内側膝蓋大腿靭帯損傷:膝のお皿が脱臼する、スポーツ中に膝のお皿が痛い方へ

内側膝蓋大腿靭帯(MPFL:medial patellofemoral ligament)損傷

 

内側膝蓋大腿靭帯とは

大腿骨(太ももの骨)から膝蓋骨(お皿)の内側にかけて付いている靭帯で、膝蓋骨が外側へ外れないよう止める役割を担っています。膝蓋骨の内側支持機構の中でもその役割の50%以上担っている重要な靭帯と言われています。

図1.内側膝蓋大腿靭帯

内側膝蓋大腿靭帯損傷とはどのように起こるのか

基本的には膝蓋骨が外側へ脱臼した際に損傷します。膝蓋骨の脱臼は膝が軽度曲がった状態から膝が内側に入った状態(knee-in)で、膝を伸ばす筋肉(大腿四頭筋)に力が入った際に起こります。日常生活では上記のような姿勢で振り返る動作などで起こり、スポーツでは切り返し動作などで起こります。

図2.膝が内側に入った状態(knee-in)

内側膝蓋大腿靭帯損傷はなぜ起こるのか

上記のように膝蓋骨の脱臼に合併して起こることが多いですが、生まれつき脱臼しやすい骨の形状をしている場合もあります。脱臼の原因を以下に記載します。

① 大腿骨顆部の形成不全

大腿骨と膝蓋骨が適合することで安定しますが、生まれつき内側の関節面が外側に比べ面積が小さい場合があります。また生まれつき関節面が浅い場合もあります。これらの場合膝蓋骨は外側へ脱臼しやすくなります。

図3. 大腿骨顆部

② Q-angleの増大

Q-angleとは、骨盤の突起している部分(上前腸骨棘)と膝蓋骨の中心を結ぶ線と、膝蓋骨の中心と膝蓋骨の下の突起している部分(脛骨粗面)を結ぶ線の成す角度を表します。男性が約13°、女性が約16°で20°以上は異常と捉えられます。この角度が大きくなる程膝蓋骨は脱臼しやすくなります。

図4.Q-angle

③ 内側広筋の機能不全

膝蓋骨を内上方に引き寄せる作用の筋肉です。この筋肉の活動が弱まると膝蓋骨(お皿)が外側に脱臼しやすくなります。

図5.内側広筋

④ 外側組織の過緊張

膝蓋骨の外側の筋肉や靭帯が張っていると、膝蓋骨を外側へ引っ張る力が加わり脱臼しやすくなります。

図6.外側組織

⑤ 外反膝 いわゆるX脚のことです。とくに女性は外反膝になりやすいですが、股関節が内股になることで外反膝になりやすいです。外反膝になると膝蓋骨が外側へ引っ張られる力が加わるため脱臼しやすくなります。

症状について

一度膝蓋骨が脱臼してしまうと約9割で内側膝蓋大腿靭帯を損傷し脱臼後の靭帯修復が不十分な場合、膝蓋骨が外側へ外れやすくなり膝がガクッと脱力する「膝崩れ」が起きます。また膝蓋骨が不安定になることで軟骨同士がぶつかり合い痛みや腫れが生じます。

診断について

まずは痛みや不安感が出現した時期や場面、症状について問診を行います。 問診内容を踏まえて徒手的な検査や画像検査を行います。 画像検査では単純レントゲンで大腿骨と膝蓋骨の形状をみます。また必要に応じてMRIで靭帯や軟骨の状態の状態を検査します。

治療について

内側膝蓋大腿靭帯損傷の治療法としては保存療法と観血的治療(手術)があります。基本的には保存療法(リハビリ、内服)を行いますが、膝蓋骨の骨折を合併している場合や保存療法でも改善がみられない場合は観血的治療を行います。

⚪︎保存療法

【内側膝蓋大腿靭帯損傷はなぜ起こるのか】で記載した②〜⑤に対してアプローチしていきます。内側広筋を強化することで膝蓋骨を安定させます。また外側の筋肉を柔らかくするようにマッサージしたり、お尻の筋肉を強化することで外反膝(X脚)にならないようにします。

内側広筋のトレーニング

お尻の筋肉(中臀筋)のトレーニング

⚪︎観血的治療(手術)

成長期の子供の場合は骨端線(成長線)が閉鎖していないため外側支帯を切離することを第一選択とします。これは過度に緊張している外側支持組織を切離することで膝蓋骨の外側への牽引力を軽減させる手術です。この手術でも改善しない場合や大人の場合は人工靭帯や半腱様筋(膝を曲げる筋肉の一部)を用いて手術を行います。内側膝蓋大腿靭帯の代わりになるよう大腿骨と脛骨(脛の骨)に固定します。術後は1〜2週間程度安静期間を設けたあと、保存療法同様にリハビリを行います。スポーツ選手は術後約6ヶ月でスポーツ復帰を目指します。

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