仙腸関節性腰痛の症状とその運動療法、ストレッチについて
仙腸関節性腰痛とはどんな症状ですか?
仙腸関節性腰痛のよくある症状は
①仰向けで寝ることができない
②痛いほうを下にして寝ることができない
③ 椅子に腰をかけるのがつらい
④痛い方のおしりを浮かせて座っている
⑤ 動き始めが痛い
など があり、片側の殿部痛、鼠径部痛や下肢の痛み・痺れなどの症状が出現します。
一方で正座は楽なことが多いです。
仙腸関節性腰痛の痛みの約50%でおしりの痛み、鼠径部痛(股の外側)があり、この病気の特徴は片側に出現することです。
腰椎椎間板ヘルニア の症状と似ている部分があるため、よく勘違いされる方もいます。
このページでは、仙腸関節性腰痛とその治療法、リハビリテーションを簡単に紹介します。
仙腸関節は、骨盤にある腸骨と仙骨の2つの骨の間にある関節です。
骨盤は寛骨(腸骨・坐骨・恥骨で構成)、仙骨、尾骨でできています。
仙腸関節の周囲は強い靱帯が多く、わずかに動くだけの関節と言われています。
仙腸関節は、下半身と身体をつなぐ重要な関節で、上半身と下半身からの衝撃を吸収する役割があります。
仙腸関節性腰痛の患者数は若齢者から高齢者まで幅広く、1:2(男性:女性)の割合で女性に多く見られます。
仙腸関節性腰痛はどのような動作で起こりやすいですか?
中腰での作業、急な動作、同じ動作の繰り返しなどで起こりやすいです。
仙腸関節が不安定になったり関節にずれが生じたり、仙腸関節部にある靭帯が伸びすぎることで、からだの衝撃吸収がうまくいかず関節に炎症症状が起き痛みが発生します。
仙腸関節性由来の腰痛はレントゲンやMRI、CTで異常所見がないことが多いため、症状や身体所見で診断します。
特徴として痛みのでている場所を指1本で示すこと(one finger test)があげられます。(下図)
仙腸関節性腰痛の診断基準
仙腸関節性腰痛は、 腰椎椎間板ヘルニア や 腰部脊柱管狭窄症 と似た症状が出現するため、まずはレントゲンやMRIなどの画像所見と症状からその鑑別を行います。
その後、片側の腰おしりの痛み(one finger test)を確認し、整形外科的テスト(Newton変法、Gaenslenテスト、Patrickテストの1つ以上が陽性)を行います。
仙腸関節由来の痛みが疑われれば、仙腸関節ブロック(痛み止め注射)を行い、70%以上の痛みが減る場合は仙腸関節性腰痛と診断します。
仙腸関節性腰痛には大きく3つに分けられます。それぞれの型によって治療方法は異なります。
a.ニューテーション型(仙骨を起き上がり方向に誘導して痛みが軽減する)
b.カウンターニューテーション型(仙骨をうなずき方向に誘導にして痛みが軽減する)
c.不安定型(骨盤を左右から押さえることで痛みが軽減する)
仙腸関節性腰痛の治療法
疼痛軽減を目的に 仙腸関節ブロック、薬物療法 、骨盤ベルト(コルセット)の検討、リハビリテーションを行っていきます。
仙腸関節性腰痛のリハビリテーション
リハビリテーションでは、どこに痛みがあるか、痛みが出る動作は何かの確認を行います。
その後、痛みの軽減する方向へ骨盤の位置を修正し、それを保てるように骨盤周囲筋の筋力強化や 股関節・背中の ストレッチを行います。
また痛みの出た原因動作の修正を行うことで、痛みの軽減と再発予防をめざします。
可動性改善
仙腸関節周りの股関節・腰部・背中の柔軟性を確認し、可動域制限のある場合はストレッチやマッサージの指導を行います。
骨盤周囲筋の筋力強化
仙腸関節由来の痛みがある方は、腹横筋、内腹斜筋、多裂筋、大殿筋の筋の出力低下や筋活動のタイミングの異常を認めやすいため、それらの筋力を確認しトレーニングを行います。
アラインメント(姿勢)改善
骨盤中間位といわれる標準的な指標として、上前腸骨棘と上後腸骨棘の位置を見ていきます。
10~15°が正常と言われており、それ以上の角度(2横指以上)では骨盤前傾位、それ以下の角度(2横指未満)では骨盤後傾位と言います。
骨盤前傾位とは仙骨がうなずき運動をしていくことを言い、仙腸関節が安定しやすい状態です。
骨盤後傾位とは仙骨が起き上がり運動をしていくことを言います。仙腸関節は不安定な状態です。
骨盤の位置によって治療方法は異なりますので、医師、理学療法士、柔道整復師が確認しながら治療をすすめていきます。
アライメントが改善されても、すぐに位置異常が起こることが多いので、良好なアライメントの維持ができるように安定性の獲得が必須となり運動療法が有効です。
仙腸関節性腰痛に対する運動療法
腹式呼吸トレーニング
仙腸関節性腰痛に対する運動療法の一例です。
エクササイズで痛みの出る方は、中止してください 。
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