靭帯の痛み(足関節捻挫)と治療
靭帯の治療
靭帯の痛み、つまり靭帯が引き伸ばされること、断裂するというのは、関節に通常加わるような強い外力が作用し、本来の関節可動域を超えるときに起こります。靭帯損傷とは -概要-
日常生活やスポーツ活動、交通事故などで肘、膝、足首を捻ってしまうと、関節を安定させてくれる靭帯が伸張(伸ばされ緩む)、断裂により関節がグラグラする不安感などの不安定性という特徴的な症状が起こります。受傷機転は関節により異なります。
肘関節:転倒などで捻挫や脱臼の急性外傷で外反ストレスで生じるものと、投球障害などで慢性障害としての靭帯損傷があります。
膝関節:サッカーやラグビーなどのコンタクトスポーツで接触プレー(接触型)で生じるものと、バレーボールでの着地時、バスケットボールでの方向転換などの非接触(非接触型)で膝に過度な負担が加わった時に生じます。
足関節:日常生活での歩行やスポーツでは動作中やジャンプ着地時などで生じる靭帯損傷(内反ストレスで受傷)があります。
靭帯損傷の症状
靭帯の損傷により次のような症状が出現します。◇疼痛(損傷した部位に痛みを生じ、腫脹増大、低酸素症により痛みが増大する)
◇腫脹(靭帯の断裂により出血するため)
◇可動域制限(腫脹や痛みにより関節が動かしにくくなります。)
◇筋力低下(関節を動かさないと、筋収縮も抑制され、放置すると筋力低下、筋萎縮が進行します。)
◇関節不安定性(靭帯の損傷に伴い日常生活、スポーツ活動での関節の不安定性が起こります。)
靭帯損傷の診断
単純レントゲン撮影や超音波検査を行い、靭帯の状態を確認して診断をします。
単純レントゲン撮影
捻挫による骨折の有無を確認します。また痛みが軽減してから足関節を引っ張って撮影し、不安定性を評価します。
超音波検査
関節内の腫れや浅い部分にある腱、靭帯の損傷を、簡便に検査を行うことが可能です。
超音波診断装置では、靭帯組織は骨と骨の間を結ぶ繊維が確認することが出来ます。
正常な靭帯組織のエコー画像
(上記画像は足関節の靭帯)
靭帯損傷を認めるエコー画像(靭帯が肥厚し緊張の低下を認める)
超音波診断装置を用いて診察を行うことで靭帯の断裂や、炎症症状や関節の不安定性が確認出来ます。
靭帯の修復過程も確認することが出来るため診察で不安定性があるのか確認し、固定の方法やリハビリ内容の決定、
スポーツを行なっている方ではスポーツ復帰の判断基準にも用います。
MRI
レントゲンでわからない骨の内出血や腱、靭帯など全体像を詳しく調べます。
靭帯損傷の重症度分類(Freyらの重症度分類)
グレードⅠ度、Ⅱ度の場合は保存療法を中心に行う、グレードⅢ度で動揺性が著明な場合は関節軟骨への負担も考慮し手術を検討します。
靭帯損傷の治療
治療は保存療法が中心ですが、不安定性や痛みの程度、関節軟骨や骨への二次的な障害の程度を評価して、総合的に判断して手術療法を検討します。保存療法
【急性期】受傷0日〜14日
RICE処置 (R:Rest安静 I:Icing冷却 C:Compression圧迫 E:Elevation挙上)
【方法】
①氷嚢を患部に当て包帯またはバンドで圧迫、固定し挙上位で安静にします。
【目的】炎症の軽減、消失
【ポイント】
①アイシングは、氷を利用し1回10-15分行う。2回目を行うときは20分-40分ほど間隔をあけアイシング実施します。
【亜急性期】受傷14日〜
<タオルギャザー>
【方法】
①タオルの上に足部を置きます。
②足趾(足の指)を曲げ、タオルをたぐり寄せます。
【目的】長母趾屈筋の滑走性改善
【ポイント】大きく足趾(足の指)を動かすことがポイントです。
<背屈可動域運動>
【方法】
①距骨という足関節前方の骨を押さえ、踏み込みます。
【目的】背屈可動域の改善
【ポイント】
①段差の上で行うことで体勢がとりやすいです。
<足関節チューブエクササイズ>
【方法】
<外反>
①座位でチューブを足部の外側につけ、一方の足の裏を通り、外側に引っ掛け手で持ちます。
②足部を外側へ捻ります。
<内反>
①座位でチューブを足部の内側につけ、一方の足の裏でチューブを押さえます。
②足部を内側へ捻ります。
【目的】足関節周囲筋の筋力強化
(外反:腓骨筋群 内反:後脛骨筋など)
【ポイント】
外側、内側へ捻った後はゆっくり戻します。
10回左右3セットずつ行いましょう。
【回復期】
<カーフレイズ> 両足、片足
【方法】
<両脚カーフレイズ>
①両足の踵をまっすぐあげます。これを繰り返します。
<片脚カーフレイズ>
①片足の踵をまっすぐあげます。これを繰り返します。
【目的】下腿三頭筋の筋力強化
【ポイント】
①踵が外側へ移動しないように気をつけます。
<スクワット>
【方法】
①足を肩幅に開きます。
②つま先が真っ直ぐになっているのを確認します。
③お尻を引くように股関節から曲げていきます。
④股関節が曲がった後に膝関節が少し曲がり、膝がつま先に出ないようにします。
【目的】殿部、大腿前面、後面の筋力強化
【ポイント】
①つま先が浮いていることが確認できたら、重心が後方にあるので、前方に少し移動することがポイントです。
②膝が内側に入らないように注意します。
<バランスディスクトレーニング>
【方法】
①バランスディスクの上にのり保持します。
②30秒保持します。
【目的】バランス機能向上
【ポイント】
①30秒の保持が難しい場合は、5秒〜25秒と時間の調整をします。
②バランスが少し崩れても立ち直ることも大切です。
③明らかに不安定な状態は転倒の危険性があるため無理はしないようにしまします。
【競技復帰準備期】受傷3ヶ月〜
ジョギング
ジャンプ着地動作練習
<アジリティトレーニング サイドステップ>
【方法】
①シングルレッグスクワットの体勢から横にジャンプして反対側の足で着地します。
②腕の振りも意識して行います。
【目的】ジャンプ着地時の安定性の獲得
【ポイント】
①膝が内側に入らないように注意します。
②つま先より膝が前に出ないように注意します。
※保存療法での時期に合わせたトレーニングをご紹介しましたが、各個人の状態により変化するので担当の理学療法士と相談してください。
手術療法 -術後リハビリテーション- 当院プロトコル
手術療法の種類A クリーニング
B 靭帯縫合・再建術
C 骨・軟骨操作(ドリリング・軟骨移植)
上記の術後のプロトコルに準じてリハビリを行っていきます。術後から約1ヶ月は週に2回の頻度を目安に通院するようにお願いします。状態によってはリハビリ頻度に変動がありますので、詳しくはリハビリ担当者と相談をしてください。日常生活・スポーツへの復帰など、術後約3ヶ月間を目安にリハビリを行い、目標とする部分へ達したら治療終了となります。腱や軟骨など靭帯以外の組織にも処置をした場合、リハビリ内容や復帰時期は異なりますので、医師とリハビリ担当者の指示を確認してください。
担当医
度合いにより修復期間や処置が異なります。
レントゲンやMRI、超音波検査などで精査して、大事な大会や試合が近い方、しっかり治したい方
など患者様のニーズに合わせて最善の方法を選択し、治療します。
【外来担当日】 月・火・水・金曜日終日、第2・4週木曜日
★ご予約は こちら