林典雄先生(理学療法士)特別講習:肩関節超音波リハビリテーション
~プロ野球編~
2025年9月6日・7日に東京都中央区にあるリバーシティすずき整形外科クリニックさんの施設内で開催された、「林典雄先生 特別講習:肩関節超音波リハビリテーションプロ野球編」に当院理学療法士の近藤 拓真が参加しました。林典雄先生は理学療法士として数多のプロ野球選手の治療に携わっており、また超音波画像診断装置を併用した「非侵襲的に神経周辺の酸素環境を整えるための技術(注射を行わずにセラピストの手技によって神経周囲の酸素環境を整える技術)」であるエコーガイド下圧変動操作を確立された権威のある先生です。
講習内容:投球障害肩治療に対する考え方とエコーガイド下圧変動操作
林典雄先生の講習で一番驚かされたのは、「理論がシンプルであること」です。近年、様々な徒手技術が注目されており私たち理学療法士も治療に際してつい難しく考えすぎてしまう場面が多々存在します。一方で林典雄先生の肩関節治療の考え方はシンプルで、一番基盤になっている部分は「肩関節が求心位を保って(安定感をもって)動かせること」です。
肩関節は「球関節」という種類に分類され自由度が非常に高い関節です。
自由度が高いことにより多方向に幅広く動かすことが可能ですが、他の関節に比べて適合性は低く関節自体は安定感に欠けてしまいます
そのため、肩関節の周りには関節包(関節を包む繊維質なコラーゲンで構成された膜)・靱帯・回旋筋腱板(肩関節を包み込む4つの筋)や肩関節の土台である肩甲骨・肩甲骨周囲の筋など様々な組織が存在しており、それらが正常に機能することで肩甲骨に対して上腕骨(腕の骨)が引き付けられるように働き、肩関節が安定感を保って動くことができます。
しかし、肩関節周囲の筋に信号を送る神経が何らかの影響で役割を果たさなくなったとき、筋の過度な緊張や出力の低下が起きてしまい肩関節の安定性を保つ機能は崩れてしまいます。肩関節が安定感を失うことで投球動作時に痛みが誘発されてしまいます。これは投球障害肩以外にも肩関節疾患全般で起こる可能性があります。
そこで正常な機能を失った肩関節周囲筋や神経周囲に対して「エコーガイド下圧変動操作」を行います。エコーガイド下圧変動操作を行うことで神経周囲の酸素環境が整えば筋の過度な緊張・筋出力が改善し肩関節の安定性が取り戻せる可能性があります。その結果、投球動作時の肩関節運動が円滑に進み痛みの軽減につながります。
もちろん患者様によって様々な原因があり、全ての患者様で当てはまるわけではありません(脱臼・不安定症など)が神経・筋機能の低下が原因である場合はとても有効な技術であると感じました。
他施設の医師・セラピストとの交流
またもう一つ驚いたのは、一緒に参加した20数名の医師・セラピストの熱量の高さです。兵庫・新潟など遠方からの参加者もいて、それぞれが目的意識を持ち意欲的な姿勢で取り組んでいたため私自身も周りの力に引っ張られてより一層意欲が増し、良い意味で競争心が湧き出てきました。
このように他施設の医師やセラピストと交流して自分を見つめ直すことができるのもクリニックの外に学びに行くことの良さだなと改めて感じました。
最後に
今回の講習会では非常に多くの学びがあり、より多くの患者様に還元したい気持ちでいっぱいです。今後も患者様の治療期間短縮を目指してよりブラッシュアップされたリハビリテーションを提供できるよう精進して参ります。
この記事を書いたスタッフ

理学療法士
近藤 拓真
近藤 拓真
都立大整形外科クリニックに所属している、理学療法士の近藤拓真です。小学校1年生の頃から野球を続けており、様々な怪我に悩まされてきました。この経験を活かし、患者様の気持ちを理解し、寄り添いながら、サポートをして行きたいと思っています。よろしくお願い致します。