五十肩(肩関節周囲炎)について

2024/10/01
#肩関節 #医師
医師
中島 駿
五十肩(肩関節周囲炎)の症状と治療法 | 早期回復のポイント | 都立大整形外科クリニック

肩の痛みでお悩みですか?

当クリニックは 五十肩(肩関節周囲炎) の専門治療を提供しています。
40〜60代に多い肩の痛みの原因と効果的な治療法をご紹介します。

40〜60代になると急に肩が痛くなり、次のような症状で困っている方が多くいらっしゃいます:

『急に肩が痛み出して、年齢的に五十肩だと思って様子をみていたのに、どんどん肩が上がらなくなってきた』

『最初は気になるくらいの肩の痛みだったのに、今は夜も眠れないくらい痛い』

『洗濯物を干すときや、お皿を片付ける時に、腕に力が入らない』

肩の痛みの主な原因

60-70 %
五十肩(肩関節周囲炎)
20-30 %
腱板断裂
10 %
石灰性腱炎

肩の痛みと言っても様々な原因があり、それぞれ治療法が異なります。まずは肩の痛みの原因がどこにあるのか、正確な診断をつけることが、治療に直結し、痛みから早く解放されるのに役立ちます。

注意

『レントゲンは問題ないですね、五十肩なので痛み止めと湿布で様子を見ましょう』と言われて経過を見ていたが、良くならないというケースも多く見られます。レントゲンだけで診断がつく肩の痛みは実はあまりありません。レントゲン、超音波(エコー)検査、必要であればMRI検査を用いて正しい診断をつけることが大切です。

五十肩(肩関節周囲炎)とは

五十肩 」は、50歳代を中心とした中年以降に発症する肩の痛みを伴う疾患です。医学的には 肩関節周囲炎 とも呼ばれ、肩関節周囲の痛みと動きの制限を特徴とします。

五十肩の多くは特に誘因なく発症しますが、時に軽い外傷の繰り返しの後に肩の不快感や痛みとして現れることもあります。好発年齢は40〜60歳代であり、中高年に多い疾患です。

肩関節の構造図

肩関節の構造:大きなボール(上腕骨頭)を小さな受け皿(肩甲骨関節窩)が支えている

なぜ肩は痛くなりやすいのか?

肩関節は、最も可動域の広い関節であり、自由に動く代わりに構造的に不安定な関節です。「けん玉」によく例えられるように、上腕骨頭という大きなボールを上腕骨関節窩という小さな受け皿が支えています。

この骨性の安定性が少ない分、 関節包 腱板 (インナーマッスル)が肩関節を安定させています。肩の酷使によって関節包や腱板、周囲の筋肉、 滑液包 といった軟部組織に炎症や損傷が起こると、痛みや可動域の制限につながります。

五十肩の症状と原因

主な症状

  • 肩の痛み:特に夜間に悪化し、睡眠を妨げる(夜間痛)
  • 肩の可動域制限:腕を上げる、背中に手を回すなどの動作が困難
  • 日常生活での不便:洗髪、着替え、高い棚のものを取るなどの動作に支障
  • 肩の違和感・こわばり:特に朝方に顕著

どうして五十肩になるのか?

五十肩の正確な原因はまだ完全には解明されていませんが、以下の要因が関係していると考えられています:

  • 加齢による変化:組織の弾力性の低下、修復能力の低下
  • 微小な損傷の蓄積:日常生活やスポーツでの繰り返しの動作
  • 関節包の炎症と拘縮:関節を包む袋状の組織の硬化
  • 特定部位の炎症:腱板疎部、上腕二頭筋長頭腱、肩峰下滑液包など

注意すべき症状

次のような症状がある場合は、五十肩以外の疾患の可能性もあるため、専門医の診察が必要です:

  • 突然の強い痛みと腕の脱力感
  • 腕を上げた時に「ゴリゴリ」という音がする
  • 肩を動かさなくても常に強い痛みがある
  • 外傷後に発症した肩の痛み

正確な診断の重要性

肩の痛みは様々な原因で起こります。五十肩と似た症状でも異なる疾患である場合があり、適切な治療のためには正確な診断が不可欠です。

当クリニックでの診断方法

  • 詳細な問診:いつから、どのような状況で痛みが出るか、日常生活への影響
  • 身体診察:肩の動きの確認、痛みのある範囲や方向の特定
  • レントゲン検査:骨の状態の確認、関節の変化の評価
  • 超音波(エコー)検査:腱板や周囲軟部組織の状態を詳細に確認
  • MRI検査:必要に応じて腱板断裂や軟部組織の詳細な評価
肩の検査イメージ

超音波検査で腱板の状態を確認することで、五十肩と腱板断裂を鑑別します

五十肩と間違えやすい疾患

以下の疾患は五十肩と症状が似ているため、正確な鑑別診断が必要です:

  • 腱板断裂 :特に腕を上げる力が弱くなります
  • 石灰性腱炎 :突然の激しい痛みが特徴的です
  • 肩関節症 :動作時のゴリゴリ感を伴うことがあります
  • 上腕二頭筋長頭腱炎 :前腕の外側に痛みが出ることがあります

五十肩(肩関節周囲炎)の病期と治療法

五十肩(肩関節周囲炎)は、発症後の経過によって「炎症期」「拘縮期」「寛解期」の3つの病期に分けられます。それぞれの段階で適切な治療を行うことで、症状の改善と早期回復が期待できます。

1
炎症期
数週間〜数ヶ月
2
拘縮期
数ヶ月〜半年
3
寛解期
半年〜2年
1

炎症期(急性期):強い痛みが続く時期

期間:発症から数週間~数ヶ月

主な症状

  • 突然の肩の痛みで発症し、夜間痛(寝ていると痛む)が顕著
  • 動かさなくても痛みがあり、服の着脱や洗顔などの日常動作が困難
  • 肩関節周囲に炎症が起こり、腫れや熱感を伴うことも
  • 少し動かすだけでも激しい痛みがあり、肩を動かすのが怖くなる

治療とケア

  • 過度な動作を避け、安静を保つ
  • ヒアルロン酸注射 ステロイド注射 による痛みと炎症の軽減
  • アイシングや 消炎鎮痛薬(NSAIDs) の使用で痛みをコントロール
  • 完全に動かさないと肩が固まるため、痛みの範囲内で軽いストレッチを行う

この時期は無理に動かすと悪化するため、痛みのコントロールを最優先します。

2

拘縮期(慢性期):肩が硬くなる時期

期間:数ヶ月~半年

主な症状

  • 痛みは軽減しますが、肩の可動域が著しく制限される
  • 腕を上げる・後ろに回す動作(エプロンを結ぶ、背中をかく)が困難
  • 無理に動かそうとすると強い抵抗感があり、動かせる範囲が限られる
  • 放置すると関節が固まり、回復に時間がかかる

治療とケア

  • 関節可動域訓練(ROMエクササイズ) を少しずつ行い、拘縮を防ぐ
  • 必要に応じて ハイドロリリース注射 を行う
  • 適度なストレッチを継続し、徐々に動きを取り戻す
  • 日常生活の中で意識的に肩を動かす習慣をつける

この時期に肩を動かさないと、拘縮が進み回復が遅れるため、痛みを感じすぎない範囲で動かすことが重要です。

3

寛解期(回復期):肩の動きが戻る時期

期間:半年~2年(個人差あり)

主な症状

  • 痛みがほぼ消失し、少しずつ肩の可動域が回復する
  • 以前のように腕を動かせるようになってくるが、違和感や軽度の制限が残ることも
  • 日常生活の動作がほぼ問題なく行えるようになる

治療とケア

  • 肩周りの筋力トレーニング(特にインナーマッスルの強化)
  • ストレッチを継続し、肩の柔軟性を保つ
  • 日常動作で積極的に肩を動かし、機能を取り戻す
  • 再発予防のための生活習慣の見直し

重要ポイント

肩関節周囲炎と一言で言っても、肩の炎症の場所によって 上腕二頭腱炎 腱板疎部炎 滑液包炎 癒着性肩関節包炎 と診断が異なります。

早期に正確な診断を受け、炎症部位に適した治療(ステロイド注射、消炎鎮痛薬の内服など)を行うことで、早期回復につながります。

五十肩のセルフケアと予防法

自宅でできるケア方法

炎症期のセルフケア

  • アイシング:1日3〜4回、15分程度、痛みのある部分を冷やす
  • 痛みを誘発する動作を避ける(ただし完全に動かさないのは×)
  • 軽いストレッチ:痛みが出ない範囲でゆっくり行う
  • 睡眠時の姿勢:痛みの少ない姿勢で寝る(枕の高さ調整も重要)

痛みの出ない範囲での軽いストレッチが効果的です

【目的】 
1:肩後方の柔軟性改善 
2:姿勢改善
【方法】 
1:肩関節の真下に手、股関節の真下に膝がくるように四つ這いになる 
2:片方の手をもう片方の手の前におき、手が床から離れないようにお尻を後ろに引くようにする 
3:肩の後ろ、脇、背中が伸びているのを感じる 
4:伸びきった位置で2-3秒キープし、元の位置に戻る 
5:上記を繰り返す 
【ポイント】 
1:身体が捻じれないように後ろに引くようにする 
2:手が浮かないように、軽く下に押し付けるように行う

拘縮期・回復期のセルフケア

  • 規則的なストレッチ:1日2〜3回、各ポーズ20〜30秒間
  • 温熱療法:入浴やホットタオルで肩を温めてからストレッチ
  • 日常生活での意識的な肩の使用(洗濯物を干す、棚の物を取るなど)
  • 肩周りの筋肉の強化運動(リハビリ専門家の指導の下で)

予防のためのポイント

  • 正しい姿勢を保つ(猫背やスマホ首の改善)
  • デスクワークでは定期的に休憩を取り、肩を動かす
  • 肩に負担のかかる同じ動作の繰り返しを避ける
  • 肩周りの筋肉のバランスを整える運動を日常に取り入れる
  • 冷えに注意し、肩を冷やさないように心がける

五十肩セルフチェックリスト

以下の症状に当てはまるものがあれば、五十肩の可能性があります。複数当てはまる場合は、専門医への受診をおすすめします。

  • 肩の痛みが特に夜間に強くなる
  • 腕を上げようとすると痛みがある
  • 背中に手を回す動作(後ろポケットに手を入れるなど)が困難
  • 40〜60代である
  • 徐々に肩が動かしにくくなってきた
  • 特に明らかな外傷なく痛みが始まった

よくある質問(FAQ)

五十肩(肩関節周囲炎)は、肩関節周囲の軟部組織の炎症や拘縮が原因で起こる疾患です。一方、腱板断裂は肩関節を安定させる腱板という組織が断裂することで起こります。

治療法や回復期間が異なるため、正確な診断が重要です。腱板断裂は特に腕を上げる動作が困難になることが多く、重症例では手術が必要になることもあります。

五十肩の治療期間は個人差がありますが、一般的には6ヶ月から2年程度かかることが多いです。適切な治療を早期に開始することで、回復を早めることができます。

症状の進行状況や治療への反応によって異なりますので、医師の指示に従うことが大切です。放置すると症状が長引く可能性があるため、早めの受診をおすすめします。

適切な量と頻度で行われるステロイド注射は、五十肩の急性期の痛みを軽減するのに効果的な治療法です。当クリニックでは、患者さん一人ひとりの状態に合わせて、安全に配慮しながら治療を行っています。

ただし、頻回の注射は避けるべきであり、通常は数回の注射と他の治療法を組み合わせて行います。不安がある場合は、医師に詳しく相談してください。

明確な予防法はありませんが、日常的に以下のことを心がけると発症リスクを下げる可能性があります:

  • 定期的なストレッチや軽い運動で肩関節の柔軟性を保つ
  • 長時間同じ姿勢でのPC作業を避け、適度に休憩を取る
  • 正しい姿勢を心がける
  • 肩に違和感を感じたら早めに専門医に相談する
  • 肩を冷やさないように注意する

病期によって適切なストレッチや運動が異なります。当クリニックでは、患者さんの状態に合わせた自宅でのリハビリプログラムをご提案しています。

一般的には、壁を使ったストレッチや振り子運動などが効果的ですが、個々の症状に合わせた指導が重要です。定期的な診察で進捗を確認しながら、適切なプログラムを調整していきます。

五十肩は自然経過でも1〜2年かけて徐々に改善することが多いですが、適切な治療を受けることで回復期間を短縮し、症状を軽減できる可能性があります。

また、放置すると肩の可動域制限が固定化してしまい、完全な回復が難しくなるケースもあります。早期の適切な治療と定期的なケアが大切です。

受診のタイミングと予約方法

こんな場合は早めに受診しましょう

  • じっとしていても強い痛みがある
  • 夜間痛が続き、眠れない
  • 肩の動きが悪くなり、日常生活に支障が出ている
  • 痛み止めを服用しても効果が乏しい
  • 1ヶ月以上症状が続いている

肩の痛みで困ったら肩専門医を受診して下さい。
(肩外来は木曜日)

この記事を書いたスタッフ
医師
中島 駿
肩関節、スポーツ整形外科を専門としています。ADLの改善、スポーツへの早期復帰のために、1mmの精度にこだわり関節鏡視下手術を行なっております。鏡視下手術やリハビリテーションに加えて、体外衝撃波、PRP(再生医療)、Coolief治療、動注療法等の先端医療の選択肢も合わせて、患者様にとってベストな医療を提供できることを心がけています。早期スポーツ復帰、痛みに悩まされない生活のためのサポートを全力でさせていただきますので、いつでもご相談下さい。
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