「第32回日本腰痛学会」参加報告
2024年10年25日~26日に第32回日本腰痛学会が開催されました。
当院理学療法士の勝又哲、田中聡子、早瀬有美加、井関航が学術発表を行いました。
本学会では、腰椎分離症、産前産後、急性腰痛、圧迫骨折について発表しました。
質問もたくさんいただき大変有意義な発表となりました。
以下、アレックスメディカルグループの発表演題です。
「運動継続しながら骨癒合が得られた超初期、初期の腰椎分離症の治療成績」
今回、腰椎分離症について発表しました。
腰椎分離症は通常、骨癒合を目指す場合にはスポーツ休止と装具療法を実施します。しかし、重要な大会に出場したい選手に対しては、動作をしっかりと修正し、腰椎のメカニカルストレスを軽減させることで、運動を継続しながら骨癒合を図りました。
超初期・初期の腰椎分離症のように骨折が軽度であったため、全例で骨癒合を認めました。この結果、腰椎分離症に対する理学療法の重要性を再認識することができました。
特に子供の腰痛は、まず腰椎分離症を疑うべきです。腰が痛い、または痛かったが今は痛みがないという方にも、まずMRIをお勧めします。早期発見することでスポーツ休止期間を短縮することが可能です。
「腰痛撲滅」のために、まずは早期発見を目指し、日々臨床に取り組んでいきたいと思います。
勝又哲
「服直筋離開を有する妊婦の腹直筋間距離と腰部骨盤帯痛との関係」
妊娠・出産は女性にとって最大のイベントであり、身体はダイナミックに変化します。
妊娠・出産を機に腰痛を発症する女性も多くいらっしゃいますが、その原因は、ホルモンや姿勢変化など、様々なことが関係しています。その中の一つに、腹直筋離開があります。腹直筋離開とは、左右の腹直筋が腹部の真ん中で開いてしまう状態をさし、妊娠中や産後の女性に多く見られる症状です。腹直筋離開があると、お腹の力が入りにくかったり、腰痛が起きやすくなることが予想されますが、まだはっきりとは、分かっていませんでした。今回、39名の妊婦さんにご協力いただき、腹直筋離開と腰痛との関連について調べました。結果、今回の研究では左右の腹直筋の間の幅と、腰痛の強さとの関連はありませんでした。しかし、初産婦と経産婦を比べると、腹直筋の間の幅は、変わらないのに、経産婦のほうが腰痛が強いことがわかりました。ここから、育児動作が腰痛に影響を与えている可能性が考えられました。
妊娠・出産や更年期など、女性特有の腰痛について、これからも研究し、腰痛に苦しむ女性を少しでも楽にして差し上げられるよう、研鑚してまいります。研究にご協力くださった妊婦の皆様、ありがとうございました。
田中聡子
「急性腰痛患者の再発とその診断結果に関する調査」
今回の調査では、急性腰痛(ぎっくり腰)と診断された患者さんの再発率と再発時の傾向を調べました。
その結果、約半数の患者さんが再び腰痛で来院しており過去に腰痛を経験したことが再発リスクに強く関係していることがわかりました。急性腰痛(ぎっくり腰)は通常4週間以内に回復することが多く、今回の対象者も早期に症状が軽快したため、理学療法を受けている方は少なかったです。
しかし、再発予防には理学療法が重要です。
特に、腰痛が起こりやすい姿勢や動作の見直し正しい動き方を身につけるための運動が効果的です。
生活における姿勢や動作(座ったり立ち上がったり、物を持ち上げる際の動作)指導を行うことで、再発リスクを減らし、腰痛の悪化を防ぐことができるのではないかと考えました。多くの方の悩みでもある急性腰痛(ぎっくり腰)の助けとなるよう日々臨床に取り組んでいきたいと思います。
早瀬有美加
「骨粗鬆症性椎体骨折患者に対する理学療法の有無が椎体圧壊変化率に与える影響 -医師の評価する骨折形態別に検討-」
今回、骨粗鬆症性椎体骨折(脊椎圧迫骨折)について発表しました。
昨年も学会発表を行い、脊椎圧迫骨折の患者さまに理学療法(リハビリテーション)を行うと、骨折部位がさらに潰れてしまうことを軽減できることが分かりました。今回の発表では、理学療法がより有効な脊椎圧迫骨折を見極めるために、レントゲン写真とMRI画像にて「軽度の骨折」・「中等度の骨折」・「重度の骨折」に分け、どの骨折形態の改善効果が高いかを検証しました。結果、「軽度」・「重度」より、「中等度」の骨折がより軽減することが分かりました。また、いずれの骨折形態においても、理学療法を行っていない患者さまのデータは、理学療法を行っていた患者さまのデータより骨折が進行していたため、骨折していても理学療法を行うことが推奨されました。引き続き様々な方法で研究を続け、より良い脊椎圧迫骨折に対する理学療法を提供できるように努力していきます。
井関航