投球障害肩(野球肩)の種類と治療方法
- 2017/05/17
投球障害肩とは、野球の投球動作中に痛みを主とした諸問題が生じ、投球が困難となる肩関節のケガのことです。
痛みが肩関節に生じていても、原因が肩関節にあるとは限らず、肩甲骨や体幹、下半身にある場合もあります。
ここでは投球障害肩に対する保存療法を、「肩関節に原因がある場合」と「肩関節以外に原因がある場合」の2つに分けて紹介します。
〈柔軟性〉
野球選手には、投球動作の繰り返しにより肩関節の後方にある筋肉が硬くなるという特徴があります。それは、フォロースルーの際に肩関節後方の筋肉が腕の振りを減速させるブレーキの役割を果たし、多大な負担がかかるためです。肩関節後方の筋肉が硬くなると、肩関節のバランスが崩れ、痛みなどの問題が生じやすくなります。そのため、筋肉が硬くならないようにケアをすることが大切です。
肩関節後方の筋肉の硬さをチェックするには、肩関節の“内旋”可動域を測る方法があります。
内旋とは以下のような動きです。
非投球側と比べて投球側で柔軟性の低下が見られた場合は、下に紹介する「スリーパーストレッチ」と呼ばれるストレッチを行うと効果的です。
〈筋力〉
肩関節を支える筋肉に、「ローテーター・カフ」と呼ばれるインナーマッスルがあります。ローテーター・カフは「棘上筋」「棘下筋」「小円筋」「肩甲下筋」の4つの筋肉で構成され、それぞれ異なる機能を持っています。以下にそれぞれの筋力のチェック方法とトレーニング方法を紹介します。
〈肩甲骨・体幹〉
肩甲骨や体幹の柔軟性や筋力が低下していると、投球時に肩関節にかかる負荷が増大し、投球障害肩を発症する危険性が高まります。両方の肩甲骨を寄せ背筋を伸ばし胸を張った姿勢が作れる柔軟性や、体幹を捻る柔軟性は、投球動作には必要不可欠な機能です。
〈下半身〉
下半身の柔軟性では、股関節の“内旋”可動域が重要です(特に非投球側。右投げなら左股関節)。それは、リリース〜フォロースルーの際に身体を十分に捻るために、股関節を捻り骨盤を回転させる必要があるからです。股関節が捻れなくなると、その分を上半身で補おうとすることで肩関節にかかる負担が増加し、結果的に投球障害肩につながりやすくなります。
股関節の内旋可動域のチェック方法とストレッチ方法を以下に紹介します。
投球障害肩のリハビリテーションのポイントは、投球時に肩関節にかかる負担を、肩関節・肩甲骨・体幹・下半身で上手に分担し合うことができる全身的な機能を獲得することです。
※投球障害肩に対する治療は、症状や病態、病期によって異なります。投球時に肩関節痛を有する場合は自己判断せず、医療機関で必ず医師の診断を受けてください。
※写真をクリックすると紹介文が表示されます。
※専門スタッフのリハビリテーションを希望される場合は、初診時の問診票に名前の記載をお願いいたします。
理学療法士:菅 聖
Ver.2 2018.7.8