股関節唇とは?
関節唇はくさび状の構造物で、大部分は軟骨でできています。股関節の関節唇は寛骨臼縁を全周囲に縁どるようにクッションの役割を果たしています。関節唇があることによって関節液の潤滑を保つことができ関節の安定性を向上させています。
股関節唇損傷の原因とFAIの関係について
股関節唇損傷の原因には、股関節脱臼や寛骨臼骨折のほか、軽微な外傷でも損傷する可能性があります。また、大腿寛骨臼インピンジメント(femoroacetabular impingement:FAI)のように大腿骨や寛骨臼の形態異常により骨と骨がぶつかり合って損傷が生じることもあります。
FAIには2つのタイプがあり、①cam typeは大腿骨側にできる骨形成であり、②pincer typeは骨盤側に形成された骨棘です。①cam typeと②pincer typeは併発することがあります。FAIのタイプにおいて、異常な機械的ストレスが関節唇損傷を引き起こします。変形性股関節症の原因の1つでもあります。
股関節唇損傷の症状
・鼠径部前方の痛み
・股関節の動かしづらさ
・強い疼痛を伴うクリック感
・一過性のロッキング症状(動かせなくなる)
・股関節が崩れるような感覚
スポーツをされる方であれば、走る、ジャンプ、捻る、スタート、ストップなどの動作により疼痛を感じるようになります。
股関節の画像検査・診断について
単純レントゲン検査で寛骨臼、大腿骨の形態を確認します。
FAI①「cam type」
大腿骨側に形成された骨によるインピンジメント(衝突)です。
大腿骨頭ー頚部間で解剖学的正常な”
くびれ”がない過度な骨形成や、滑らかなピストルの持ち手に似た像が見られます。(pistol grip変形)
FAI②「pincer type」
寛骨臼に形成された骨棘や形態異常によるインピンジメントです。
特に寛骨臼後捻の場合、通常後方寛骨臼縁より内側に存在する前方寛骨臼縁が後方より外側にあり、後方寛骨臼縁と交差する”cross over”signを示します。
以上のように単純レントゲン検査の骨形態評価も重要ですが、関節唇はレントゲン画像には写りません。
MRIでみることができます。
股関節唇損傷の治療について
一度股関節唇に損傷が生じると残念ながら自然に修復することはありません。しかし、理学療法を中心とする保存療法でその8割は症状が改善すると良好な成績が報告されています。
保存療法
リハビリテーションでは、股関節のインナーマッスルや体幹の筋力トレーニングを行い、股関節の安定性を保つことで股関節唇への負担を軽減させます。股関節周りの筋力強化や柔軟性を改善させることは重要ですが、股関節に隣接する背骨の可動性も重要になり、全身的な調整が必要になります。
外来では股関節の炎症を抑えるを目的で内服薬の処方、関節内にステロイド注射を行います。
手術療法
股関節唇損傷に対する手術は股関節唇修復術を行います。手術を行った場合も、術後のリハビリテーションが重要です。
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