骨粗鬆症に対する治療

公開日: 2019/06/05
更新日: 2020/01/09
医師
江口 直

骨粗鬆症治療の変化

私が骨粗鬆症治療に従事し始めた10年前と比較すると、現在の治療選択は夢のようであり、治療方針も様変わりしています。現在は早期治療介入し(50歳台からのスクリーニング検査を推奨します)、骨密度を3-5年以内にゴール達成(YAM>70%, T score < -2.5)を目指す薬物治療から開始し、目標達成後は骨のリフレッシュ(新陳代謝)を維持しながら、骨折予防・健康年齢維持を目指す治療に変わってきています。


骨粗鬆症に対する治療

①    活性型ビタミンD3製剤

腸管からのカルシウム吸収を促進し、腎臓でのカルシウム再吸収を促進。骨吸収を抑制、さらに骨芽細胞に作用し、骨形成を促進します。現在日本で使用できる薬剤は、3種類あります。第2世代のエルデカルシトール(エディロール®)が、骨折予防効果が高いですが、慢性腎臓病(CKD)患者への投与は注意が必要であり、多種の薬剤を使い分けます。また他剤と併用するbase薬剤でもあります。
通常、ビタミンDが骨へ作用するには、
・皮下のプロビタミンD→紫外線により天然型ビタミンDへ変換
・食事や日光浴で得られたビタミンD→肝臓と腎臓で活性型へ変換し骨へ作用
します。よって腎機能の低下した慢性腎臓病(Chronic Kideny Disease:CKD)では腎臓での活性化機能低下もあり、サプリメントや日光浴で天然型ビタミンDを多く取り入れても、効果が乏しいため、医療用活性型ビタミンD3製剤をお勧めします。
 

②    ビスホスホネート製剤、抗RANKL抗体製剤

破骨細胞に作用し、骨組織へ沈着する事で骨吸収を抑制します。骨粗鬆症治療のスタンダード治療であり、以前の第1選択でした。そのため剤形が豊富であり、内服は連日(アクトネル®など)、週1(ボナロン®など)、月1製剤(リカルボン®など)、注射は月1(ボンビバ®)、年1製剤(リクラスト®)があります。骨強度を上げ、早急の骨折予防や休薬後も骨に沈着するため、作用が持続する事が長所ですが、
①   反面、骨形成も抑制してしまうため、早急に骨密度の回復を目指し、リフレッシュ期間(休薬期間)を設ける意識
②CKD患者へは腎機能悪化も懸念し、極力他剤へ変更し、通院加療が困難となり、在宅医療などへ移行する際に使用できるよう腎機能保護に配慮を目指した薬剤選択をしています。
同様の作用のある抗RANKL抗体製剤(プラリア®)は、骨への定着は弱く、十分な骨吸収抑制と骨形成維持を保つ薬剤であり、6か月毎の皮下注射などの利便性から使用頻度が上がっています。
この系統の薬剤では、顎骨壊死のリスクとして、巷でも話題となり、歯科治療難民を引き起こした事があります。
最新の知見では、その見解も変わってきており、骨粗鬆症治療が必要となる人に対しては、定期的な歯科検診の必要性、顎骨壊死の病態・原因(虫歯由来の骨髄炎)、抜歯や歯科治療のタイミング(虫歯治療を待機的にせず優先的に治療する)などを説明・指導しています。
別項目にて、詳しくご説明します。

  骨粗鬆症治療中の歯周病患者様及び歯科医療従事者様へ
 
 

③選択的エストロゲン受容体調整薬(SERM:サーム)

骨選択性の高いエストロゲン受容体を介して骨吸収を抑制します。エストロゲンは骨量の増加に関わっており、閉経後はエストロゲンが減少し骨量が低下していきます。SERMを内服することにより、骨代謝に関わるエストロゲンのバランスを調整し、骨量を増加させる作用があります。女性にしか適応がありませんが、骨質改善に効果があるため軽症で、比較的若年患者へ使用しています。

③    副甲状腺ホルモン製剤

もともと体内にあるカルシウム代謝を調整するホルモンですが、これを間欠的投与する事で骨吸収促進薬と使用されています。連日自己皮下注射型(フォルテオ®)、週1皮下注射型(テリボン®)、週2回自己皮下注射型(テリボン オートインジェクター®)があります。いずれも効果は大きく、特に新規椎体骨折(圧迫骨折)後の骨折治癒効果が上がると言われており、骨折発症時に使用されることが多い薬剤です。またテリボン®は骨代謝亢進を正常化する作用があり、高回転骨代謝型(閉経女性で一番多いタイプ)に合った治療法です。 安全面も考慮すると、早期閉経や偽閉経療法後の若年女性や、ステロイド性骨粗鬆症患者にも使用しています。

④    抗Sclerostin抗体製剤

2019/3月より新規発売となった骨形成促進剤です(イベニティ®)。強力な骨形成作用と持続する骨吸収抑制作用のDouble Effect効果があり、今までの骨粗鬆症治療を凌駕する薬剤です。
しかし、心疾患や高血圧、糖尿病などの疾患を治療中の方には重篤な副作用報告もされています。
当院では、販売当初は使用を控えていましたが、高度骨粗鬆症患者への必要性を考慮し、安全面に極力配慮して厳密な適応基準を設定し使用しています。
適応をしっかりと吟味して使用すれば、非常に効果のある治療選択となりえます。
(世界の臨床試験を吟味し、基礎疾患や内服薬、生活活動度を加味した心血管リスク因子を点数化し、高度骨粗鬆症診断基準と総合して判定しています) 

 いずれの薬剤も長所、短所があり、当院では、ひとりひとりに合わせた薬物治療を提案します。また画一的な治療ではなく、遂次療法やライフスタイルに合わせた治療変更も可能であり、他院で治療中の方でも、セカンドオピニオンとしてお話を聞くことは可能ですので、気軽に御相談ください。

この記事を書いたスタッフ
医師
江口 直
脊椎脊髄疾患及び骨粗鬆症の治療を中心に行っております。脊椎は、首・背中・腰と連なる臓器であり、どこかに異常を示せば、その代償として様々な部位での疼痛を発症します。その原因を突き止め、痛みやしびれに対して真摯に診察・治療の手助けをさせていただきます。また前病院での経験も活かし、骨粗鬆症と、これに伴うリエゾン治療(他科からの相談と治療共有)にも力を入れていこうと考えております。
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