腱板断裂の症状
腱板断裂の場合、肩関節周囲炎いわゆる四十肩・五十肩と違い、肩の動かしづらさはあまり多くありません。
肩を動かす動作で、痛みが強く出ます。
特に、腕をまっすぐ横からあげる場合、上げてる途中に痛みを訴えることが多く、最初と最後は痛み少ないことが特徴です。
それ以外に、一般的な四十肩・五十肩のような症状があります。
・ある動作で痛みがあるが、常に痛みがあるわけではない。
・肩を動かすと、ポキポキ・ゴリゴリ・ジョリジョリ音が鳴って痛い。
・肩をねじる動作で痛い。
・背中に手が回らない。届かない。
・服を脱ぐ・着る動作が痛い。
・ズボンを引き上げる動作が痛い。
・髪を洗う動作が痛い。
・肩が痛くて寝れない。ズキズキする。
・肩を横から上げると痛い。
・洗濯物を干す時に痛い!
・スポーツ動作時に痛みがある。日常生活では、あまり痛みがない。
腱板断裂は、断裂サイズによっても症状が異なります。
断裂サイズが小さいほど、痛みの症状が強く出ることが多く
断裂サイズが大きいほど、力の入りづらさなどの症状が強く出ることが多いです。
腱板断裂の診断・検査方法
レントゲン検査
腱板断裂していても腱板自体は、レントゲンで映りません。そのため初期の場合、レントゲンで異常が出ない場合も少なくありません。
しかし状態が進行するにつれ、骨の棘である骨棘、骨頭の上昇、肩関節の変形へと進んでいく場合も多くあります。
疼痛誘発検査
腱板の1つである棘上筋の評価です。※様々な評価の中から一部のみ紹介。
手を斜め45度くらいで、少し手をあげた位置でスタート。
腕を上にあげようとする力に対して、抵抗を加えます。
陽性:腱板に何らかの異常がある場合、痛みや左右で力の入り具合に差が出ます。
full can test(親指が上バージョン)
empty can test(小指が上バージョン)
US(超音波検査)
正常の場合は、上腕骨付着部に付いている腱板筋が超音波ではっきり確認することが出来ます。
異常な場合は、腱板が切れている様子や腫れている、一部不正を認めるなど確認することが出来ます。
MRI検査
MRI検査では、腱板の断裂状態を、3方向から確認することができます。また腱板断裂以外の原因を調べるためにも有用です。
またMRIは、腱板筋肉の質的評価にも有用です。
腱板が長期断裂したままの場合、腱板筋肉の質が徐々に悪くなっていく場合があります。
腱板筋肉の質が悪いまま、鏡視下腱板修復術を行うと、術式によっては術後の再断裂のリスクが高くなります。
腱板断裂の治療方法
保存療法
腱板が切れた場合、腱板が自然にくっつく可能性はありません。
しかし、活動レベルが高くない場合は、保存療法を行うことで痛みが軽減したり、肩を動かす際の痛みが軽減したり、日常生活に支障がないレベルまで症状が改善する方も多くいます。ただし、筋力低下は、手術しないと改善されないことが多いです。
リハビリテーション
切れた腱板は元に戻りませんが、切れてない周囲にあるその他の腱板筋肉でサポートできるように強化します。
また、肩甲骨の位置や姿勢改善で症状が改善する場合も多くあります。
薬物療法
疼痛が強い場合は、非ステロイド性消炎鎮痛剤(NSAIDs=ロキソニンなど)や湿布をすることで炎症を抑え症状が改善します。ただし、飲み薬は長期間使用すると胃があれるなどの副作用が出る場合があるので、注意が必要です。
注射
物が持てない、仕事や日常生活に支障が出るほどの強い痛みがある場合、ステロイド注射を行う場合があります。
注射は、一時的に症状を改善させるだけで、根本的な原因を改善させるためには、手術を行う必要があります。
しかし、注射で炎症を抑え、リハビリテーションで肩周囲の機能を改善することで症状改善することも多くあります。
また、注射を繰り返し行うことは、組織を脆くさせ、長期的には症状を悪化させる場合もあるの、手術を勧めることもあります。
当院では、出来る限り少量で、ピンポイントで効果が出る様に、超音波ガイド下で1mm単位で調整して注射を行います。
手術療法
腕を使う仕事や運動をしたい方・リハビリや痛み止めなどの内服・注射などの保存療法では痛みや動きの改善に乏しい場合、手術療法を検討する場合があります。
手術療法の適応は、腱板断裂による筋力低下や疼痛により日常生活に大きな支障をきたしている、スポーツ活動における疼痛などが鏡視下腱板修復術の適応となります。
手術には通常の手術(直視下手術)と、内視鏡を使った(鏡視下手術)があります。
鏡視下手術は、数㎜~1cm程度の皮膚を切開し、直径5㎜ほどの内視鏡(関節鏡)や手術器具を挿入し手術を行います。直視下手術で大きく傷を開けるより、体にかかる負担がとても少なく、手術後の痛みも少ないことから、現在は鏡視下手術が主流です。
なお、当グループでは通常の麻酔に加え、神経ブロック注射を実施することにより、術後のさらなる疼痛緩和に努めています。
手術内容
「アンカー」という糸つきビスを利用し、骨にアンカーを差し込みます。そのアンカーについている糸を断裂した腱板筋に通し上腕骨の腱板が着いていた場所にしっかりと縫合し、切れた腱板を修復します。
手術中に仕様するアンカーは、生体内で吸収される素材を利用するため、アンカーを一生抜く必要はありません。断裂形態によって、使用するアンカーの数や縫合方法は変わります。大きな断裂ほど糸が必要となり、アンカーの数は増えます。
手順(通常の鏡視下腱板修復術)
①肩にカメラや器具の入る小さな傷を数ヶ所作成し、そこから内視鏡を挿入します。
②最新の4K画面に、カメラから映し出された肩の中の映像を確認し、肩の状態をまず観察します。
③修復した腱板がこすれないように、肩峰にできた骨の出っ張り(骨棘)を関節鏡で切除します。
④腱板の断裂部分が上腕骨付着部の修復位置まで、引っ張り込めるか確認します。
⑤上腕骨にアンカーを設置し、断裂した腱板を修復します。
⑥最後に、肩の状態をもう一度全て観察し、問題がなければ閉創します。
また、上腕二頭筋腱に処置が必要な場合は、腱固定や腱切離など追加処置を行うこともあります。
さらに、当院では平田正純医師による、これまで修復の難しかった(腱板の断裂部分が修復位置まで、引っ張り込めない)広範囲の腱板断裂に対して腱板を前進させ、断端を上腕骨付着部の修復位置まで、引っ張り込めるようにする術式
【鏡視下腱板修復術+Debeyre-Patte変法】と呼ばれる方法で手術を実施しています。