変形性膝関節症には体外衝撃波治療とPRP治療のコンビネーションが有効
2024/11/14
変形性膝関節症とは
関節軟骨の摩耗変性(擦り減る)を主体とした加齢性疾患であり、50歳以降に増加し各年代で女性が多いと言われています。現在、日本の有病者は 2,500万人以上と推定され平均寿命の延伸により今後さらに増加すると予想されます。
変形性膝関節症は、関節内と関節外で変化を生じると言われています。
関節内の変化は、滑膜炎(*1)、軟骨変性(*2)、半月板・靭帯の変性、骨棘などが生じます。
関節外では靭帯・筋・腱、関節包の拘縮・弛緩や萎縮、骨髄内病変などが生じます。
これらの変化は滑膜炎を主体とする変性であると言われてます。
一般的には変形性膝関節症も初期〜中期には炎症性変化が強く、病期が進行するにつれて機械的変化が強くなると言われています。
*1:関節内の滑膜という組織に炎症が起こること。滑膜が腫れることで痛みや関節の腫れを引き起こすこと
*2:関節を覆う軟骨が擦り減ったり破壊され関節が変形すること
変形性膝関節症のリスク因子
肥満・女性・高齢・過去に膝関節外傷がある者・膝関節に負荷をかける職業と報告されています。過去に膝関節外傷があるの者に関しては、 前十字靭帯損傷 や 半月板損傷 ・またはこの2つの怪我を合併している方は変性するリスクが高いとされています。
膝関節に負荷をかける職業に関しては農業・林業・漁業は、事務職や技術職より変形性膝関節症の危険が高いとされ、正座やしゃがみこみ動作は膝関節の骨棘形成や関節裂隙の狭小化に影響があると報告されています。
変形性膝関節症はメカニカルファクターの影響が大きいとされ、内外反アライメント(O脚・X脚)、膝伸展筋力低下(膝を伸ばす筋力)、歩行時のスラスト現象(体重かかった時に膝や体が左右に揺れる)、可動域制限、半月板の変性が変形のリスク因子の可能性があると言われています。また、栄養との関連も報告されておりメタボリックシンドロームの病態とされる、過体重・高血圧・脂質異常・糖代謝異常も変形性膝関節症との関連性も高いとされています。これらの合併数が増加するにつれ、発症・進行の危険度も増すと言われています。
変形性膝関節症の診断ツール
主に臨床所見と単純レントゲン撮影によって行われることが多いです。
単純レントゲンでは変形の度合いや骨棘・関節裂隙の狭小化の確認ができます。これはあくまで変形した結果の確認をするためのツールです。
単純レントゲン撮影では、荷重と非荷重を比較することで関節裂隙の狭小化の検出力が上がると言われており、立位での撮影が強く推奨されています。
変形の進行と密接な関わりがある滑膜炎の有無・関節水腫の有無・半月板・軟骨の変性・骨髄内病変の確認はMRI撮影が必須となります。
単純レントゲン撮影
変形性膝関節症の重症度評価もレントゲン撮影で可能です。Kellgren-Lawrence分類(KL分類)が用いられます。骨棘形成と関節裂隙の狭小化をもって、グレード0~4の5段階に評価します。
磁気共鳴画像(MRI)
MRIでは半月板損傷の有無や軟骨の変性・骨髄内病変の有無を確認することができます。当院では、レントゲン・MRIを兼ね備えていますので、予約の関係もありますが当日まとめて検査することが可能です。
黄色丸で囲われている部分は骨髄内病変
変形性膝関節症に対する一般的な治療
変形性膝関節症の症状は主に歩行時などの痛みです。変形性膝関節症の進行を遅らせる治療はなかなかありません。そのため変形性膝関節症の治療は症状の改善を目的とすることが多いです。
2023年の変形性膝関節症診療ガイドラインでは、
①教育プログラム ②運動療法 ③体重減少 ④物理療法 ⑤装具療法 ⑥薬物療法が推奨されています。
①教育プログラム
変形性膝関節症の治療の目標は、痛みなどの症状緩和と関節機能回復を図り日常生活障害を改善させQOL向上させることです。変形に対する生活指導には患者教育・減量・運動指導が挙げられます。米国整形外科学会や国際変形性関節症学会などのガイドラインでも患者教育や運動ならび減量指導が重要とされ、変形性膝関節症の治療の核心に位置付けられています。
②運動療法
筋力増強トレーニング・エアロビックエクササイズ・陸上運動・水中運動・太極拳など様々あります。これらの運動療法は、鎮痛効果、身体機能改善、ADL(日常生活活動)改善を認め有用だと報告されています。
ただ、水中運動を含め効果的な運動療法の種類に関するエビデンスは不明なままです。
変形性膝関節症のリスクであるサルコペニアやロコモティブシンドローム、肥満の体重管理などに対する運動療法の効果も期待され、直接的な効果以外にも有用であると報告されています。
③体重減少
体重減少群と運動介入群を対象とし、鎮痛効果について解析を行った研究を見ると、鎮痛効果については体重減少群と運動介入群は有意差はなかったと報告されていました。しかし、体重減少と運動介入の2つを行った方が運動介入群のみよりも鎮痛効果は良好だったと報告されています。また、体重減少のみを行うと骨密度の減少の危険度が高かったとの報告も散見するため、一概に体重減少のみにフォーカスを当てすぎず、運動療法も同時に行うことで変形性膝関節症のリスク回避につながると考えられます。④物理療法
経皮的電気神経刺激や超音波治療は変形性膝関節症の治療には弱い効果を認めたと報告されています。鎮痛効果・機能改善・ADL改善をコントロール群(治療を行なっていない群)と物理療法を行った群を比較すると、全ての項目において弱い効果を認めたと報告されています。そのため、変形性膝関節症のガイドラインでは治療することを提案すると言われています。
⑤装具療法
身体機能低下・QOL低下・歩行能力低下は痛みおよび痛みによる身体活動量の低下に起因することから装具療法において、除痛効果は極めて重要な役割であると考えられてます。
膝装具と足底板は大きな効果を認められています。
⑥薬物療法
外用薬(湿布など)や内服薬(痛み止め)が処方されることが多いと思います。アセトアミノフェン(カロナール)、NSAIDs外用薬・内服薬(ロキソニン)、ヒアルロン酸関節内注射、ステロイド関節内注射などあります。エビデンスレベルは中程度とされています。ステロイド注射に限っては、組織の破壊を誘発する恐れがあるので注意が必要です。
近年注目を浴びている治療
集束型体外衝撃波治療 と PRP(多血小板血漿治療) のコンビネーション治療です!(詳しくは↑をPush)
もちろん単体で治療するのも効果を認めます。しかし2つの治療は役割が違うことが判明されています。
集束型体外衝撃波治療は骨髄内病変に効果を認めやすいという報告がされており、骨髄内病変を鎮静化させることで変形の進行を予防できる可能性があります。
PRP治療は関節内の炎症に効果を認めると言うことが報告されています。
病院やクリニックで毎回膝に水が溜まって抜いている方は、PRP治療を行うことで関節内の炎症を鎮静化させ変形の予防ができる可能性があります。
また、過去に報告されている論文では治療の開始年齢が早期であればあるほどTKA(人工膝関節全置換術)を平均4年遅延させた報告もあります。
そのため、この2つの治療を合わせて行うことで、TKAを回避できる可能性があります。