股関節唇損傷
股関節唇とは臼蓋縁にリング状にある軟骨のことです。
大腿骨頭を包み込みゴムパッキンのような働きをして、大腿骨頭の安定化、衝撃吸収の役割を担っています。股関節唇損傷とは?
もともとの股関節の形態異常が原因となって起こることが多くあります。寛骨臼形成不全で股関節の不安定性が生じた場合や、大腿骨寛骨臼インピンジメント(FAI)により
骨と骨の衝突で股関節唇が損傷することがあります。
症状
・脚を動かす際の痛み・靴下を履く、足の爪を切るなどの股関節を深く曲げる際の痛み
・あぐら、内側に足を組むような姿勢で痛み
・車の乗降、椅子からの立ち上がりで違和感、痛み
このような症状がある場合は股関節唇損傷の可能性があります。
診断
理学所見やMRI検査により医師が診断します。また、前述したように股関節唇損傷はもともとの骨形態異常と関わりが深いため、
単純レントゲン検査による股関節形態異常の評価も必要です。
・理学所見
✔️Anterior impingement test
股関節を深く曲げた際の前方の痛みが誘発されれば陽性。
✔️FABER(Patrick test)
あぐらのような脚を開く姿勢で痛みの誘発、ベットから膝までの距離の左右差があれば陽性。
・股関節形態異常
✔️寛骨臼形成異常
寛骨臼の形成不全で股関節が不安定になる。
→寛骨臼形成不全
✔️大腿骨寛骨臼インピンジメント(FAI)
骨盤と大腿骨が衝突し関節組織を損傷してしまう病態。
→大腿骨寛骨臼インピンジメント(FAI)とは?
治療
股関節唇損傷と診断された場合、多くの方は保存療法で改善するため、まずは保存療法を開始します。それでも症状の改善が見込まれない場合は手術を検討します。
《保存療法》
股関節唇に負荷のかかる動作(股関節を深く曲げる動作、股関節を外に開く動作など)を避けるよう注意します。
外来では股関節の炎症を抑えるを目的で内服薬の処方、関節内にステロイド注射を行います。
リハビリテーションでは、股関節のインナーマッスルや体幹の筋力トレーニングを行い、
股関節の安定性を保つことで股関節唇への負担を軽減します。
骨盤の動きの柔軟性を得ることも重要です。
→股関節唇損傷のリハビリテーション(保存療法)
《手術》
股関節唇損傷に対する手術は当院では鏡視下股関節唇修復術(縫合)を行います。
また状況よっては自身の腸脛靭帯の一部を移植し再建術を行う場合もあります。
手術を行った場合も、術後のリハビリテーションが重要です。
→股関節唇損傷に対する手術療法
→股関節唇損傷の手術後リハビリテーション
Ver.1 2018.05.28