肘の軟骨損傷 上腕骨小頭離断性骨軟骨炎(capitellar osteochondritis dissecans:小頭OCD)

2020/04/24

上腕骨小頭離断性骨軟骨炎(capitellar osteochondritis dissecans:小頭OCD)

成長期の軟骨損傷では野球少年の上腕骨小頭離断性骨軟骨炎が代表的です。
青少年期野球選手の約2%に発生すると言われております。
骨端線の閉鎖前は骨端および骨端周囲が脆弱であるため骨軟骨の障害が多いです。投球時の繰り返す外反ストレスにより上腕骨小頭に圧迫・剪断力が加わり発生するという報告もあります。
投球中止により病巣の完全修復を日標とします。投球中止の程度については一定の見解が得られていません。適切な治療を行わずにいると将来的に肘関節の変形性関節症(Osteoarthritis:OA)に至り、肘関節の可動域制限によって洗顔動作などの日常生活動作にも支障を及ぼす場合もあります。
野球以外のスポー ツ(ゴルフなど)に発症する例もあります。

上腕骨小頭離断性骨軟骨炎 症状・痛み

無血管組織である軟骨には血管が存在しないことから自然治癒能力に乏しいです。
また無神経組織であるため疼痛を感じることはありませんが様々な要因で疼痛が生じます。

上腕骨小頭離断性骨軟骨頭OCDの典型的な臨床症状は、投球時痛と可動域制限です。病期が進行するとともに関節炎や関節水腫を生じ、腫脹、疼痛の増強とともに可動域制限も悪化します。また遊離体の出現により
ロッキング症状を呈するようになる場合もあります。

上腕骨小頭離断性骨軟骨炎の診断

治療方針を決定する上で考慮すべき基本事項は、症状、局所所見、身体機能の3点が重要です 。
①症状:疼痛(安静時痛、圧痛、投球時痛)健側と比べた関節可動域
②局所所見:病期(透亮期、分離期、遊離体期)病変の大きさ 
③身体機能:肩甲胸郭関節機能、股関節可動域、前腕回旋可動域など

画像診断
・レントゲン

透亮期、分離期、遊離期の各病期に分類され分離期はさらに分離初期と分離後期に分けられます。
・MRI
骨軟骨片の不安定性の有無を確認できます。MRIX線像のみで行うのは過小評価になる傾向があるため超音波像、CT像、MRI像を基に総合的に判断する必要がある場合もあります。
・超音波診断装置
エコー画像でも上腕骨小頭離断性骨軟骨炎病変の有無が確認出来ます。
病変の有無のみでなく、初期、進行期、末期とどの病期なのかも判別が可能です。
また、症状が無いにも関わらずエコー画像で病変を確認できることもあります。そのため近年は野球肘検診などでもエコー評価を行います。

正常な上腕骨小頭のエコー画像

上腕骨小頭離断性骨軟骨炎を認めるエコー画像
(矢印部の骨輪郭の不整像を認める)

  上腕骨小頭離断性骨軟骨炎の治療

保存療法
投球中止により病巣の完全修復を日標としますが、投球中止の程度については一定の見解が得られていません。
X線写真で病巣の修復が確認されるまでとしていますが少なくとも6か月を要します。
安静時痛、圧痛が生じる場合は投球禁止します。安静時痛、圧痛がない場合は軽い投球動作などは許可されることが多いです。
投球動作で疼痛が生じる場合は、投球動作により局所に負担がかかっています。
この時期に安静と投球禁止だけを指示しても完治は望めないか年単位に近いような投球禁止期間を強いることになります。
肩甲胸郭関節機能の改善や正しいフォームの習得など、徹底的に理学療法を行います。
 
運動療法例
肩甲胸郭関節トレーニング:肩甲骨から動かすように行いトレーニングします。
手術療法
・鏡視下郭清術 
肩甲胸郭関節機能が正常化しても有症状。
離体期もしくは分離期後期で骨片に不安定性がみられ画像上治癒を望めない。
病変範囲が大きくなく、病変部を摘出しても橈骨頭肥大や亜脱臼など術後の肘関節の変形が危惧されない。
この場合適応になります。
肩甲胸郭関節機能が正常化した後に投球動作を許可します。通常術後1~3ヵ月程度で完全復帰可能です。

・直視下骨軟骨移植術
健側の橈骨頭骨端線が未閉鎖。
病変部が大きく画像上治癒傾向がみられない。
橈骨頭肥大や亜脱臼が徐々に進行して関節可動域制限が進行しつつある。
この場合が適応となります。
ランニングと投球動作は術後3ヵ月で許可します。術後3ヵ月までに肩甲胸郭関節機能を中心とした機能改善を徹底的に図ります。
術後3~6ヵ月までの問に完全復帰可能となります。

※肩・肘関節専門医の平田医師は当院では月曜日午前診察を行っております。
 
都立大整形外科クリニック
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