剣道の怪我② 腰痛


 
 
 剣道を行っている方の中で、腰痛を経験したことのある方は多いと言われています。剣道に関連した腰痛は、疾患としてよく挙げられる腰椎分離症や腰椎椎間板ヘルニアよりも、オーバーユースによる慢性的な腰痛を抱えていることが多いです。
オーバーユースになる要因として、剣道の構え・鍔迫り合いの姿勢や体当たり時の衝撃、無理な姿勢での打突動作、切り返し動作などで腰椎の前弯が強制されることで、腰部にストレスが生じ慢性的な腰痛が生じやすいと言われています。さらに、剣道特有の構えや動作が、上下肢が左右非対称なることも腰痛を引き起こす要因の1つとなります。ここでは、主に筋性の腰痛について紹介します。
 
 ただし、少年期の腰痛で腰を反るような姿勢や動作で痛みがある場合は、腰椎分離症が疑われます。また、腰痛に加えて下肢痛、下肢の筋力低下や感覚異常がある場合は腰椎椎間板ヘルニアが疑われます。
 
・腰椎分離症
・腰椎椎間板ヘルニア
 

 

剣道の腰痛の原因とは?

 
 剣道の構えや打突動作が左右非対称であることから、体幹や殿筋などの股関節周囲の筋肉の筋肉量の左右のバランスが悪くなりやすい傾向があります。特に殿筋筋力に左右差があると骨盤の位置が左右非対称にあるため、腰部に負担がかかります。
 また、打突動作や体当たりの姿勢も要因の1つです。どちらも腰が引けている状態では、有効打突にならず、相手に強くぶつかることができません。腰を入れようとすると腰椎が反る形(腰椎の前弯が強くなる)になります。その前弯の角度が強くなればなるほど腰部に負担がかかります。剣道は構えも竹刀を振る時も腰椎の前弯が強くなりやすく、かつ反復するため、腰痛が生じやすいと言われています。
 少年期の場合は、発育段階の腰椎に、上記に加えて身長差がある相手にかかることが多いため、より腰痛が前弯しやすくなるため、腰椎分離症にも注意していく必要があります。
 
 
 
剣道の選手で腰痛になりやすい人の特徴とは?
 
 腰痛になりやすい選手は、立位時と打突時の腰椎前弯角度の差が大きいと言われています。構えから打突に入る時に、腰椎の前弯への可動範囲が大きければ大きいほど腰椎にストレスがかかります。また、多裂筋の筋力低下があると、骨盤が前へ倒れる(前傾角度が大きくなる)ため、それに伴い腰椎の前弯も大きくなります。また、下肢筋力や殿筋に左右差がある選手も腰痛になりやすいと言われています。
 
●治療法
 基本的には、リハビリテーションでの保存治療がメインになります。腰背部や股関節周囲、下肢を中心に行います。
 構えや素振り、打突動作の姿勢を確認し、腰椎前弯が必要以上に増強しない姿勢や動作を位につけていきます。ストレッチと合わせて、体幹等のトレーニングも行っていきます。腰椎椎間板ヘルニアの場合は、症状によっては手術も選択していく可能性があります。
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