、患者さんを全力でサポートいたします。ご不明点がございましたら、お気軽にスタッフにお尋ねください。