森ノ宮医療大学 「運動器理学療法アップデート講座」

大阪府の森ノ宮医療大学およびWebでハイブリット開催されている「運動器理学療法アップデート講座」に当院都立大整形外科クリニックの工藤大地理学療法士が参加しています。本プログラムは、医療機関等における整形外科疾患(運動器疾患)に対する高度な専門的知識と、治療技術を兼ね備えた理学療法士の養成を目的としています。また「職能実践プログラム(BP)」として文部科学大臣に認定を受けており、社会人が大学で学んだことを証明する「履修証明書」を取得することができます。

研修概要

受講期間

令和5年4月1日~令和6年3月31日(月1回程度)

受講科目

超音波エコーと体表解剖学
理学療法症例検討論
基礎バイオメカニクスと理学療法
運動器治療の多職種連携

内容

1.多職種連携の中で理学療法士に求められる能力や最新の知識を修得する。
2.医師との連携に必要な医療画像、特に近年注目される運動器エコーの撮像について実習を通じて修得する。
3.セラピストに必要な触診技術を高め、徒手療法を客観的に指導する。
4.セラピストに必要な動作の科学的な検証方法を修得する。
5.医療現場で必要な指導能力を修得する。


本プログラムは一年間かけて行われています。
研修に参加する毎に下記に追記していきます。


【2023年6月22日 追記】
2023年4月15日と16日の2日間にかけて開講ガイダンスと初回講義を受講しました。
【理学療法症例検討論】 講師:森ノ宮医療大学 角田 晃啓 准教授
 内容は問題点の定式化の方法論で、症例研究のデザイン・研究の「確からしさ」・アウトカムについてなど、実際に症例研究を行う際の基礎知識について学ぶことができました。後期の研修では実際に超音波エコーでの評価を用いた症例研究を行う予定です。今後の研究が妥当なものとなるよう本講義で学んだことを生かしていきたいと思います。
【運動器治療における多職種連携】 講師:森ノ宮医療大学 工藤慎太郎 教授
 運動器治療における多職種連携で理学療法士として重要なことは何か?ということに対してプログラム参加者とディスカッションを行いました。現在私はクリニックで勤務していますが、参加者の中には急性期の病院で働いている方、回復期の病院で働いている方、地域包括ケアとして訪問リハを行っている方など同じ理学療法士でも働き方は大きく異なっています。医師や看護師、技師やケアマネジャーなどとの連携の仕方も違いがあることを実感しました。一方で、患者さんと長く接している理学療法士が得た情報を他職種に共有する重要性は働き方が違えど、同じであることも再認識しました。


【2023年6月24日 追記】
2023年6月17日と18日の2日間にかけてRUSI WORKSHOPに参加しました。
【RUSI WORKSHOP】講師:森ノ宮医療大学 工藤慎太郎 教授   堤真大 講師
 RUSIとはRehabilitative Ultrosound Imagingの略称のことで、理学療法に超音波画像診断装置を活用することにより、実際に治療している手の下では何が起こっているのかという理学療法の「見える化」を行うことができ、最適な治療を提供することができるようになります。
具体的には、触診を超音波エコー下で行うことでどこにどれくらいの圧で行うと目的とする組織に触れることができるのかを明らかでき、また筋を収縮させたいとき超音波エコー下で行うことで、きちんと収縮しているかをセラピストが確認し、さらには患者さんに視覚的にフィードバックすることができるなどの多くのメリットがあります。
今回は上肢編ということで肩・肘・手・手指・頚部・体幹のエコー撮像実習と講義を受講しました。
工藤慎太郎教授の講義では肩・肘の機能解剖がテーマでした。講義の中で衝撃的だったのは、肩関節に存在する烏口上腕靭帯という靭帯は教科書で当たり前のように習ってきた点と点を結ぶように存在しているのではなく、周りの筋を包含しながら幅広く付着しているということでした。それを踏まえた治療手技も学ぶことができ、今後の治療に生かしていくことができます。
堤真大講師の講義では肩の解剖がテーマでした。肩に存在している棘上筋や棘下筋の停止している場所、関節包の付着様式などこれまた教科書で習うこととは違いがあり目から鱗な情報ばかりでした。またそれらを知ることで元々知識として持っていた病態について、その背景を知ることでさらに理解を深めることができました。


【2023年7月29日 追記】
2023年7月17日講義を受講しました。
【基礎バイオメカニクスと理学療法】講師:森ノ宮医療大学 工藤慎太郎 教授
 本講義では三次元動作解析装置(VICON)を用いた動作解析を行いました。VICONとは、反射マーカーと呼ばれる目印を身体に張り付けてこれを複数のカメラで捉えることにより、三次元空間内の位置を割り出すことで人間の動きを詳細に解析することができる装置です。解析を行うことで、そのときの関節の角度や関節にかかるモーメント、パワーを計測することができます。これはレントゲンやMRI検査が静止している状態での評価であるのに対し、VICONでは動きながらの評価・運動自体の評価をすることができます。リハビリテーションでは、痛み自体だけでなく痛みを引き起こす動きを修正することが必要不可欠であり、この検査の有用性に注目が集まっています。
 講義内では、ひとり被験者を設定し、歩行動作を撮影→不良動作に対して治療介入を行う→再度撮影することで、治療効果が数値としてどう変化しているかを解析しました。クリニックでは大抵の場合、痛みなど患者さんの主観情報によって治療効果を判定しますが、客観的なデータとしてどう良くなっているのかがわかるため、どのようなメカニズムで治療効果に繋がっているのかを明確にすることができました。


【2023年9月28日 追記】
2023年9月23日と24日の2日間にかけてRUSI WORKSHOPに参加しました。
【RUSI WORKSHOP】講師:森ノ宮医療大学 工藤慎太郎 教授   堤真大 講師
 RUSI2回目の今回は下肢編ということで、股・膝・足・背部のエコー撮像実習と講義を受講しました。
 工藤慎太郎教授の講義では股・膝・足の機能解剖がテーマでした。その中で変形性膝関節症に対する講義がありました。患者さんが訴える痛みに対して、炎症という言葉は簡便で実際患者さんに説明するときも使ってしまいがちですが、そもそも膝がどのような状態で痛みを発生しており、どんな治癒過程をたどっていくのか、につて組織学的な知見を得ることができました。また運動療法が有効であるのはクリニックで治療を行っていく中で実感していますが、実際には何が改善されて痛みの軽減につながっているのかについても深く知ることができたので、今後の治療に生かしていきます。
 堤真大講師の講義では股・膝・足の解剖がテーマでした。関節に存在している筋や靭帯の走行・停止している場所、関節包の付着様式など実際の身体の中ではどのような構造をしているかを学ぶことができました。上肢編と同様に教科書で習うこととは違いがありこれを踏まえた治療を実践していく必要があると実感しました。


【2023年10月11日 追記】
2023年10月9日講義を受講しました。
【基礎バイオメカニクスと理学療法】講師:森ノ宮医療大学 工藤慎太郎 教授
 今回は7月に行った三次元動作解析装置(VICON)を用いた実習の症例発表を行いました。グループワークでひとり被験者を設定し、歩行動作を撮影→不良動作に対して治療介入を行う→再度撮影し、データの解析を行いました。臨床で実際に行っている治療介入が数値としてどう変化しているのかが明確になりました。また逆に狙い通りに数値が変化していないデータもあり、その理由を考えることでも被験者が抱えている問題点を明確にできました。
 講義の中では、伸長性歪みセンサー・加速度センサーの紹介がありました。確かにVICONは動作解析を明瞭に行うことができますが、時間と場所を選んで行う必要があり、病院で患者さん相手に実際に測定できる施設は少ないです。一方で今回紹介されたものは簡便でVICONと同じような傾向をデータで測定することができ、注目されています。

【2024年3月23日 追記】
2024年3月17日講義を受講しました。
【運動器治療の多職種連携】講師:森ノ宮医療大学 工藤慎太郎 教授 
                東京医科歯科大学 井原拓哉 助教
                加納総合病院 河西謙吾 先生

本講義では股関節を中心に下肢関節への理学療法の最新の知見を得ることができました。井原助教の講義は変形性股関節症の動作分析についてでした。普段動作分析という言葉を何気なく使っていますが、定義は「臨床的な視覚的分析を中心とした定性的な分析と、機器を用いた定量的な動作解析を包含した広義の概念」(木村,2006,理学療法学)と紹介がありました。動作分析・解析を行い→動作を構成している要素に分解→動作障害の原因と考えられる機能•構造の問題を仮説推論し、必要に応じてさらに動作分析を繰り返す、これが治療計画立案には必要不可欠であり、重要性を再認識しました。

河西先生の講義は大腿骨近位部骨折に対する理学療法についてでした。当法人では内視鏡の手術のみ行なっているため、大腿骨近位部骨折は臨床上経験することは少ないですが、術後の痛みの解釈、内出血やその後の滑走不全に対する解釈•治療介入は臨床でも活かすことができる内容であり、単に早期荷重•歩行ではなく、病態を解釈して除痛を図り、受傷前のADL獲得を目指していく必要があると教えていただきました。

工藤教授の講義は下肢関節機能障害の理学療法についてでした。股関節は構造上大きな可動域を有していますが、それ故に不安定症を伴う症例が多く存在します。関節の構造的な破綻が生じているとそれを筋などで動的な安定性を獲得させようと考えてしまいがちですが、それは間違いであり、筋の中でも関節包に直接的•間接的に付着しているものが存在しており、全体として動きを生み出していることを意識する必要があると知り、考えが一新されました。大腿直筋に対する徒手療法やエコーで視覚的なフィードバックをしながらの小殿筋の収縮などは実践できているところであり、継続していきます。

以上で本プログラムは終了となりました。講師の先生方に感謝申し上げます。

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