反復性肩関節脱臼の治し方
反復性肩関節脱臼とは
初めて肩を脱臼してしまった後に、脱臼が繰り返されてしまうことを、反復性肩関節脱臼と呼びます。特に若いうちに脱臼をすると反復性に移行する確率が高くなると言われています。
反復性肩関節脱臼の症状や程度の大小は、組織に損傷があったり、骨に損傷があったりなど、関節の状態で個人差があります。
スポーツ時の特定動作のときにだけ症状が出現するものから、上着を着る、寝返りを打つ、くしゃみをする、背伸びをするなど日常生活の軽微な動作で脱臼してしまいます。
治療は、運動療法を始めとしたリハビリテーションでは根治が難しいことが多く、手術にて損傷した組織の修復と、その後のリハビリテーションで根治を目指します。術後のリハビリはとても重要です。
いつ肩が外れそうになるかわからない不安を無くしたい、思いきりスポーツをしたい、日常生活に支障をきたしている、このようなお悩みを持たれている方はご相談ください。
反復性の症状のある方は、肩専門医へのなるべく早めの受診が推奨されます。
脱臼には種類があります。
■肩脱臼■ 肩のボールが肩のお皿から完全に外れてしまった状態 関節窩(かんせつか)と上腕骨頭(上腕骨頭)が完全に接触を失った状態
■肩の亜脱臼■ 肩のボールが肩のお皿からわずかに外れてしまった状態 自分で整復(元の位置に戻すこと)することができる、自然に戻っていることもある
■反復性肩関節脱臼■ 肩が一度外傷性脱臼をおこし、その後脱臼を繰り返してしまう状態
繰り返される肩脱臼は、多くの場合、 関節・靭帯の損傷 や、 関節を構成する骨の欠損 が生じてしまっていて、外れやすい状態になっています。
肩前方脱臼のレントゲン写真
反復性肩関節脱臼の原因
脱臼したときに、肩関節を構成する骨や靭帯などが損傷してしまい、 うまくかみ合わなくなり 、 関節が不安定になってしまう ことが原因です。肩関節を安定にさせている 靭帯組織の損傷 や、関節適合の土台となる 骨の損傷 があることで、肩関節が脱臼しやすくなってしまいます。
一般的に脱臼の回数が多くなるほど骨の摩耗の度合いが増していきますのでさらに脱臼しやすくなってしまいます。
関節が不安定になってしまうと、、、
■腕を上に挙げる
■腕を外に広げる
■腕を後ろに伸ばす
こういった動きに対して脱臼をしてしまいます
反復性肩関節脱臼の原因
関節を支える 関節・靭帯組織が壊れてしまい脱臼しやすくなります↓Bankart病変(バンカートびょうへん)
関節唇や、下関節上腕靭帯IGHLが関節窩から剥離、損傷してしまうこと
HAGL病変
関節包の上腕骨頚部からの剥離損傷
反復性肩関節脱臼の原因
肩関節を構成する 骨に欠損 が生じ、関節の適合性(嚙み合わせ)が悪くなり、肩の不安定さが増大され、脱臼しやすくなってしまいます↑肩甲骨側である関節窩の骨の欠損
↑上腕骨頭 陥没骨折(Hill-Sachs病変・ヒルサックスびょうへん)
脱臼が繰り返されて骨が陥没してしまいました
この写真の患者さんは、お風呂場で腕を上げただけで脱臼してしまうようになり、手術を実施しました
反復性肩関節脱臼の症状
・繰り返し肩が外れる (脱臼ぐせ)・繰り返しの亜脱臼 (完全に脱臼してない状態、自然に戻ることもある)
・脱臼不安定感(外れる感じ)がある
・違和感 (緩い・力が抜ける・グラグラする)がある
・いつ外れるかわからない、心の不安感、恐怖感
肩が外れる動作
電車のつり革を掴む髪の毛を洗う
上着を着る
寝返りを打つ
くしゃみをする
背伸びをする
など
反復性肩関節脱臼の治療方法
各種理学検査、レントゲン検査、MRI検査、CT検査にて肩の状態が判明した後に、治療方針を立てていきます。問題が軽度の場合は機能改善を図るリハビリテーション(理学療法)を中心とする 保存療法 を実施。
いつ外れるかわからない不安を無くしたい、日常生活に支障がある 、 スポーツに復帰したい、関節不安定性が強く、関節・靭帯組織の損傷や骨病変の程度が大きい場合は根治を目的に手術療法 を検討します。
保存療法
関節を動かせる範囲である関節可動域の回復、関節を安定化させる筋力強化を目的にリハビリテーション(理学療法)を実施して、症状改善のために関節機能の回復を図ります。症状が消失してきたら、肩甲胸郭関節、腱板筋の機能強化を行い、日常生活やスポーツ時に再脱臼しないために身体機能を改善していきます。
スポーツ動作で不良動作があれば動作の改善をおこない、再発予防の取り組みをしながらスポーツ復帰をしていきます。