肩が外れそうになる・肩が抜けた(肩関節不安定症)

2017/09/13
#肩関節
医師
平田 正純

肩関節脱臼(肩関節不安定症)

考えられる疾患は?

一般的に肩が特に怪我がなく生まれた時から外れやすい、不安定な状態の肩を、動揺性肩関節症と言います。
一方で何かしら原因となる怪我によって肩が外れてしまったことを肩関節脱臼(※脱臼:関節を作る骨同士の位置ががずれること)といいます。
脱臼後に肩が外れやすくなってしまった状態を、反復性肩関節脱臼と言います。
総称すると外傷性肩関節不安定症と言います。

①反復性肩関節脱臼(脱臼が起きてから肩が外れやすくなったこと)

◯病態
肩が一度脱臼を起こした後に、脱臼を繰り返す状態を反復性肩関節脱臼といいます。初回脱臼では圧倒的に腕の骨が前に脱臼するものが多いです。若年くてスポーツをやっている人に圧倒的に起こりやすく、20歳以下で初回脱臼を起こすと、80〜90%が反復性に移行すると言われています。初回脱臼でBankart損傷(関節唇、靭帯)を起こすことが多いです。 


<肩を真横から見た画像>

◯症状
下の写真のような動作をさせると前方脱臼を誘発する肢位であるために不安感を生じます。



◯診断
外転・外旋をさせた際に疼痛や不安感を訴えます。これをApprehension(アプリヘンジョン)テストと言います。CT画像により骨欠損の程度を確認、MRI画像により靭帯損傷や関節唇損傷の精査を行います。

三次元CT画像
 

関節窩骨欠損(Bony-Bankart病変)
上腕骨の骨欠損(Hill-Sachs損傷)

◯治療
根本的な治療はIGHLを修復するための手術治療です。損傷の形態に応じてBankart損傷に対してはBankart修復術、関節包断裂に対しては関節包修復術が行われます。当院では関節鏡視下に手術を行っています。加えてリハビリテーションにより肩関節周囲の機能改善や筋力強化も行っています。

②動揺性肩関節症(※生まれつき肩が外れやすい、不安定)

◯病態
肩関節の動揺性が大きく、その結果関節の中間可動域(関節包が弛緩している状態)で骨頭が関節窩から脱臼、亜脱臼を起こします。
この状態が繰り返されることで、関節構成体の損傷や筋疲労、筋痙縮を起こします。
病態として関節包の伸張と関節腔の拡大が基盤にあり、さらに肩甲骨周囲筋の協調運動障害、関節窩形成不全などを伴うこともあります。
原因として姿勢改善などが考えられています。

◯症状・診断
下方への不安定性を訴えることが多いです。(Sulcus sign)
MRIで関節腔の拡張を認め、CTで関節窩の形成不全を認めます。

◯治療
保存治療が80%の症例で有効です。
肩甲骨の周囲の筋肉を鍛えることが重要です。
手術としては拡張した関節包を狭くする関節包縫縮術が行われることがあります。

鏡視下関節唇修復術 年別成績

以下のグラフが当院での鏡視下関節唇修復術の成績をまとめたものです。
グラフから再脱臼率は手術件数に対し低いことがわかります。

この記事を書いたスタッフ
医師
平田 正純
肩関節・肘関節の関節鏡視下手術、肩関節外科、スポーツ整形外科を専門とし、志を抱いて大阪からやってまいりました。最新の超音波診断装置(エコー)を用い、運動器傷害の診断だけでなく治療も行います。また近年脚光を浴びている運動器超音波診療の普及に努めています。ベストな治療を提供できるよう日々知識と技術の研鑽に励みます。関西弁で患者さんの社会復帰、スポーツ復帰を応援、サポートする所存です。
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