膝関節(軟骨と半月板)の痛みと治療

2020/04/12

膝関節の痛み

軟骨の痛み(軟骨損傷と変形性膝関節症)

関節軟骨損傷
関節軟骨損傷は様々な原因により生じます。 加齢などにより徐々に軟骨の磨耗が進行するものと、外傷や繰り返す過度なストレ ス(スポーツ活動など)により生じるものに大別されます。スポーツや交通事故などの外傷で軟骨損傷を受けると関節運動が障害され、関節可動域の低下・運動時関節痛が生じます。軟骨の損傷部はほとんど自然修復されないため、損傷部分を起点とした軟骨変性が広範囲に広がると変形性膝関節症(Osteoarthritis:OA)へと至ります。

変形性膝関節症
変形性膝関節症(OA)は、関節痛や関節腫脹が生じます。加齢を基盤とした複数の要因(遺伝、性別、力学的ストレスなど)を背景に発症する多因子疾患であると考えられています。

半月板損傷

半月板は膝関節の安定化や荷重分散潤などの機能もつ線維軟骨で関節軟骨を保護する役割を担っています。内外側半月板ともに、外縁10〜25%に血行が存在します。半月板損傷はさまざまな原因で生じます。単独で損傷する場合と二次的に損傷する場合に大きく分けられます。
単独で損傷するものはスポーツで膝をねじることなどの外傷性のもの、円板状半月板など形態異常によるもの、加齢による変性によるものなどがあります。
二次的に損傷する場合は靭帯損傷に合併するものが最も多いとされています。断裂形態は縦断裂、横断裂、水平断裂、バケツ柄断裂、弁状断裂、変性断裂などがあります。半月板の変性や損傷し機能が失われてしまうと、関節軟骨などの周辺組織に変性が及び、変形性膝関節症(osteoarthritis:OA)の発症に至る可能性が指摘されています。
 

軟骨損傷の症状・痛み

無血管組織である軟骨には血管が存在しないことから自然治癒能力に乏しいです。また無神経組織であるため疼痛を感じることはありませんが様々な要因で疼痛が生じます。

膝関節軟骨損傷 変形性膝関節症

軟骨損傷では保存療法でいったん症状が軽減する場合もありますが、時問とともに軟骨変性が進行し症状が再燃する経過をたどることは少なくありません。変形性関節症では初期には関節軟骨の菲薄化、亀裂や剥離が生じ軟骨の磨耗が進行すると軟骨下骨が露出し、さらに病期が進行すると軟骨下骨の硬化、嚢胞形成、骨棘形成を生じます。関節痛、引っかかり感、 関節水腫などが主な症状です。


半月板損傷

膝関節内に水が貯まり腫れて疼痛が生じることや損傷した半月板が関節内で引っかかり、疼痛を伴い動かせなくなる「ロッキング」という症状が起こることもあります。 歩行時、運動時とくに螂鋸や立ち上がり動作時の疼痛が生じます。クリック(膝関節の屈曲や伸展運動の際の振動や音)やキャッチング (ひっかかり感)が生じ、関節の腫脹、水腫、 血腫(半月板辺縁の場合)も生じます。ロッキング(半月板が嵌頓し完全伸展が不可能な状態)を生じることもあります。 

軟骨損傷の診断

膝関節軟骨損傷 変形性膝関節症

詳細な問診による障害部位の確認が重要です。理学所見としては可動域や関節水腫、圧痛部位を細かく確認することが重要です。

画像診断
レントゲン 
軟骨が描出されず軟骨損傷の診断は困難です。
関節の変形などを評価できます。

関節裂隙の狭小化を認めます。
 
 
MRI 
初期の軟骨損傷の診断にも有用です

 
大腿骨の内側顆に輝度変化を認めます。

半月板損傷

診断は症状の経過、理学的所見や画像検査により行います。理学所見は半月板損傷の誘発テストがあり、膝をひねったりすることによって疼痛やクリックを誘発させます。

画像診断
・レントゲン
変形性関節症や骨傷の有無などを確認します。その際に半月板は描出されませんが関節裂隙の狭小化や円板状半月板の場合の関節裂隙の開大も確認します。

・MRI

半月損傷の病態や合併する靭帯損傷の診断に用いられます。 感度90.5%、特異度89.5% と 非常に有用です。

外側半月板に輝度変化を認めます。

・超音波診断装置

超音波診断装置では、MRIやCTとは違い被曝なども無いため身体に対して害がなく短時間に簡便に診断が可能です。エコー画像でも半月板は描出が可能であり、半月板の断裂(水平断裂)や半月板の逸脱(亜脱臼)を確認することが可能です。
                 正常な半月板にエコー画像                                                                         半月板の損傷及び軽度の逸脱を認めるエコー画像
 

軟骨損傷の治療

膝関節軟骨損傷 変形性膝関節症


膝関節軟骨損傷
膝関節軟骨損傷に対する治療法はいまだゴールデンスタンダートとなる治療法は確立されていません。発症後早期の治療としては急性期の消炎や除痛が基本となります。 硝子軟骨である関節軟骨の欠損は完全な再生はされないとされているため、治療のゴールも損傷部の完治ではなく、ある程度の自覚症状や他覚所見の鎮静化を目指します。

保存療法

長期の競技継続に由来すると思われる慢性的な軟骨障害、靱帯損傷や膝半月板損傷の術後など治療経過の中で発生する軟骨障害が主な対象になります。
・理学療法 
下肢軟骨損傷のリハビリテーションでは患部へのメカニカルストレスを可能な限り減少させることが重要となります。可動域の改善や患部、患部外の筋力強化などが重要です。
軟骨障害の発生原因は必ずしも明瞭ではない場合が多いですが身体特性が発症に関連した可能性のある場合があります。
動作時のいわゆるknee inなどの不良姿勢なども注意が必要なため下肢支持筋力、体幹、足部なども重要になります。
またトレーニングだけでなく、インソールやテーピングなどによるサポートも状況によって必要になります。
               
運動療法例

スクワット
膝が内側に入らないように行います。
・内服治療 
ロキソニンなどの鎮痛剤を処方します。
・関節内注射  
ステロイドの関節内注射は関節炎症症状の急速な緩和目的に用いられます。短期での症状改善は認めますが副作用も多いです。組織修復能、代謝回転を低下させるため慎重な投与が望まれます。ヒアルロン酸も軟骨損傷膝に対して用いられます。軟骨保護作用と抗炎症作用の2つの作用があります。副作用も少ないです。

手術療法
患者の要求や症状、軟骨欠損サイズ・深さ、付随する事象(関節のアライメント、靱帯・半月損傷の有無、骨挫傷の有無など)を踏まえ総合的に判断し選択する必要があります。合併損傷がある場合は軟骨損傷に対する治療の前もしくは同時に治療を行います。
変形性膝関節症
保存療法
症状が軽い場合は痛み止めの内服薬や外用薬の使用や、膝関節内にヒアルロン酸の注射などをします。また膝関節の機能回復を目的とした運動療法は重要です。大腿四頭筋強化訓練、関節可動域改善訓練などの運動療法や、膝を温めたりする物理療法を行います。また必要があれば減量を行います。足底板や膝装具を作成することもあります。

            運動療法例
クアードセッティング
タオルをつぶすように大腿前面に力を鍛えます。

手術療法
このような治療でも治らない場合は手術治療も検討します。これには関節鏡(内視鏡)手術、高位脛骨骨切り術(骨を切って変形を矯正する)、人工膝関節置換術などがあります。
 

半月板損傷

保存療法
消炎鎮痛剤の内服・貼付、消炎鎮痛処置(アイシングなど)、ヒアルロン酸関節内注射といった消炎鎮痛処置を行います。半月板損傷部位への負担軽滅として、過伸展、キック動作、深屈曲動作を回避します。運動復帰に向け立位や動作のバランスやタイトネスといった全身の身体機能の改善も行います。疼痛、水腫、圧痛などの消退程度に合わせ、運動強度を徐々に上げます。安静期間中や運動強度を上げた時期に水腫・疼痛・引っ掛かりなどの症状が継続する場合は手術を考慮します。

運動療法例
ハムストリングスストレッチ

痛すぎず気持ちいい程度で30秒程ストレッチします。
バランストレーニング

床や慣れてきたら不安定な場所で行います。
手術療法
半月板のクッションとしての役割がなくなると変形性膝関節症へ進行するため、半月板の温存を目的縫合術などの修復術が重要視されています。
・半月板切除術
血行のない部分の損傷、縫合困難な複雑な形態の損傷、変性の強い症例などでは切除術が施行されます。半月板の機能をできるかぎり温存するために、切除範囲は最小限にすることが重要です。
・半月板修復術
変性がなく血行のある部分損傷が適応となります。損傷部分を縫合し修復します。 
都立大整形外科クリニック
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