腓骨筋腱脱臼とは?
通常、腓骨筋腱は外くるぶしの後方を走行しています。腓骨筋腱支帯はバンドのような支持組織で腓骨筋腱を外くるぶしの後方に留めておく役割を果たしています。したがって腓骨筋腱は、ずれることなく、足関節の肢位に関係なく滑らかに動くことができます。しかし足関節を捻ったり、背屈されると急激にその走行を変え、腓骨筋支帯が破綻して腓骨筋腱が外くるぶしを乗り越えてしまいます。このことを腓骨筋腱脱臼と言います。腓骨筋腱が脱臼することで痛みや不安感が出現します。
どのようにして起こるのか?
急性例では足関節を強く捻ったり、背屈された際に腓骨筋腱が縮み、外くるぶしから腓骨筋腱支帯が剥がれ、腓骨筋腱が走行する溝を乗り越えて脱臼します。また、慢性的な捻挫により足関節の靭帯が弛緩してしまうことで腱が外れやすくなり脱臼が起こります。腱が太い、腱を収める外くるぶしの溝が浅いなどの先天的な要因も関係していると言われています。
症状について
・運動時(歩行時や左右への切り返し時)の
後足部外側の痛みや、
外くるぶし後方での腱の脱臼感、不安感が出現します。
・脱臼が慢性化すると外くるぶし後方に腱に沿った腫れなどを認めるようになります。
画像・診断について
徒手的に腱を後方から前方に圧迫したり、足関節を内反させた時に腱の脱臼を再現できれば診断となります。
補助的診断として単純レントゲン撮影などがありますが、腱の状態をより詳細に精査する場合はMRIや腱の脱臼を動的に観察できる超音波診断装置を使用します。
例)MRI画像
外くるぶしの後方にある腓骨筋腱が、右側の画像では外くるぶしの外側へ乗り越えています。
治療について
繰り返し脱臼してしまう場合は手術を検討することもありますが、初回受傷後の早期であれば保存療法が第一選択になります。
保存療法
・ギプス固定期(4~6週間)
脱臼してしまった腓骨筋腱を元の場所に整復しギプス固定を行います。この期間は、歩行は松葉杖で免荷歩行を行い患部に負担がかからないようにします。
・ギプス固定除去後
関節可動域訓練、筋力トレーニング、歩行練習などのリハビリテーションを開始し、日常生活やスポーツ復帰を目指します。歩行は痛みなどを確認しながら段階的に荷重量を増やしていきます。
・関節可動域訓練
固定期間中に硬くなった筋肉や関節などに対してリラクセーションやストレッチを行い足関節の可動域を改善します。
リハビリテーションを継続しても日常生活や運動時の活動制限、パフォー マンスの低下が明らかな場合は、手術療法(内視鏡を使用した腱鞘形成術)で腱の脱臼を起こさないために破綻した支持組織を修復します。病状によっては内視鏡だけでは手術を行えない場合もあります。