内側膝蓋大腿靭帯(MPFL)とは?
大腿骨(太ももの骨)から膝蓋骨(お皿)にかけて付いている靭帯で、膝蓋骨が脱臼しないよう止める役割を担っています。膝蓋骨の内側支持機構の第一因子とも言われ、軟部組織の中でもその役割を50%以上担っていると言われています。
内側膝蓋大腿靭帯(MPFL)損傷とはどのように起こるのか?
膝蓋骨が外側へ脱臼する受傷の約9割が内側膝蓋大腿靭帯(MPFL)損傷を伴います。
膝蓋骨の脱臼はジャンプの着地時や切り替えし時など、膝が軽度曲がった状態で膝が内側に入った状態(knee-in)で、膝を伸ばす筋肉(大腿四頭筋)が強く収縮されるときに起こります。
膝蓋骨脱臼に関係するものとして、生まれつき膝蓋骨が脱臼しやすい形態をしている場合があります。
【大腿骨顆部の形成不全】
膝蓋大腿関節は大腿骨と膝蓋骨が適合することで安定しますが、生まれつき関節面が浅い場合があります。この場合、膝蓋骨は外側へ脱臼しやすくなります。
膝蓋骨の形と大腿骨の溝の関係を表した分類です。
Ⅰ型からⅢ型で大腿骨外側と内側の長さと傾き、膝蓋骨の形に差があります。Ⅲ型が最も脱臼しやすい形態です。
【Q-angleの増大】
骨盤の上前腸骨棘と膝蓋骨の中心を結ぶ線と、膝蓋骨の中心と脛骨粗面を結ぶ線が成す角度です。
男性が約12°、女性が約16°が正常で20°以上は異常とされます。
この角度が大きくなる程、膝の外反が強くなり膝蓋骨は脱臼しやすくなります。
その他、内側広筋の機能不全や外側組織の過緊張、外反膝(X脚)などが膝蓋骨脱臼に関連しています。
膝蓋骨脱臼の症状
・膝蓋骨脱臼時は強い痛み、腫れを生じます。
・脱臼後の靭帯修復が不十分な場合、膝蓋骨が外側へ外れやすく膝がガクッとなり、痛みを生じます。また膝蓋骨が不安定になることで軟骨同士がぶつかり合い痛みや関節内の腫れ、軟骨損傷が生じます。
画像検査・診断
まずは受傷機転や不安感が出現した時期、症状について問診を行います。問診内容を踏まえて徒手検査や画像検査を行います。
単純レントゲン検査では膝蓋大腿関節の形態評価、膝蓋骨骨折の有無を確認します。
必要に応じてMRI検査で内側膝蓋大腿靱帯や軟骨の状態を評価します。
例)
単純レントゲン画像
大腿骨内側の長さが短く、溝が浅いのがわかります。
MRI画像
MPFL付着部の信号変化(
赤 矢印)と
大腿骨外側の骨挫傷(
黄 矢印)を認め、膝蓋骨脱臼を疑います。
治療について
膝蓋骨脱臼の治療法としては保存療法と手術療法があります。基本的にはまず保存療法を行います。
膝蓋骨の骨折を合併している場合や保存療法でも改善がみられない場合は手術療法を行います。
保存療法
内側広筋を強化することで膝蓋骨を安定させます。また外側の筋肉を柔らかくするようにマッサージしたり、殿筋を強化することで外反膝にならないようにします。
手術療法
膝蓋大腿関節の外側支帯を切離する方法や、移植腱を用いて内側膝蓋大腿靭帯の代わりになるよう移植する方法などがあります。術後は1〜2週間程度安静期間を設けたあと、保存療法同様にリハビリを行います。術後約6ヶ月でスポーツ復帰を目指します。